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銀杏手ならい の商品レビュー

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22件のお客様レビュー

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2017/12/31

出戻り先生の小さな塾。 百姓の子も商人の子も侍の子もいる。学問がその子の将来に僅かでも役立つ様にという思いで情深く指導にあたる。 捨て子も育てる事になり、血よりも情の思いを強くする。 子供への思いが温かい。

Posted byブクログ

2017/12/29

初出 2016〜17年「小説NON」  江戸は小日向水道町にある手習い所「銀杏堂」の女師匠島村萌の連続7話の物語。けっこう涙腺を刺激され一気に読了。  萌はかつて銀杏堂の前に捨てられた捨て子で、銀杏堂で教える父母に慈しみ育てられ、御家人の家に嫁いだものの子が生まれず離縁されて...

初出 2016〜17年「小説NON」  江戸は小日向水道町にある手習い所「銀杏堂」の女師匠島村萌の連続7話の物語。けっこう涙腺を刺激され一気に読了。  萌はかつて銀杏堂の前に捨てられた捨て子で、銀杏堂で教える父母に慈しみ育てられ、御家人の家に嫁いだものの子が生まれず離縁されて実家に戻り、隠居した父に代わって悪童たちに手こずりながら師匠を務めていた。 ある朝、銀杏堂の前に捨て子があり、萌は決意して借金して乳母を雇い娘として育て始め、かつて自分を育てた母の思いを改めて感じる。  父と親交のある近所の手習い所の師匠で酒吞みの椎葉が他の手習い所で落ちこぼれた(発達障害と思わせる)子たちの人より優れた才能を伸ばす教育や、大奥で右筆まで勤めた女師匠の「教え子に好かれようと、優しいだけの芯のない教えは駄菓子と同じ」という厳しい指摘に、考えさせられながら前向きに教え子たちに愛情を注ぐ。  悪性の風邪の流行で父親を亡くし、染めの型紙職人への夢を捨て手習いを辞めて働こうとする子には、文盲の職人の元で働きながら修行できるように力を尽くす。  子供たちだけで元大名屋敷だった森の中に薬草を探しに行って帰り道に迷い、木の上で野犬から身を守って夜を過ごす冒険譚もある。  最後は捨て子だった娘が誘拐され、同じ日にその生母が現れるという驚きの展開となる。  萌が師匠として、人間として悩み成長していく姿はすがすがしい。『金春屋ゴメス』という異色のデビュー作で驚かされ、『涅槃の雪』で深い哀切を味わわせてくれた作者の円熟を感じるいい作品。

Posted byブクログ