夜の木の下で の商品レビュー
久々に湯本香樹実さんの作品を本屋さんで見つけ、嬉しくて迷うこと無くレジに向かった。 初めて読んだのが「夏の庭」で他の作品も学生時代に読んだせいか、今作は大人になった自分としてすとんと心に落ちてきた。おとぎ話のように非現実的でありながら、時には逃れられようのない現実に向き合うこと...
久々に湯本香樹実さんの作品を本屋さんで見つけ、嬉しくて迷うこと無くレジに向かった。 初めて読んだのが「夏の庭」で他の作品も学生時代に読んだせいか、今作は大人になった自分としてすとんと心に落ちてきた。おとぎ話のように非現実的でありながら、時には逃れられようのない現実に向き合うことになるお話。 主人公たちが子ども時代を思い出すのは、今の自分があの頃の自分と地続きだから。多感な女子高生や身体の弱かった弟を持つ兄、そして事故に遭ってしまった弟を持つ姉。 どんな思い出も今の自分と続いているのだと勇気づけられ、一方できつく閉じていた蓋を開けられ暗闇を見せつけられる恐ろしさもある。表題作「夜の木の下で」が昔の小さな自分と重なって、思わず涙が溢れた。
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2018/6/13了読。 春先くらいからのんびり少しずつ読んでいた短編集。 全然進んでいなかったのが、先日の出張移動で一気に読めました。 緑の洞窟 焼却炉 リターン・マッチ 私のサドル マジック・フルート 夜の木の下で どれも不思議なお話。 自転車のサドルが話しかけたり、亡くな...
2018/6/13了読。 春先くらいからのんびり少しずつ読んでいた短編集。 全然進んでいなかったのが、先日の出張移動で一気に読めました。 緑の洞窟 焼却炉 リターン・マッチ 私のサドル マジック・フルート 夜の木の下で どれも不思議なお話。 自転車のサドルが話しかけたり、亡くなっているはずの人が普通に幽霊として家の中を往き来していたり… 夢と現のあわいは何とも心地よく、ずっとそのままたゆたっていたくなる。 なんとも言えない雰囲気の物語でした。
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久々の湯本和樹実。綺麗で透き通った文章に、どことなく郷愁が漂う。郷愁というのは懐かしさの一方で、思い出したくないような、何となく後ろ暗いような側面がある。帰りたいけど帰りたくない、みたいな。だからこそこの小説はきらきら綺麗なだけではなく、どこか暗くて、“引っかかる”。それでも全体...
久々の湯本和樹実。綺麗で透き通った文章に、どことなく郷愁が漂う。郷愁というのは懐かしさの一方で、思い出したくないような、何となく後ろ暗いような側面がある。帰りたいけど帰りたくない、みたいな。だからこそこの小説はきらきら綺麗なだけではなく、どこか暗くて、“引っかかる”。それでも全体の印象は澄み渡った感じがあって、読んでいて気持ちよかった。
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人は皆、一日一日を積み重ねて大人になっていく。大人になってしまえばそんなことをうっかりすっかり忘れてしまいがちで。だからこそ、この「夜の木の下で」の中の世界は甘酸っぱいようなくすぐったいような、だけど、どこか忘れてしまいたい記憶を呼び覚ます。湿度の高いポジティブではない感覚は好み...
人は皆、一日一日を積み重ねて大人になっていく。大人になってしまえばそんなことをうっかりすっかり忘れてしまいがちで。だからこそ、この「夜の木の下で」の中の世界は甘酸っぱいようなくすぐったいような、だけど、どこか忘れてしまいたい記憶を呼び覚ます。湿度の高いポジティブではない感覚は好みがわかれそうではあるが。子供の世界というのは狭くて、狭いことに気づかずにいる幸せと不幸せ。そんなことを思ってみる。
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夜の木の下で を新幹線の中で読んで、朝から泣いてしまった こんなにも静かでこんなにも穏やかでうつくしい文章を書けるなんてすごい
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人待ちをしていた本屋で、ふと「夏の庭」を思い出し買っておいた一冊。 六篇からなる、昭和初期の田舎での生き死に、みたいな物語。 1篇目「緑の洞窟」は、僅か20ページでこんなに深いか、と思ったし、4篇目のコミカルさにも救われた(けどやっぱりすぐ人が死ぬ)。 この本で生き死にを書きたかったのだろうなと、思ったもののサラッと終わってしまう。 解説によると、そこが良いそうです。
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読み切り短編小説集。 最初の2編が、最近の "会話中心でリズム良く手早く読める" とは一線を画していたので、"うわあー重いわー" と思ったが、段々と少し軽くなり自分も慣れたか。 心情描写が多く、展開が多い訳ではないが共感し易い面も。状況を描...
読み切り短編小説集。 最初の2編が、最近の "会話中心でリズム良く手早く読める" とは一線を画していたので、"うわあー重いわー" と思ったが、段々と少し軽くなり自分も慣れたか。 心情描写が多く、展開が多い訳ではないが共感し易い面も。状況を描かずに心理描写だけが進み、読み終わると理解できる短編なども。 自分個人との相性の点で今一つか?
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遠く離れてしまった大切な人、過ぎてしまった時間、それらを思い出すとき、しんとした気持ちになることがある。そして、その思い出がどんなに辛い出来事だったとしても、今の自分にはそれすら輝く時間として、大事な自分の一部として思い出せることに気が付く。思い出すという行為が今の自分にもたらす幸福感。読後にしみじみとした感情を残してくれた作品だった。 「緑の洞窟」で鼻の奥をツンとさせ、「リターン・マッチ」 で哀しい結末に切なくなり、「夜の木の下で」ではほっと安堵した。 何より解説が梯久美子さんの解説がよかった。 ーー過去の自分が消えて、いまの自分になったのではない。幼い日の自分は、失われることなく、そのまま現在の自分の中にいる。時は過ぎ去っていくのではなく、積み重なっていくのだーー 幼い日の辛い出来事も嫌な自分も、それがあったから今があると思うと、許してあげられるような気がする。。
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この短編集に登場する人たちは、おとなになって、こどもの頃の自分を思い返しているけれど、それはきらきらと輝いちゃいない。どこかにトゲが刺さっているよう。きょうだいとか友だちとか、いつまでも一緒にいたって不思議ではない関係なのに、いつのまにか目の前から消えてしまった。湿度高め、妙に生...
この短編集に登場する人たちは、おとなになって、こどもの頃の自分を思い返しているけれど、それはきらきらと輝いちゃいない。どこかにトゲが刺さっているよう。きょうだいとか友だちとか、いつまでも一緒にいたって不思議ではない関係なのに、いつのまにか目の前から消えてしまった。湿度高め、妙に生々しい描写もあって、同著者の『夏の庭』が大好きだった私は戸惑い気味。 生理用品を焼却炉で焼く話には苦笑い。「生理はうつる」と信じていた頃が懐かしい。女子生徒がみんな同じ日にばかり生理になるはずなんてないのに、なぜかかぶるんだなぁ(笑)。 もうちょいイタくない湯本さんのほうが好きです。
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長い時間をかけて少しずつ読んでいた短編集 なんだか”死”が身近に感じてしまう 深い湖の底にいるような気持ちになる本だった 心の中が少し透明になって緩やかに流れるような気持ちで 静かに静かに読んでいられるいい時間だったようなきがする
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