我が心は石にあらず の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
主人公近藤誠の内にある論理と感情、この二つに葛藤している姿が本作品の特色であり魅力である。人間にはある種の欲望を抱き、ゆえに苦しむことが多々ある。近藤は労働組合を率いて企業等の闘争に明け暮れる一方で、自分の妻ではない赤の他人の女に恋心を抱き、しかも、その女との間で子供を授かってしまう。このような状態が物語の後半まで続いていくが、近藤は最終的に自分の妻と娘がいる家庭を選んで、小説は終了する。
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なんとも複雑な話し。主人公の私は特攻隊の生き残りで、生き残ったことに負い目のような感情を抱きつつ、家族を養うために生きる・働く義務を感じている。また、地方中堅メーカーの組合の代表として経営陣に対していながら、役員の椅子を提案され動揺している。妻や子があり、未婚の妹と一緒に暮らしな...
なんとも複雑な話し。主人公の私は特攻隊の生き残りで、生き残ったことに負い目のような感情を抱きつつ、家族を養うために生きる・働く義務を感じている。また、地方中堅メーカーの組合の代表として経営陣に対していながら、役員の椅子を提案され動揺している。妻や子があり、未婚の妹と一緒に暮らしながら、女性社員と浮気する。組合活動の限界を感じながら、正論の旗を下ろせない。人間が持つ両面性や矛盾の中で生きる男。最終的には、伏せていた秘密が暴かれ、課題が爆発し、どうにもならなくなってしまうが、そのことがかえって肩の荷を下ろしたような安堵につながる。これも矛盾。なんとも思いストーリーだが、共感できるところも多い。
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『自分の腐った臓腑をつかみだして投げつけるように、一切の矛盾を極限化し、人に目をそむけさせながら、人の志とはいかなるものか、精神とは何かをあかるみに出して破滅させてみせよう。 すべての思想は極限までにおしすすめれば必ず、その思想を実践する人間に破滅をもたらす。革命を説きながら破...
『自分の腐った臓腑をつかみだして投げつけるように、一切の矛盾を極限化し、人に目をそむけさせながら、人の志とはいかなるものか、精神とは何かをあかるみに出して破滅させてみせよう。 すべての思想は極限までにおしすすめれば必ず、その思想を実践する人間に破滅をもたらす。革命を説きながら破滅しないですんでいる、すべての人間はハッタリだ。現代は組織の時代だとはいえ、一個の人間の阿修羅の憤激が、どれだけのことを為しうるか、組織ボケしている人間たちに示さねばならぬ。 平和に馴れ、無一物でありながら、あたかも巨万の富を抱き得ているかのように錯覚し、何かを守らねばならないかのように錯覚している人間たちの精神を根こそぎ震撼せしめよう。そうだ、俺にはそれが出来る。いつかはそれをするためにこそ、地味な努力をはらってきたのであり、共感者の層をひろげてきたのだ。』 名作。どのページを読んでも面白い。やはり、高橋和巳の作品は最高だ。 それにしても、ハッタリだけの全共闘世代が引退した後に社会に対して責任を果たし、新しい社会を創っていくのは僕たちだ。そんな僕たちの〈観念〉と〈行動〉とは一体なんなんだろうか。それがどうしても分からない。
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河出書房がせっせと文庫化している高橋和巳。代表作とされる『邪宗門』や『憂鬱なる党派』に比べると、さほど長いわけでもなく、取っつきやすいと思う。しかし暗さだけは拭い去れないw そこがいいのだがw しかしこの『インテリ』に対するある種の幻想というか、特権階級的な自己イメージというのは...
河出書房がせっせと文庫化している高橋和巳。代表作とされる『邪宗門』や『憂鬱なる党派』に比べると、さほど長いわけでもなく、取っつきやすいと思う。しかし暗さだけは拭い去れないw そこがいいのだがw しかしこの『インテリ』に対するある種の幻想というか、特権階級的な自己イメージというのは、当時、本当にあったものなのか、それとも、高橋和巳を呪いのように縛っていた思い込みに過ぎないのか、ちょっと気になる。 このまま全作品が文庫で読めるようになるのか、それとも本書で一段落するのか……出来れば全て文庫で読めるようになって欲しい。
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