破滅の王 の商品レビュー
序盤は登場人物と勢力図の把握に苦労して挫折しかけたが中盤以降は入り込めた。SFだけどノンフィクションかと錯覚するほどのリアルさ。受賞候補になったのも納得できる。補記までしっかり読むべし。
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2018.11.10.前半星5後半星2で合計星3という感じだった。 以前、ラ・パティスリーシリーズで好きだった上田早夕里さんが直木賞候補ということで読んだ作品。上田さんは元々SF作品が主流かなという認識で、もれ聞くこの作品の特徴は歴史に基づいたSF作品という理解だったが読み終わってそれでいいかなとおもっている。第二次世界大戦、日本軍、細菌兵器というと731部隊というと日本の闇という感じで本を前にしてなかなか読み始める気持ちになれなかったが、読み始めると冷静な筆致で落ち着いて読み進めることごできた。優秀でありながら日本軍の一員として非道なことに巻き込まれていく優秀な医師たちが描かれていき、無理なく物語に入っていくことができたのは大変良かった。治療法のない細菌兵器、キングことR2vを巡ってなんとかその治療薬を作ろうとする医師、そしてそれをサポートする少佐を軸に描かれていく。 後半の結末に向けての描かれ方がいくら架空の話とあってもあまりに非現実的で荒い描き方であったのが非常に残念だったと思うが、多くの当時の資料をおそらく深く読み込まなければ書かれなかった作品と思うと作者に敬意を払いたいと思った。 あと、直木賞選者の講評を読んでから読んでしまったのが残念。選評はたしかに当たっているところもあったが、ある種のバイアスがかかってしまうのでこれからは読んだ後に講評を読まなければいけないと思った。
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731部隊が題材ということで、やや身構えながら読み進んだのだが、その辺はとても上手に扱われていて、一級の冒険小説として読めた。
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満州事変とか第二次世界大戦とかそのあたりの時代が好きなら面白いと思います。自分にとっては当時の中国の状況とか世界情勢とかトゥーマッチな情報で終盤まで読み進めるのが大変でした。もっとエンタメよりな内容を期待したこともあり、結局見どころ(読みどころ?)がないまま読み終えちゃった感じです。
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1943年の中国・上海。 彼の地で、「キング」と呼ばれる治療法皆無の細菌兵器をめぐって、男たちの戦いが始まります。 執念と絶望と狂気が全編通じて、暗い印象を与えます。おひさまのイメージが読後もない。魔都・上海というフレーズもあって、煙が揺蕩っているイメージ。 「キング」を巡る物...
1943年の中国・上海。 彼の地で、「キング」と呼ばれる治療法皆無の細菌兵器をめぐって、男たちの戦いが始まります。 執念と絶望と狂気が全編通じて、暗い印象を与えます。おひさまのイメージが読後もない。魔都・上海というフレーズもあって、煙が揺蕩っているイメージ。 「キング」を巡る物語は、未だに終わっていないからなんでしょうね。補記のせいです。嵯峨や宮本の行動が、一筋の光になるのかと思い、そう願っていましたが、「キング」の脅威は止めること叶わない。 スパイアクションだったり、サイエンスミステリーだったりと、興をそそる物語なのだけど、どうにも重さ苦しさはぬぐえなかったなぁ。それでも、一気読みできたのだから、面白かったのは確か。
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28:めっちゃ熱かった。科学と正義、そして戦争。科学の進歩が危険と表裏一体であると知ってなお、研究を進めることが人類全体の幸福に繋がると信念を抱く科学者たちがめちゃくちゃ格好良く、けれどその信念がいかに脆く、詭弁となりうるかも同時に描かれる。たまらん……すき……。 宮本の「我々は...
28:めっちゃ熱かった。科学と正義、そして戦争。科学の進歩が危険と表裏一体であると知ってなお、研究を進めることが人類全体の幸福に繋がると信念を抱く科学者たちがめちゃくちゃ格好良く、けれどその信念がいかに脆く、詭弁となりうるかも同時に描かれる。たまらん……すき……。 宮本の「我々は、作り出したものに対して、責任を取り続けなきゃならないんです」っていうのが、ほんと今のあれこれにじわっとくる。
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事実と創作がまざりあい、破滅の王という存在が実在してるかもと思わせる。 石井四郎部隊の存在を知ったのは今から40年近く前、あの頃森村清一だったかあの本の作者は命を狙われていたとか。それが今は史実として誰もが知ること。同じように誰もが知る過去の愚行だった南京大虐殺はそんな事実はなか...
事実と創作がまざりあい、破滅の王という存在が実在してるかもと思わせる。 石井四郎部隊の存在を知ったのは今から40年近く前、あの頃森村清一だったかあの本の作者は命を狙われていたとか。それが今は史実として誰もが知ること。同じように誰もが知る過去の愚行だった南京大虐殺はそんな事実はなかったと歴史は変わってきている。 治療薬がない限り兵器にならないなら、原爆や水爆に治療薬や予防薬があるとでも言うのか。今そんなものが使われたら世界各地にどんな被害が現れるかわからないのに。 マツドサイエンティストが人を人と思わず嬉々として研究してたのか、上からの命令に従わざるを得なかったのか、良心の呵責と研究意欲に揺れ動いていたのか?せめてその部隊の研究が今の治療の進歩に貢献したと信じたい。 免疫療法のノーベル賞おめでとうございます、その先生の先生は石井部隊とは無関係ですよね?
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日本軍の細菌戦については731部隊が有名だが、実在の人物も出てくるこの話はどの部分が史実でどのあたりがフィクションなのか。。。なかなか上手く描けてます!
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第二次世界大戦中の上海を舞台に、細菌兵器の開発をめぐる各国の研究員や特務機関の攻防を描いた作品。直木賞候補作。 731部隊による細菌兵器の開発や人体実験という実際の出来事に基づいたストーリーは、戦時中の狂気と暴走を詳細に伝えていて、そのおぞましさには身の毛がよだつ。 欧米の支配...
第二次世界大戦中の上海を舞台に、細菌兵器の開発をめぐる各国の研究員や特務機関の攻防を描いた作品。直木賞候補作。 731部隊による細菌兵器の開発や人体実験という実際の出来事に基づいたストーリーは、戦時中の狂気と暴走を詳細に伝えていて、そのおぞましさには身の毛がよだつ。 欧米の支配からアジアを解放するという名目のもと、強引に満州国をつくった日本人。国のため、人類のためと言いながら、力をもった者はすべてを手中に収めたくなり、蛮行に及んだあげく破滅に向かう。これが現実の出来事を踏まえていると思うと、重苦しくつらい読書になった。 さらには、実験にかかわった研究者や医師たちが、責任を問われることなく医学界で権力者となり、現在に至っていることにも背筋が寒くなる。 読んでいる最中は、戦時中の蛮行という素材ばかりにとらわれがちだったが、読後改めて全体を俯瞰してみると、小説としてのストーリー自体や主人公の魅力にはやや物足りなさも感じた。 さらには、何年か前に観た野田秀樹の舞台「エッグ」を思い出す。音楽とスポーツという表面的には爽やかでおちゃらけた導入から、一転して満州での日本軍による残虐な人体実験にシフトしてぞっとさせる芝居は圧巻だった。DVDでもいいからまた見てみたい。
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第二次世界大戦時に悪名名高い731部隊の細菌兵器開発や人体実験をモチーフにした作品と思われます。エンターテイメントに針を振っているので、社会派というよりもスパイ小説の風情です。
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