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猪・鹿・狸 の商品レビュー

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2019/01/10

(01) 山里で接する大型の哺乳類であるイノシシ,シカ,タヌキが取り上げられ,こうした動物という媒介者によって攪乱され,混じり合ってきた人間と自然の様子が,詩情も添えられながら描かれている.鶏を含む鳥についてのトピックも付録として収録されており,このような小さな動物を捕獲しながら...

(01) 山里で接する大型の哺乳類であるイノシシ,シカ,タヌキが取り上げられ,こうした動物という媒介者によって攪乱され,混じり合ってきた人間と自然の様子が,詩情も添えられながら描かれている.鶏を含む鳥についてのトピックも付録として収録されており,このような小さな動物を捕獲しながらも観察を続けてきた山里の人々が残した記録も読む者にとっては愛おしい. イノシシもシカも害獣ではあるが,動物は何も語らないため,神秘が付与され,敬愛も受けている.動物にも繁殖があり,それは人々の収穫にただ害をもたらすものであれば,繁殖を断つべく動物たちを絶滅に追い込まなければならないはずである(*02).しかしながら,被害者らは,狩る対象としてのこれらの動物たちへ情をつないでおり,そこには詩的で神話的な情景が現れている. 本書がまとめられた時代には,シカが減っていたともされる.動物たちは獲って見られるものというばかりではなく,語られ伝えられるものとしても描かれている.空想と現実の曖昧な関係がどのように風景として結ばれるか,本書から察することができるものの価値はそのあたりにもある. (02) 残酷と憐憫,このふたつが村にどのように同居されていたのかの実際を読み考えるには,本書のエピソードは最適であるだろう.また,村の近代化のその受容の過程が描かれており,いくつもの事例は,現代の村の凋落の様子と比較してみてもよいだろう.

Posted byブクログ