随想 春夏秋冬 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
劉邦を読んでいる。癖で、初めての作家がいったいどんな人なのかにも興味が強いため、手に取った。読後に、存外に最近の本である事を知り、内容が今という時間軸に近いことを喜べたのはボーナス。 劉邦には、内容に圧倒され続けている。古代。しかも、他国(隣国とはいえ)。広大過ぎる舞台、覚え切れるはずもないほど登場する人物群。極めて少ないはずの情報から、水が滴るように瑞々しく、リアル感のある物語を巧みに描き出してくれる宮城谷氏。読者としてはありがたくて仕方ない。 子供の頃から、どういうふうに生きてきたか、大学生時代のお話も多いが、いかに小説家を目指すようになったのか。そして奥様との出会いから現在の夫婦関係についての印象まで。やや難解と言ってもいい、最近では目に触れることが少なくなった日本語の単語が(劉邦でももちろんそうだが)多数使われていて、そういう、絶滅危惧種的な単語に触れるたびに、そもそもそういう単語を知らない自分を恥じる気持ちになり、改めて日本語の美しさ、素晴らしさに想いが及んで思わず背筋が伸びてしまう。 自己の内面世界の輪郭をはっきりと持ち、外界との関係を常に冷静に分析し、自分を見つめながら日々を過ごし、大人になられた方なんだなと理解できる。その中には多少ならずの劣等感が常にありつつも、ただし、それを上回るほどの楽観も持っておられる。その点が何か、目上の方に失礼だが可愛らしく感じられるというか。 自分とはかなり性格のかけ離れたタイプの人格の方。でも、読むうちにすっかりファンになってしまった。歴史小説作家の自分のナンバーワンは(凡庸ながら)司馬遼太郎。しかし、(劉邦しかまだ読んでいないが)大衆娯楽性というような面では宮城谷作品はより硬く、歴史書に少し寄っている。違いはあるが、司馬遼太郎に次いでまた新たに好きな作家に(青山文平に続いてか)出会うことができた。僥倖だ。
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宮城谷さんの主に小説家になるまでの随想録。四十代半ばまで色々な経験、出会いが糧になったのだろう。特に良い奥さんにめぐり逢えて良かった。2018.4.12
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随筆集。過去に出された物と内容的に重複してる部分もあったりしますが、これはこれで楽しく読みました。個人的には奥様とのお見合い場面の話が好き。
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