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コルヌトピア の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2018/01/23

コルヌトピアあるいはコルヌー・コピアイとはHorn of plenty、つまり豊穣の角のことである。アマルテイアというゼウスを育てた牝山羊ーニンフーの角である。 2084年では、植物が互いに通信する機構を利用して、大量の演算をさせる仕組み<フロラ>が構築されており、その演算を実...

コルヌトピアあるいはコルヌー・コピアイとはHorn of plenty、つまり豊穣の角のことである。アマルテイアというゼウスを育てた牝山羊ーニンフーの角である。 2084年では、植物が互いに通信する機構を利用して、大量の演算をさせる仕組み<フロラ>が構築されており、その演算を実施させるための大量の植物が必要となる。大規模震災を経る過程で、東京の環八を大規模なグリーンベルトへと改造し、その大規模グリーンベルトを利用した演算環境が東京をして世界の計算資源先進地域へと改めて押し上げているのだ。 主人公の砂山淵彦はフロラを開発設計する企業に勤めており、ウムヴェルトと呼ばれる角上の装置を介してフロラの演算処理を脳にレンダリングすることを生業としている。 多摩川で発生したグリーンベルトの火災事件の調査にあたり、若手天才植物学者、折口鶲(ヒタキ)と出会う。 火災事件の原因分析でヒタキの事務所を訪れた際、その実験で意識を失ってしまう淵彦。その意識のなかで過去高原で出会った藤袴嗣美という少年のことを思い出す。 植物群を利用した演算処理といい、そこで打ち立てらた世界観が実はフロラによる何かの押し付けとフロラに組み込まれない植物の反乱というか抵抗が、近未来における人類と植物の相互作用、関係性をうまく表現している。 本作品は2017年第五回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作であり、著者津久井五月は現役東大大学院の院生とのこと。専門は建築とのことだが植物の生理機能を演算に利用するといった発想や、再び緑化に向かっていくがそこにも課題がある人類の自然との共生感が新鮮で非常に面白かった。 文体はさっぱり、淡々しかし知的に記されており、読みやすいしつまらなくない。ツグミが起こす事件が人類あるいはフロラ依存の社会への警鐘といったアラート感であるとか、ヒタキとの恋愛とかがもっと加わると、安っぽい小説に堕ちてしまうだろうか?少しそんな物語感も欲しいとおもったわけで。

Posted byブクログ

2017/12/13

なにしろ世界観が斬新すぎてうまく説明できない。 2084年,東京は植物を利用した巨大なコンピュータみたいなものが実現していて,そのフロラ技術のために都心をグリーンベルトと呼ばれる森林が一周している。あるときそのコンピュータ(?)の一部がダウンする,というような事故が起こる。 砂...

なにしろ世界観が斬新すぎてうまく説明できない。 2084年,東京は植物を利用した巨大なコンピュータみたいなものが実現していて,そのフロラ技術のために都心をグリーンベルトと呼ばれる森林が一周している。あるときそのコンピュータ(?)の一部がダウンする,というような事故が起こる。 砂山淵彦はヒタキという女性植物学者とともにその調査をする,というような内容。 とにかく設定が緻密で,そういうのが好きな人にはたまらないだろうけど,物語としておもしろいのかと問われると,ちょっと疑問……。 たまにはこういうのもいい。

Posted byブクログ