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加藤周一著作集(5) の商品レビュー

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2024/05/28
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第4巻日本文学史序説上のあとがきにて 下巻のボリュームへの記載があり躊躇して いたが、あとがきまで含めて582頁、 なんとか読み終えることができた。 それにしても、上下巻の重厚感! まさしく日本文学史を網羅している。 どこぞで聞いたことがあるけれど 内容は知らない有名人物(および有名なんだ ろうけれど歴史に疎い私が知らない人物) が目白押し。たとえば新井白石。 ”その文章は、一般に、人物の風態を述べず、 光景を描かず、会話を直接話法で導入せず、 素より心理の内面に立ち入らず、ただ特定の 状況における人物の言動のみを、ほとんど評価を 交えずに記録する。”とある。 伊達政宗の風貌の描写が素晴らしかった。 また、歴史の授業の中でなんとなく 聞いたことがあるような無いような話だが ”侍が戦っていた時に、「武士道」はなかった。 侍がもはや戦う必要がなくなってはじめて、 「武士道」は生まれたのである。” このころは元禄時代であり、一般的に言う 町人文化の時代であるが、武士道に触れた 「葉隠」も心中物の「曾根崎心中」も 元禄文化という背景では根っこが同じというのが 面白い。また、この手の心中物は、いろいろな バリエーションで多数書かれたものらしいが、 民衆の興味をひく定型を維持して展開して いるところが、今でいうところの 「転生したら…」的なアニメと一緒なのかも といぶかってみたりした。 松尾芭蕉についても一人旅をしながら俳句を 詠んだ風流爺さんなイメージだったのに 実はその当時でもそれなりに俳諧人として 成功していて、お弟子さんを伴い、地方のパトロン 宅を転々としながらの旅だったと知りびっくり。 本居宣長は名前くらいしか覚えていなかった のだが、古事記から漢意を排して、大和心の根源 を突き止めるため復元を試みたそうだ。具体的には 古代日本語に近い仕方で読み下そうとした。 てにをはの用法、カナの清濁、助字の訓などに 検討を加えた、文献学だったとか。 そんな人とは知らなかった。歴史は深く知らないと だめだね。 同様に福沢諭吉の文章は、彼が少年の時に学んで 意識的に捨てようとした漢学と、青年の時に 採用して意識的に自己同定しようとした洋学とを、 双方踏まえて成りえた文章だという。 そんな背景知らないから、福沢諭吉ー「学問ノススメ」 な発想しかないのが、私の知識の貧相さ。 終始、私にとっては難しい文学論だったけれど 終盤宮沢賢治の項目で、「春と修羅」「山羊の歌」 に掲載された詩が掲載されていた。 馴染みのある文体に少し緊張がほぐれる。 ただ、やはり上巻から一貫して 日本語および日本文学は美しい。 まだまだ私はその1%もシラナイ。 まだまだ読むべき古典がたくさんある。

Posted byブクログ