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周期律―元素追想 新装版 の商品レビュー

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2020/05/21

淡々とした文体と、元素の名による表題が作り出す不思議な律動。そこから時に湧き出る、強い情念と主張。一言で特性を表す言葉を私はもたないが、読後感がいつまでも残る印象的な作品だ。 大きくうねる歴史の中で普遍的な性質をもち輝きを放つ化学との対峙は、高校時代に化学が苦手科目だった私のよ...

淡々とした文体と、元素の名による表題が作り出す不思議な律動。そこから時に湧き出る、強い情念と主張。一言で特性を表す言葉を私はもたないが、読後感がいつまでも残る印象的な作品だ。 大きくうねる歴史の中で普遍的な性質をもち輝きを放つ化学との対峙は、高校時代に化学が苦手科目だった私のような人間にも深く刺さる。 淡々とした事実の中にさりげなく情感が織り込まれているためか、読みにくいわけではないのに読み進めては前の頁へ戻って読み直し、ということを幾度となく繰り返した。 読後に寂寥感を感じるのは、著者の最終的な決断を知っているからなのか作品から立ち上るものがあるのか。 なんにせよ、化学に、イタリアに、ファシズムの暗い歴史に興味がなくとも心に何かを残す良質な一冊である。

Posted byブクログ