十二世紀のルネサンス の商品レビュー
豊富な知識や調査、鋭い分析に裏打ちされた西洋中世史の専門的書物である一方、分かりやすさ、という点にも配慮されている。素晴らしい。 また章を分け、それぞれの分野に沿って十二世紀ルネサンスを多角的に解体していく著者の胆力には圧倒される。 中世暗黒時代と呼ばれる決まりきった歴史概念と対...
豊富な知識や調査、鋭い分析に裏打ちされた西洋中世史の専門的書物である一方、分かりやすさ、という点にも配慮されている。素晴らしい。 また章を分け、それぞれの分野に沿って十二世紀ルネサンスを多角的に解体していく著者の胆力には圧倒される。 中世暗黒時代と呼ばれる決まりきった歴史概念と対峙していく精神にも拍手を送りたい。 千年以上にも長きにわたる大きな時間を安易にダークだと断定するのは勿体無い。 日本のファンタジー愛好者たちの作品を分析する際、強い批判的視点にもなり得る。
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ルネサンスと言われてすぐに頭に浮かぶのは、イタリアを中心とする14~16世紀のイタリア・ルネサンスであろう。そしてそれ以前の中世は、18世紀の啓蒙主義者たちによって、人間精神が停滞した「暗黒時代」だとみなされた。このような偏見に対して、イタリア・ルネサンスに先行する12世紀ルネサ...
ルネサンスと言われてすぐに頭に浮かぶのは、イタリアを中心とする14~16世紀のイタリア・ルネサンスであろう。そしてそれ以前の中世は、18世紀の啓蒙主義者たちによって、人間精神が停滞した「暗黒時代」だとみなされた。このような偏見に対して、イタリア・ルネサンスに先行する12世紀ルネサンスの存在を明らかにし、中世からイタリア・ルネサンスへの連続性を強調したのが本書である。12世紀のヨーロッパはイスラム勢力からイベリア半島やギリシアなど「失地」を回復しつつあり、それに伴いイスラム世界に温存されていたギリシア・ローマの思想や科学と再会することになる。イタリアを中心とする商業活動の活発化に応じてローマ法も復活し、ラテン語の文芸作品は聖俗に及びキリスト教を風刺するラテン詩も生まれた。著者は当時の膨大なラテン語文献を渉猟して、活性化していく自由な人間精神の諸相を浮き彫りにしていく。その圧倒的な知識と筆力には驚嘆するばかりだ。
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