ふたりの未亡人 新装版 の商品レビュー
回春路線の王道と空閨の未亡人
正鵠を射たタイトルではあるが少しの間違いもある。未亡人同然な嫁と未亡人叔母の他にもヒロインは出てくるので「ふたり」と強調されればミスリードを招く。しかし、夫に操を捧げてきたものの独り身の切なさと空閨の疼きには抗い難く、茶道に勤しむことから漂う凛とした貞淑さの内に秘めた「もう我慢で...
正鵠を射たタイトルではあるが少しの間違いもある。未亡人同然な嫁と未亡人叔母の他にもヒロインは出てくるので「ふたり」と強調されればミスリードを招く。しかし、夫に操を捧げてきたものの独り身の切なさと空閨の疼きには抗い難く、茶道に勤しむことから漂う凛とした貞淑さの内に秘めた「もう我慢できない」という本音を隠しながらも主人公の前では見せてしまう、そんなギャップが得も言われぬ艶を放つ意味では確かに「未亡人」を描き抜いた作品と言える。そして、その艶は和装の乱れによってさらに増幅される。2010年に発売された底本共々表紙カバーイラストが何故に2人揃って和装でないのか不思議なくらいである。 冒頭で27歳の誕生日を迎えた【菜々美】は夫が行方不明。57歳になる主人公にとっては息子の嫁であり、回春路線の正統的ヒロインと言える。舅たる主人公を献身的に世話するも夫の身を案じ、女としての自信を喪失し始めている。これを慰めるように男女の仲になっていく2人だが、夫の帰還までと期限を設けることでズルズルした関係にもなっていき、男やもめの主人公共々互いに空虚を埋めるような癒しを得ていく。決して自分からは求めない菜々美だが内心では求めており、そんな表面上の抵抗と内面での渇望とが交錯する恥じらいと昂ってからの貪欲さが魅力を放っている。 菜々美の叔母たる【久仁子】は40歳にして茶道の師匠格。菜々美の発案による茶道教室の開設と運営に協力する形で同居を始めるが、当初は留守がちだったりして出番は乏しい。それでも時間経過と共に割とストレートな愛情を主人公に向けていく。ある種の性癖を見せて菜々美との違いを出しつつも空閨の辛抱が尽きた未亡人熟女の官能的魅力を放っている。 また、菜々美の茶道教室に通う生徒として2人のヒロインが登場する。菜々美と久仁子をメインと見ればサブヒロインの2人となるが、菜々美1人をメイン(主人公の本命)と見れば、外部ヒロインと言えるだろうか。中継ぎの官能要員であり、物語の行方を決める人物でもある。 33歳になる人妻【真理子】は主人公の過去において秘密を共有している。正直なところ居なくても話は成立するが、官能的には最も積極的である。そして、21歳の女子大生【美羽】には自身に秘密があり、物語のどんでん返しを導いている。一時は暗雲が立ち込めた起承転結の「転」には2度目がある展開の妙と言える。初老を過ぎた主人公へ破瓜を捧げるには年の差があり過ぎると思うが、お嬢様育ちが主人公に諭される啓蒙的な要素もあったりする。 操を立てる後ろめたさから欲情しての悩ましさ、そして昂ってからの貪婪さという2段階・3段階の官能描写が冴えており、ギリギリまで我慢するも決壊して我を忘れる乱れ具合が何ともいやらしい。何より物語の良さと官能の淫らさが共に立脚した作品になっており、何が何でもハーレムエンドという一部の風潮に「こんな纏め方もありますよ」と一石を投じているかのようである。
DSK
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