十五歳の戦争 の商品レビュー
人生初の西村京太郎作品 実家の本棚で見つけたため一読したきっかけ 陸軍幼年学校での実体験が克明に記され、当時の状況が想像できる。特に、及川の死が印象的だ。 作品自体は前半では,筆者の経験、後半では日本の戦争論に移り「日本人が現代戦争にいかに向いていないか」について実例を挙げ...
人生初の西村京太郎作品 実家の本棚で見つけたため一読したきっかけ 陸軍幼年学校での実体験が克明に記され、当時の状況が想像できる。特に、及川の死が印象的だ。 作品自体は前半では,筆者の経験、後半では日本の戦争論に移り「日本人が現代戦争にいかに向いていないか」について実例を挙げ主張していた。 日本が戦争をなぜ止めることができなかったのか、の問いには明確な答えを出していない理由としては読者に考える隙間を与えるためだと感じた。
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先ごろ91歳で亡くなった西村京太郎氏。87歳の時の自伝。 生まれてから7年間は平和で、昭和12年に日中戦争が始まって、15歳で終戦になるまで8年間延々と戦争が続いた、とある。昭和20年4月1日に入った陸軍幼年学校、そして昭和20年8月15日以後の昭和20年、20代の人事院時代、...
先ごろ91歳で亡くなった西村京太郎氏。87歳の時の自伝。 生まれてから7年間は平和で、昭和12年に日中戦争が始まって、15歳で終戦になるまで8年間延々と戦争が続いた、とある。昭和20年4月1日に入った陸軍幼年学校、そして昭和20年8月15日以後の昭和20年、20代の人事院時代、11年勤めて退職して作家を志し運転手、保険の外交員、探偵などをして懸賞小説に応募したかけだし時代のこと、そして最後は日本の戦争への姿勢の考察で終わる。 齢90を前にして、自らが体験した戦争を、どうしても書き残しておきたかったんだな、と感じた。終戦時は15歳になる1カ月前。「ぎりぎりだが、子供でいることができた」と書いている。「もし、あの頃大人だったらさまざまなことに腹を立てていたに違いないし、金欲しさに犯罪に走っていたかも知れない」とも書いている。しかし玉音放送を聞いたあとは、「東條のバカヤロー」「あいつのせいで、敗けたんだ!」とある。 氏の人生で一番強烈だった年が昭和20年、14歳から15歳の時だったのだと思う。章立ても第2章:私の戦後 ~特に昭和20年(前半は戦争、後半は平和だった時代)とある。 昭和20年の8月15日以後は、新聞記事を載せているが、その中で、8月15日の新聞の一面が「戦争終結の大詔渙発さる」とあった。朝刊だから朝にこれが配られたのか、と思い検索してみると、15日の朝日新聞などは、12時の放送の反応も書くため、午後に印刷・配達されたとあった。また進駐軍による強盗などのトラブルなども記事になっているが、9月16日以後はこういう記事はぴたりと無くなり、掲載が禁止されたとあった。興味深いこともわかった。 昭和5年、東京(荏原町小山)の4軒長屋に生まれ、父親は菓子職人だったと始まる。現在のどこかなと検索してみると、品川区に荏原町と小山町が隣り合ってあり、五反田駅から西へ1キロくらいの所、星薬科大学がある。 「現代ビジネス 2018.8.15」昭和20年8月15日の新聞 辻田真佐憲 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57005 西村京太郎:1930.9.6-2022.3.3 91歳 2017.8.14第1刷 図書館
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本書の三分の一は陸軍幼年学校を中心とした話、三分の一は戦後、ベストセラー作家になるまでの話、最後は西村氏の戦争についての考え方だった。とても読み易く、真っ当な反戦の方だとお見受けした。氏の小説は一度も読んだことはないのだが、今度読んでみようかなと思っている。
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かのミステリー作家が、自らの戦争体験を語る一冊。 細かいことはさておき 「本来なら自軍の兵士を生きて帰らせてこその戦略であるべき」 というような指摘だけは絶対に忘れない。
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戦中を生きた筆者による回想録であり、なぜ日本が戦争に負けたのか、が記されたエッセイ。先日読んだ「失敗の本質」にも通ずる内容が分かりやすい言葉で書かれていて、読後感は相通ずるものがあった。軽い絶望感、だ。 日本人なら誰しもが、多少なりとも共感できる部分が書かれていると思う。 日本人...
戦中を生きた筆者による回想録であり、なぜ日本が戦争に負けたのか、が記されたエッセイ。先日読んだ「失敗の本質」にも通ずる内容が分かりやすい言葉で書かれていて、読後感は相通ずるものがあった。軽い絶望感、だ。 日本人なら誰しもが、多少なりとも共感できる部分が書かれていると思う。 日本人には戦争はむいてない。平和が向いている、という筆者の思いに少し救われた気もした。
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著者には珍しい自伝エッセー。昨今の右傾化に危機感を覚えて書いたということらしい。前半は自身の戦争体験についてで、後半は太平洋戦争で日本が敗れた理由について、著者が考えていることを率直に述べたものである。とても共感する話が多く、実際のその時代を体験された人ならではの重みもあり、とて...
著者には珍しい自伝エッセー。昨今の右傾化に危機感を覚えて書いたということらしい。前半は自身の戦争体験についてで、後半は太平洋戦争で日本が敗れた理由について、著者が考えていることを率直に述べたものである。とても共感する話が多く、実際のその時代を体験された人ならではの重みもあり、とても興味深く読めた。
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百田尚樹の「戦争と平和」を読んだ直後に読んだため、内容がかなり重複していた。だが、中心は西村氏の戦争体験。終戦時は八王子の幼年学校で兵隊の訓練をしていた。貴重な体験をこの年になって書いたのはすごい。
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敗戦時15歳だった著者が、戦争前後の体験や思いを語るように書き下ろした本である。著者は歴史学者でもルポライターでもなく、言わずと知れたミステリー作家であり、語られることはあくまで個人的な回想である。しかし語られる体験が個人的だからこそ、戦争が「兵士」としての人でなく。生身の人間...
敗戦時15歳だった著者が、戦争前後の体験や思いを語るように書き下ろした本である。著者は歴史学者でもルポライターでもなく、言わずと知れたミステリー作家であり、語られることはあくまで個人的な回想である。しかし語られる体験が個人的だからこそ、戦争が「兵士」としての人でなく。生身の人間の普通の人生を如何に破壊したかが、具体的にわかる。また、各国の戦闘機の数、生産能力の比較などは文献から引用していて信頼できる こんなエピソードが語られている。本の副題にもある通り、著者は陸軍幼年学校「最後の生徒」であるが、「陸幼」は陸軍士官学校、陸軍大学校へと繋がるエリートコースである。当時「隣組」という住民組織があったが、「陸幼」に受かった者が自分の組から出るだけで、組長は鼻が高い、というほどだった。そこに合格するほど優秀な著者だが、戦後の混乱で、大学には行っていない。様々な職を転々とした後、通信制の大学で学ぼうと思い立ち、仕事の休み時間に願書を提出に行く。ところが途中の交差点で、車も走っていないのに全ての信号が赤になっていて、そこから先へ進めない。その場にいた警察官に詰め寄ると、マッカーサー一行が「お通りになる」ので、それまで道を空けているのだと言う。結局願書提出は間に合わず、その日が提出期限の日だったため、著者は「マッカーサーのせいで大学に行きそこねた」のだった。 こうした個人的体験は、膨大な戦死者の数等と比較すれば些細な事かもしれないが、戦争が生活のあらゆる面に途轍もない影響与えたことがかえって生き生きと伝わってくる。その他、当時の食糧事情、労働事情、沖縄のこと、東條英樹のこと、愚かな軍人への怒り、最後は日本という国は戦争に向いていないということ等が、経験に基づいて語られる。学術書ではないので、あくまで著者の見解であるが、私には大変説得力があった。また、ミステリー作家としての自身についてのエピソードは、著者の小説の愛読者(私はそうでもないが)は大変興味深く読めるはずである。 ミステリー作家である著者が本書を著したのは、現在の日本に大変な危機感を抱いているからだろう。日本には死を美化する風潮があると著者は言う。軍歌の歌詞を引用しながら、「死」を気楽に唄う風潮を憂える。戦争の実相を知らず、戦争になっても自らは戦争に行かず、当たり前だが死んだ経験もない者が、見ず知らずの人の死を「美化」する「国柄」とやらに乗って時代を後戻りさせようとしている。そうした流れへの警告として、私は本書を読んだ。著者のミステリーが好きな人にも、特に興味がない人にも、一読を薦めたい本である。
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タイトルに惹かれて読んだけどタイトル通りは前半のみ。「当時何があったか」ではなくて「著者が当時何を経験したか」を読みたかったので△ 読む人が読めば充実した内容だと思うので別のタイトルにしたほうがいいと感じた
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さすが惹きつける文章と飾らない表現で、雰囲気に飲まれてしまう。面白い。実際に当人が感じた感覚をそのまま表現している感があって、リアリティがスゴイ。前半は半生記、後半は意見となっていて、前後半で面白さの意味が違う。戦争反対が左に寄らない珍しい一冊。おすすめ。
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