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〈世界よりいつも遅れてあるわれを死は花束を抱へて待てり〉 〈すれ違う人みな淡く靴ひもの先を見ながらぼくは歩いた〉 〈盲目の仔犬みたいについて来る遊びぢゃないんだらうな憂鬱〉 〈夕風に殴られてゐた自転車の下の空き缶そのものとして〉 〈Amazonの最終ボタン押す指に失意のご...
〈世界よりいつも遅れてあるわれを死は花束を抱へて待てり〉 〈すれ違う人みな淡く靴ひもの先を見ながらぼくは歩いた〉 〈盲目の仔犬みたいについて来る遊びぢゃないんだらうな憂鬱〉 〈夕風に殴られてゐた自転車の下の空き缶そのものとして〉 〈Amazonの最終ボタン押す指に失意のごとき水が流れる〉 〈フルートを吹きたい朝がおとづれて遠い他人を生きる気がする〉 〈奥行きのない毎日がつづいてもきみ棲む朝の輪廻(ループ)をぼくに〉 〈海は碧く深く奥ゆかしい戦艦もジュゴンもヒエログラフも睡る〉 〈失はれさうなDNAとして生きる世界が終はるときまで〉 〈思想まで気分に濡れるこの国で神を取り替へつつ生きてゆく〉 〈日本の複雑すぎるのどかさにだれかがビートルズを聴いてゐる〉 * 冒頭のページから順に気になった歌を引用。 初読は「男、男だー」といった印象でした。 それは男性器が出てくる歌の印象が強かったからかもしれないし(載せないが)、歌の主人公の、今の日本に対する皮肉的な見方がどこか男性的だと感じたからかもしれない。 でも、女性の歌人でも性器を歌に出すし、歌で日本の皮肉のひとつやふたつを詠うだろう。 私は、どこに「男」を、感じているのだろうか。うーん、わからん。 * それでも、あ、これ、なんとなくわかるな。と思える歌や、そうか、皮肉っぽい歌でもポエジー(詩性)を含まないと、短歌として、いい歌になりにくいんだな。投稿したボツ歌は愚痴とぼやきだったな、反省。とか、共感と学びの多い歌集でした。
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ぼくを立ち止まらせ淡く抒情する春には春のセブン-イレブン 夕風に殴られていた自転車の下の空缶そのものとして 雨の日に雨の音聴くかつてかのリヴァプールから盗んだ耳で 闇に舌をのばしてゐるとたましひが自転している音がきこえる 満開の桜の下をぼくたちは片目を閉ぢ...
ぼくを立ち止まらせ淡く抒情する春には春のセブン-イレブン 夕風に殴られていた自転車の下の空缶そのものとして 雨の日に雨の音聴くかつてかのリヴァプールから盗んだ耳で 闇に舌をのばしてゐるとたましひが自転している音がきこえる 満開の桜の下をぼくたちは片目を閉ぢたまま歩き出す 記憶にはあふれるほどの水がありきみのかたちの夏が来てゐる この国に朽ちるわたしのかけらからそれもいい草花が咲いたら . 静かに湧きあがってくるような抒情性がある。「闇」「水」「春」みたいな開いていてスケール感のあるモチーフと、不自由で閉じているような主体とを関わらせて、遠くて叶わない夢に向かうようなせつなさをきれいに的確にさしだしてくる。技術的で、うまい感じがした
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