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転生の魔 の商品レビュー

3.7

9件のお客様レビュー

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2020/05/01

ー 「チェ・ゲバラの『二つ、三つ、多くのヴェトナムを」という言葉に、当時の若者の少なからぬ者たちが応えようとした。メコンデルタで戦われているゲリラ戦を、条件が違う先進国でもやらなければならない、いや、やればできることを信じようとした。しかしゲバラはボリビアの密林で射殺されたし、人...

ー 「チェ・ゲバラの『二つ、三つ、多くのヴェトナムを」という言葉に、当時の若者の少なからぬ者たちが応えようとした。メコンデルタで戦われているゲリラ戦を、条件が違う先進国でもやらなければならない、いや、やればできることを信じようとした。しかしゲバラはボリビアの密林で射殺されたし、人民戦争型の農村ゲリラや山岳ゲリラはネパールやコロンビアなど、世界のいたるところで失敗したといわざるをえない。先進国の場合も同じで、ドイツやイタリア、アイルランドやスペインなど都市ゲリラ派は壊減し、あるいは軍事闘争を停止した。日本もその一例というわけだから、あのころの政治判断は誤っていたんだろう。 しかし世界が無数に交錯する力の場である以上、抗議や抵抗にともなう実力の行使を原理的否認することなど不可能だ。いまのところ軍事闘争は現実的でない、有効でないという判断はむろんありうる。しかし未来永劫、絶対的に暴力と無縁でいたいという願望は空想的だと思うがね。」 ー 笠井潔の左翼ミステリー、やっぱいいなぁ。 戦争、テロリズム、ゲリラ、反日武装闘争、全共闘、内ゲバ、公安、三島由紀夫、サルトル、ドストエフスキー、ジハード、カルト、、、おどろおどろしい背景に密室と私立探偵が加わって、素晴らしい組み合わせで最高のミステリーに仕上がっている。 あの頃の大学生ってもう70代に近いんだな。なんだか不思議だなぁ〜。

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2018/08/04

飛鳥井シリーズ。ハードボイルドにしてミステリ、そして社会小説でもある重厚な一作です。 過去に消失した女性が現代にそのままの姿で現れた、というとんでもない謎。そして過去の学生運動に絡んだ事件。ひとつひとつは骨太ながらもやや地味な印象を受ける謎なのだけれど、それらが繋がって現在進行中...

飛鳥井シリーズ。ハードボイルドにしてミステリ、そして社会小説でもある重厚な一作です。 過去に消失した女性が現代にそのままの姿で現れた、というとんでもない謎。そして過去の学生運動に絡んだ事件。ひとつひとつは骨太ながらもやや地味な印象を受ける謎なのだけれど、それらが繋がって現在進行中のとある犯罪をあぶりだす経緯はスリリングでした。 飛鳥井が時代の経緯に伴ってかなり齢をとってしまったなあ、という印象。だから活劇的な部分はほぼないけれど、じっくりと読まされる渋い物語でした。

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2018/05/16

43年前、密室から消えた女が、当時と全く同じ容姿のまま、国会前でデモをする群衆の中にいた? 謎の女「ジン」を探す依頼が私立探偵飛鳥井のもとにやってくる…。 さすが笠井氏。単なるミステリやハードボイルドではない。現代社会の病理を含めてここまで描出できるのは笠井氏ならでは。

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2018/04/12
  • ネタバレ

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はからずも橋本治『草薙の剣』と日を置かずに読み、日本の戦後史に向き合うこととなった。 草薙…は市井の人々、こちらは全共闘という全く違う道を生きたどちらも日本人。そしてもはやみな老人。 それは置いておいて、矢吹駆シリーズの知的興奮をまた味わいたくなったが、読む方も知力体力が要求されるよなぁと諦め気味。

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2018/02/04

笠井潔は80年代にヤブキカケルシリーズに触れて以来かも。安保関連法案でのSEALDsの存在感は学生運動が盛り上がった世代の瘡蓋に触れたようで、若い世代だけじゃなく団塊世代の方々のテンションが妙に上がったように感じました。本作もそんな空気感に刺激されて生まれた小説であるような気がし...

笠井潔は80年代にヤブキカケルシリーズに触れて以来かも。安保関連法案でのSEALDsの存在感は学生運動が盛り上がった世代の瘡蓋に触れたようで、若い世代だけじゃなく団塊世代の方々のテンションが妙に上がったように感じました。本作もそんな空気感に刺激されて生まれた小説であるような気がします。ついつい昭和史的には学生運動は連合赤軍事件で終焉したようまとめられますが、その後の三菱重工ビル爆破事件とかハーグ事件とか、消え逝く前の悶えのような事件も確かにあって、歴史は急には変わらないのでありました。そんな70年代の空気を蘇らせてくれるミステリーです。1972年のクリスマスに大学のサークルの部室で起こった事件が、平成が終わろうとし団塊世代が完全リタイア世代になっている現在から、変わらない人々と変わっていく日本のを照射していきます。バブルとかで一回見えなくなってしまった学生運動の地下水脈の存在を改めて確認することが謎解きの主旋律になります。その伴奏は、本書にも登場するユーミンの卒業写真のフレーズ「あの頃の生き方をあなたは忘れないで あなたは私の青春そのもの」というノスタルジーになるのかもしれません。

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2017/12/05

敗戦の記憶を英雄的に塗り替えて語る大人たちへの憎悪が 日本の学生運動を過激に走らせた一因であると 個人的には考える そこには、確かにある種の切実さも存在したはずだが いつしか共産主義に結びついて「個人は存在しない」という主張になり 人間の自由を抑圧し始めた 自分を持たない人類にと...

敗戦の記憶を英雄的に塗り替えて語る大人たちへの憎悪が 日本の学生運動を過激に走らせた一因であると 個人的には考える そこには、確かにある種の切実さも存在したはずだが いつしか共産主義に結びついて「個人は存在しない」という主張になり 人間の自由を抑圧し始めた 自分を持たない人類にとっては、個人的な体験も意味をなさない それでどうして彼は自らの生に意味を見出し、生きていけるかというと 「主義」によりかかっているからだ しかしそれは苛烈な生き方を人間に強いるものだ 主義に反するものはすべて排除しなければならないから 当然、脱落者も多い ついていけなかった人々は、凡俗に染まってゆくだろう 永遠に変わらないものの存在を「転生」とかいった空想に託して 長い人生の苦役を耐えるのだ で、この物語は また来世的な感じで40年前に消えたお友達が 戦争法案反対デモの中にいたんだけどあなた探してくださらない? という へんな依頼を紹介された私立探偵の話だ 登場人物の大半が高齢者となっております

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2017/11/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まさか今になって新作が出るのは思わなかった飛鳥井シリーズの最新作。 こちらのシリーズは著者の評論家・学者としての側面が色濃く出ていて、矢吹駆シリーズとはまた違って趣がある。とはいえ前作が出てから余りにも長い時間が過ぎたので、どういう雰囲気かは読みながら思い出していたのだが……。 矢吹駆シリーズの方も新作が早く出ないだろうか……。

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2017/11/25

ミステリ・ハードボイルドで学ぶ全共闘世代。作者の自世代に対する思い、解説が言うところの笠井潔史観がふんだんに。そういう意味では作者の持ち味が発揮されている作品。7.5

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2018/04/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

おお、登場人物が近所の聖ヶ丘で引き篭もりしてる設定だ…ってそれだけじゃ済まなかった。 昔の探偵モノは、依頼人が知ってることは全部探偵に伝えて嘘もつかないのが前提だったけど、昨今じゃ、調査目的すら隠すときた。探偵も大変だ。 謎解きも充分楽しめるし、笠井節もチョイチョイ覗くけど、もちょっとマニアックな成り行きを期待してた。主人公・飛鳥井が今イチ常識人なんだよなあ。やっぱり矢吹駆がいいよなあ。

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