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歴史教科書の日米欧比較 の商品レビュー

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2019/06/15
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歴史の授業って、近代に近づくほどに駆け足になって、せいぜい大正デモクラシーくらいまでで時間切れ。 昭和史などは「選択日本史」でしか習ったことがない。 どいつだけではなく、ヨーロッパ諸国やアメリカがふたつの世界大戦をどう総括し、次代を担うが学生たちをどう教育しているのか。 翻って日本では、いかに過去の悲惨な出来事を明るいイメージに転換するかが重大事で、悲惨な出来事は年を追うごとに国民の記憶から薄れていく。 ドイツの最初のつまづきは、産業改革が上手く行き過ぎたこと。人々は都市に集中し、人口は増え、しかし農業生産率は思うように上がらなかった。 その最中の冷害による不作。 ヨーロッパ全土を襲う食糧難に、急激に農業国から工業国へ舵を切ったドイツには、それを補う備蓄がなかった。 こんな苦しい思いはもう嫌だ!と考えたドイツは、国民を海外に移民として送り出す。 教育水準が高く、職人として、農民としてのスキルの高いドイツ系移民は喜んでいけ入れられるが、国が潤ってくると今度は移民を受け入れる側に回る。 いくらでも人手は必要だから。 そして再びの不況。 冷害による不作。 食べ物は限られる。 とすれば、余剰人員に食べさせる食料はない。という面から見た、ドイツの問題。 そんなドイツをイギリスとフランスは追い詰めていく。 第一次大戦の賠償金をもらうまでは食糧援助をしないと。 日本も、明治の殖産興業の陰で農業が軽視され、農業生産率が人口増加に追い付かず、「なら外国から買えばいいじゃん」と中国に「朝鮮で作られる米でいいから日本に売って」なんて交渉をしているけれど、災害のせいで米がとれずに突然の食糧難。 土地が狭いから米が足りないんじゃ!と、一気にアジア進出を企てることになる。 そんな日本に、いつかは雌雄を決しなければならないと覚悟するアメリカ。 都合の悪い事実もしっかり受け止め、着々と足場を固めていくアメリカと違って、諮問機関だかシンクタンクだかの報告書を「これは机上の空論だ。戦いはもっと低画のことの積み重ねなのだから、こんな報告書を受け取ることはできん」と都合の悪いことは聞かなかったことにする日本は、結局報告書の通りになってしまったことを知っても後の祭りだったのだ。 というようなことを、他国の歴史教科書はきちんと書いているのだそうだ。 日本より断然歴史の浅いアメリカの歴史教科書が、日本の歴史教科書の2倍以上の分量を誇り、写真やデータを駆使してわかりやすく歴史の経緯を説明し、そして君たちはどう考えるのかを問いかける。 ああ、だから広島の平和記念公園には欧米の観光客がたくさん来ているのだな。 アジア人観光客はほとんどいなかったのに。 アメリカの、日本人移民に対する差別的排除行動もアメリカの歴史教科書にはしっかり書いてあって、それはアメリカの恥ずべき行為であったとまで書いているのに、日本人高校生の何人がその事実を知っているのだろう。 少なくとも日本の教科書には収容所に閉じ込められた日本人移民について記載しているものはない。 歴史から学ぼうとしない日本は、また間違えてしまうかもしれない。 そして再び国民の味わった艱難辛苦をなかったことにするのだろうか。

Posted byブクログ