「失敗」からひも解く シティプロモーション の商品レビュー
まちに住む人たちの推奨意欲・参加意欲・感謝意欲に加えて、まちの外からまちに共感する人たちの推奨意欲、これらすべてを加えたものを「地域参画総量」といおう。 (引用)「失敗」からひも解くシティプロモーション ーなにが「成否」をわけたのか、著者:河井孝仁、発行者:田中英弥、発行所:第一...
まちに住む人たちの推奨意欲・参加意欲・感謝意欲に加えて、まちの外からまちに共感する人たちの推奨意欲、これらすべてを加えたものを「地域参画総量」といおう。 (引用)「失敗」からひも解くシティプロモーション ーなにが「成否」をわけたのか、著者:河井孝仁、発行者:田中英弥、発行所:第一法規株式会社、初版発行:平成29年10月15日、12 シティプロモーション。このカタカナの言葉は、時として、行政マンを悩ます。シティープロモーションをするため、各自治体は動画を作ればよいのか、またキャッチコピーを考えればいいのか、それとも市のシンボル的なロゴマークを製作すればよいのかなど。各自治体によっても、シティプロモーションの捉え方が違ってくると思う。そのことが起因して、ターゲットがずれ、施策がずれ、メディア戦略がずれ、各自治体の独りよがりな施策に陥り、「失敗」を引き起こすこととなる。 その「失敗」からの助け舟を出してくれるのが、河井氏による「『失敗』からひも解くシティプロモーション(第一法規株式会社)」だ。各自治体が”手探り”でシティプロモーションを展開し、「失敗」した事例も紹介してくれる。その中で、河井氏が主張するのは、冒頭に記した「地域参画総量」という言葉だ。河井氏によれば、「この地域参画総量を増加させることができれば、具体的な定住促進、産品振興、交流拡大の取組みにとっての、熱を持ったしなやかな土台になる(同書13)」としている。この地域参画総量という言葉に出会い、私は、今まで、曖昧だったシティプロモーションの定義、そして全容がクリアになっていった。 本書の後半には、各自治体のシティプロモーションの失敗を生かし、河井氏直伝による「シティプロモーションの成功法」が書かれている。その示されている手順通りに進めば、シティプロモーションは、最大の武器となってくる。その武器を携え、自治体職員とそこに住む人達がまちの「空気」や「雰囲気」を醸し出せるような戦略を実行していくことこそが、何より重要であることが理解できた。 本書では、神奈川県の「大学発・政策提案制度」も紹介されている。これは、神奈川県内においてシティプローモーションを的確に行いたいという目的を神奈川県と大学(研究室)が共有し、神奈川県が協働主唱者となり、大学(研究室)が協働呼応者となった取組み(本書、96)である。この取組みを知り、私は、慶應義塾大学飯盛義徳研究室による「KANAZAWA GENKI PROJECT」を思い出す。このプロジェクトでは、金沢の女子大生14人がグループを作り、”かなざわ娘”として、1年間にわたって金沢の魅力をPRしたり、企業と一緒に金沢の新しい名産品の作成に取り組んだりしているという。1) 金沢の女子大生は、なにも地元の娘ばかりではないだろう。ただ、縁があって金沢に住み、金沢の魅力推奨し、まちづくりに参加し、まちへの感謝を増やしていく。そして金沢の外に住む人達の推奨意欲が高まれば、金沢の人たちは、持続的な幸せを実現できることになる。私は、まさにこのような取組みがシティプロモーションだと思うに至った。 本書は、シティプロモーションで悩める自治体職員、そして自分たちの住むまちに誇りを持ち、「何とかしたい」と考えている人たちにオススメしたい。 1)KANAZAWA GENKI PROJECT 慶應義塾大学 飯盛義徳研究室
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