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SFの先駆者 今日泊亜蘭 新版 の商品レビュー

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孤高の作家人生

じつをいうと、僕の読書体験(サイエンス・フィクション)に本作の主人公たる今日泊亜蘭 なる人物は欠落していた。小松左京、星新一の両御大、眉村卓、筒井康隆、平井和 正、豊田有恒さんたち、いわゆる「SF作家第1世代」の作品には親しんだものの、今 日泊亜蘭氏の本を手に取ったのは、ず...

じつをいうと、僕の読書体験(サイエンス・フィクション)に本作の主人公たる今日泊亜蘭 なる人物は欠落していた。小松左京、星新一の両御大、眉村卓、筒井康隆、平井和 正、豊田有恒さんたち、いわゆる「SF作家第1世代」の作品には親しんだものの、今 日泊亜蘭氏の本を手に取ったのは、ずいぶん後、20世紀も終わりかけようとする頃。 なんでそんなことになってしまったのか? 本書をよむと、その一因が掴めてくる、そんな気がした。 ひとつは、福島正実氏という人との関係。今日泊亜蘭氏は、福島正実氏(SFマガジ ン編集長・時代)からコトバは悪いのだけど、忌避されていたらしい。 なんでなのかは、当人にもよく判ってないようなので、他人がどうのこうの言う話ではないだ ろうけども、ともかく福島正美氏が編集長として在任した間は、今日泊亜蘭氏のSFマガ ジンへの執筆は一切なかった。 その間を取り持とうとした人々(たとえば野田昌宏氏)もないではなかったようだが、今 日泊亜蘭氏は一顧だにしなかったらしい。 そして、決定的なのは、その孤高ともいえる矜持の高さ。少年時代からの親友と、ある意 見に違いから決別!以来、40有余年、親友の側から和解を申し出るまで、連絡ひと つとろうとしなかった。その後は、以前と変わらず交友を復活させたとのこと。 コレは、作中で野田昌宏氏なども指摘されていることだが、今日泊亜蘭という人、作家と しては当然とも思える出版社への「売り込み」をやることもなかったらしい。 くわえて、クチがわるい!これは例外的に親しいつきあいのあった光瀬龍氏の証言が残って いるけど、むろん悪意からでないのはわかっていても、時として腹が立ってくる、そんなレベル だったらしい。 だからして、今日泊亜蘭氏は、理解者は少なかった。その知名度が低かったのも、以上の 理由があれば、ある程度納得のいく話ではある。 が、その遺作となった作品群は、まことに素晴らしい逸品ぞろい。 これからじっくりと読み込んでいくつもりである。

士門