脳に心が読めるか? の商品レビュー
図書館で見かけて、あとがきのドーナツの穴にまつわる話に惹かれ、面白そうだなと思って手にした。どうも著者名に見覚えがあるなあと思っていたところ、10年ほど前に別の著作を読んでいたのだった。著者名を本棚内検索して初めて自覚する私。 本書は、著者が新聞、雑誌等に寄せた書評を集め、さら...
図書館で見かけて、あとがきのドーナツの穴にまつわる話に惹かれ、面白そうだなと思って手にした。どうも著者名に見覚えがあるなあと思っていたところ、10年ほど前に別の著作を読んでいたのだった。著者名を本棚内検索して初めて自覚する私。 本書は、著者が新聞、雑誌等に寄せた書評を集め、さらに数編を新しく書きおろして本にまとめたもののよう。 著者はもともと動物行動学の研究者であり、そこからヒトの脳や心にかかわる探求も深めていった人物。その人物が自分の趣味で選んだ著作についての書評のため、私好みの本がずらり。既読のものもいくつもあり、そして書評自体もほぼ見開き2ページで完結しているため読みやすく、すいすい進んだ。 著者のチョイスが私好みばかりのため、読んでみたいと思う本が多数あり、これはこれでまた困ったことになった、と感じた次第。たくさんメモっちゃいました。 著者も短歌を詠む趣味があるとかで、あの永田知宏氏はじめ、そういう科学者が多いことが綴られた本なんかも紹介されていて興味深い。 どれもこれもとても知的好奇心を掻き立てられてよかったのだけど、唯一、ここだけが引っかかったという箇所があり、なんとも割り切れない気分。 『脳からみた自閉症』の紹介のくだりで、最後の最後に「今後は自閉症スペクトラム障害と診断される人が増えると思われ、彼らをどう社会に適応させていくか」という記述があった。ASDについての理解が足りていないのだろうな、著者に限らず、ほとんどの人はこう思うんだろうなと思って、とても残念な気持ちになってしまった。彼らを社会に適応させようと思っているうちは、絶対うまくいかないのですよ。まあ著者はそれに続けて「共存できる社会のデザインが必要」と記しているので、まったく理解がないわけではないのだろうけれど。 みんながそのことを理解できるようになるには、まだまだ時間がかかるのだろうなあ。
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この手の『本の本』を読むと大抵は収拾がつかなくなるのだが、一応脳とか心とかのジャンル縛りがあるお陰で、落ち着いて読み通せた。大抵の本が見開き2ページ内で語られているのも良い。何気に一番の収穫は「画集で見る絵には額縁がないが、美術館で見る絵には必ず額縁が付いている」という指摘と、ブリテンのギター曲。
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<関心を持った本> 「フランシス・クリック」マット・リドレー 「アレックスと私」アイリーン・M・ペパーバーグ 「〈インターネット〉の次に来るもの」ケヴィン・ケリー 2020/10/5再読 「若い読者のための第三のチンパンジー」ジャレド・ダイアモンド 「文化進化論」アレックス・メ...
<関心を持った本> 「フランシス・クリック」マット・リドレー 「アレックスと私」アイリーン・M・ペパーバーグ 「〈インターネット〉の次に来るもの」ケヴィン・ケリー 2020/10/5再読 「若い読者のための第三のチンパンジー」ジャレド・ダイアモンド 「文化進化論」アレックス・メスーディ 「脳・心・人工知能 数理で脳を解き明かす」甘利俊一 「脳からみた自閉症」大隅典子 「人間はなぜ歌うのか? 」ジョーゼフ・ジョルダーニア 「火の鳥 4鳳凰編」手塚治虫 「人工知能と経済の未来」井上智洋 「働きたくないイタチと言葉がわかるロボット」川添愛
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ヘミングウェイは言ったらしい。小説を書く作業は、ドーナツを食べるようなものだ。ドーナツで最も大切なのはその穴だが、ドーナツを食べると穴も消えてしまう。言葉は、言葉で表現できないことを表現するために、回りを埋め尽くすためだけに使われるのだと。
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