ヒストリア の商品レビュー
太平洋戦争でアメリカが沖縄に上陸した所から物語は始まる。 いろんな要素が詰め込まれていた。 SF、沖縄戦、米軍、日系人、移民、革命、社会主義、キューバ危機、沖縄返還… 歴史とは、様々な要素が重なり合って作られているんだと感じた。 沖縄から見た、太平洋戦争、沖縄占領、沖縄返還。本...
太平洋戦争でアメリカが沖縄に上陸した所から物語は始まる。 いろんな要素が詰め込まれていた。 SF、沖縄戦、米軍、日系人、移民、革命、社会主義、キューバ危機、沖縄返還… 歴史とは、様々な要素が重なり合って作られているんだと感じた。 沖縄から見た、太平洋戦争、沖縄占領、沖縄返還。本土から見るのとは感じ方が全く違う。 こんなに負担をかけさせていたのかと、驚くとともに、今に続くアメリカ基地問題も心に刺さる。
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強烈なメッセージ性と莫大な情報量に目眩を覚える。この小説が唱えるメッセージは山ほどある。戦争の悲惨さ、異文化理解、革命の功罪、マブイと呼ばれる魂の片割れが問う人格の真実性、幸せの形、当日の諜報の生々しさなどなど、読者の捉え方によってこの小説の重さや質は大きく異なることだと思った。...
強烈なメッセージ性と莫大な情報量に目眩を覚える。この小説が唱えるメッセージは山ほどある。戦争の悲惨さ、異文化理解、革命の功罪、マブイと呼ばれる魂の片割れが問う人格の真実性、幸せの形、当日の諜報の生々しさなどなど、読者の捉え方によってこの小説の重さや質は大きく異なることだと思った。ただ、僕は池上永一は小説という枠組みの中で一つの世界を作ったのだと思った。池上永一はヒストリアという小説に世界を構成する混沌としたイデオロギーの集まりを生み出した。知花煉に降りかかる現実は当時の闇そのものを形容している。ただ、それが具体的にどういったものなのかについて考え始めるとたちまち糸が絡まるみたいにややこしくなる。現実もこれと同じだ。僕たちは抱えきれない闇の数々を前にして尻込みをしているか、あるいはその存在に気が付かないでいるかのどちらかだ。前者はまだ救いようがあるが後者は無理だ。自分の敵は自分で認識しなければならない。後者の人間にはこの小説がどのように映ったのか。そこがポイントだと思った。
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テンペスト、シャングリ・ラ、黙示録など、池上永一の描く主人公は簡単にへこたれない。 つまずいても、失敗しても、何度でも立ち上がって成功を求める。 ただの野良犬ではない、狼のような射貫く視線で前を見つめて突き進む。 沖縄戦の最中、知花煉は艦砲射撃の一斉掃射の中を逃げ続けて...
テンペスト、シャングリ・ラ、黙示録など、池上永一の描く主人公は簡単にへこたれない。 つまずいても、失敗しても、何度でも立ち上がって成功を求める。 ただの野良犬ではない、狼のような射貫く視線で前を見つめて突き進む。 沖縄戦の最中、知花煉は艦砲射撃の一斉掃射の中を逃げ続けていた。 死が支配する世界で何度も死にかけながらも、彼女だけは死ななかった。 彼女は、魂(マブイ)を落としてしまっていた。 戦後、不屈の闘志と商才からコザ市で成り上がった彼女だったが、米軍CICから追われる身となる。 誰かからの呼び声に応じて沖縄を脱出し、琉球政府移民の一人として二か月後にボリビアの地にいた。 この地で彼女が出会ったのは、艦砲射撃の衝撃で地球の裏のボリビアまで吹き飛ばされた自身のマブイだった。 実態を持たないもう一人の私は、幾度となく私の肉体を奪おうと画策する。 ボリビアでの出会い、 幾度とない身の破滅と復活、 容赦なく巻き込まれる革命の嵐、 その末に出会った青年ゲバラとの恋、 魂が分かれた二人の煉の視点から、不屈の彼女の成長が描かれる。そしてラスト。彼女の戦いは未だに終わることが無い。 池上永一の著作は風車祭、レキオスは現代の沖縄を描いているが、最近ではテンペストやトロイメライ、黙示録では琉球時代についての著作のほうが多い。 しかし、今までに明らかに戦中から戦後にかけての沖縄については書かれていなかった。 そして今作、ヒストリアでこの時代の沖縄が描かれている。 魂が落ちて地球の裏側まで飛んでいった。 ありえない話だが、今までの池上永一作品を読んでいると、沖縄ではさもありなんと思ってしまう。 何につけてもご都合主義なシーンも、ウチナーンチュの力づくで突破してしまう。 そんな強引な話の筋にも、沖縄の問題を読者に付きつけている。
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この感情の高ぶりを書き留めておきたいのに、どう書けば的確な表現になるのか、分からない。 最後の一行がなんとも言えない。 主人公、知花煉。 沖縄で生まれ育った煉は、戦争で全てを失う。 かなり破天荒なやり方でのしあがっても、運命に翻弄され、どん底まで落とされ、それでもまた這い上がり...
この感情の高ぶりを書き留めておきたいのに、どう書けば的確な表現になるのか、分からない。 最後の一行がなんとも言えない。 主人公、知花煉。 沖縄で生まれ育った煉は、戦争で全てを失う。 かなり破天荒なやり方でのしあがっても、運命に翻弄され、どん底まで落とされ、それでもまた這い上がり… 私はこの小説を読むまでボリビアに日系人がいること、政府が積極的に移民を進めていた事を知らなかった。 沖縄のニュースは気に留めていても、その背景を知ろうとはしなかった。 それでも毎日生きている。 のうのうと生きている。 煉の周りにいる魅力的な登場人物達(特にカルメン!)やハチャメチャな展開のおかけでぐいぐい読み進められるけど、描かれているものはとても重くて、まだ消化しきれない。 煉のようにずっと抱え続けるしかないのだろう。
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