ウエストウイング の商品レビュー
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映画のスパイダーマンシリーズのヒロイン役の女優(キルステン・ダンストとエマ・ストーンのことと思われる)がいずれも可愛くないという意見を否定し、特にキルステン・ダンストの方を気に入っているヒロシ。ヒロインが微妙とは当時から散々言われていたが、僕もヒロシと同じくキルステン・ダンストが好きだったので、それだけでヒロシのことが大好きになった。 豪雨の夜の章はこれから何度も読み返すだろうなと思う。この章だけでもこの本と出会えて良かったと思う。あの章は、フカボリが翌日に出勤するところまで続いているのも良い。 3人と一緒に自分もあの部屋に入り浸っていたわけなので、検疫のくだりでは本気で「えっ!?僕もヤバいのでは!?」と思った。
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老朽化した雑居ビルの物置き場で、互いに素性は知らぬまま、メモを介した物々交換を通して、繋がりをもった女性事務員、塾通いの小学生、若手サラリーマン。それぞれの日常がモノローグで語られ、各自のもつ閉塞感が伝わってくる。一方、豪雨による非常事態を通して、ビル内の他の人たちともそれぞれに関わりを深めていく。余裕のある人はいないが、そんななかで一定の距離を保ちつつ、他人同士がささやかに繋がり合う温かみにほっとする。ただ、モノローグが饒舌体というか、思考の垂れ流しのようで、私には読みづらかった。面白いのだけど、疲れた。 『エヴリシング・フロウズ』に、小学生・ヒロシの成長した姿が描かれている。
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知らないのに、知っている。 わたしが本書の帯を書くなら、こう書きたい。 ああ、津村記久子だ! わたしの好きな作家だ! 読了したとき真っ先に思ったことがこれでした 正直なところを言えば、この作品が津村さんのなかで一番好きなわけでも、最初からずっと面白かったわけでも、ない。でも、...
知らないのに、知っている。 わたしが本書の帯を書くなら、こう書きたい。 ああ、津村記久子だ! わたしの好きな作家だ! 読了したとき真っ先に思ったことがこれでした 正直なところを言えば、この作品が津村さんのなかで一番好きなわけでも、最初からずっと面白かったわけでも、ない。でも、彼女の抜群のセンスと書ききる力、世界観の構築力、というか、生きているひとたちを描いている、津村さんの小説でしか味わえない何とも言えない多幸感に包まれたので、わたしにとってはとてもよい読書体験でした。 前置きが長くなったが、本書はネゴロ、ヒロシ、フカボリという三人の世界を軸に、ひとつのビルの中で働いたり勉強したりご飯を食べたり生きている人々のお話だ。 もはやビル自体も生き物のような。 共通点は物置場。 メモや物品を交換しあうだけの会ったこともどんな人物なのか性別年齢さえわからない他人同士の不思議な関係。 トイレでのある出来事を共有することになるのだが、そのシーンは惹きつけられた。 あと、雨の一夜、ゴムボート。 津村さんは天災を書くのも得意。 フカボリさんはあとから登場するのだが、彼が出てきたところらへんで読者としての集中力がとんでもなく切れてしまったのはあった。 が、全部読んで、408頁に至ったところで鳥肌となんの涙かわからないものがこみあげた。 たぶん、感動していた。 すごい作家だ。 そして、エブリシングフロウズのヒロシなのか、この子! ヨボヨボになるまでヨボヨボになっても書き続けてほしい。
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エブリシングフロウズのヒロシが小学生だった時をまた思い出したくての再読。 話の筋はある程度覚えていましたが、細かな出来事はすっかり失念していました。 あー、3人は最後に会ったんだったっけ、という感じ。 トイレでの出産、大雨の日のボートでの渡し、椿ビルディングの解体問題、 どれ...
エブリシングフロウズのヒロシが小学生だった時をまた思い出したくての再読。 話の筋はある程度覚えていましたが、細かな出来事はすっかり失念していました。 あー、3人は最後に会ったんだったっけ、という感じ。 トイレでの出産、大雨の日のボートでの渡し、椿ビルディングの解体問題、 どれも3人を語る上では大切な出来事。 感情の起伏の激しくないニュートラルな3人が、津村さんの作品にいがちなタイプで好みです。 この本の前半のはじめはとても読みにくい感じがしますが、どんどん面白くなります。 挫折しそうな方がいたら、是非頑張って欲しいと思います。
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わーめんどくさっ!やっぱり進まなくって、でもだんだんなじみが出てくると、ふんふん、そんで?でもなんかペースおっそ!って進まない。 けど我慢してるわけじゃなくて、流し読みせず「ちゃんと」読んでるだけ。 面白い。
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繋がりそうで、なかなか繋がらない3人の時間。 古い建物の、忘れ去られた部屋を人心地つく場所として同じように使いながら、部屋で出くわすことがないのがなんだか面白い。たとえばこれが連作小説なら、読み進めるにつれてあっ、ここで繋がるんだ、っていうポイントがあるものだけど、最初から繋がる...
繋がりそうで、なかなか繋がらない3人の時間。 古い建物の、忘れ去られた部屋を人心地つく場所として同じように使いながら、部屋で出くわすことがないのがなんだか面白い。たとえばこれが連作小説なら、読み進めるにつれてあっ、ここで繋がるんだ、っていうポイントがあるものだけど、最初から繋がる場所は明確なのに肝心の人はすれ違う・・・というのが、新鮮だった。 津村さんの小説はゆったり構えているようでいて、いつの間にかがっちり捉えられているみたい。後半はそれでどうなるの、と先が気になるのに地の文が多いせいでなかなかページをめくれないというもどかしい事態に・・・。 ヒロシがすごく印象的。どうやら他の小説の登場人物らしい。子供が身近にいないのでわからないけど、小さくても色々考えてるのかなぁ、とちょっと恐縮する思いだった。 明らかに梅田のスカイビルへ抜ける地下道をモデルにした、ゴムボートの浮かぶ道はつい先日一部が閉鎖され、地上に通路ができたらしい。地上の道なんて普通すぎてきっとこんな物語は生まれなかっただろうな、と思うと時代の移り変わりを目の当たりにした気分。
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傑作『八番筋カウンシル』もそうでしたが、三者三様の日々を緩やかに、伸びやかに描いています。 三人それぞれの日常に起こる出来事。それらを流れるように読ませながら、同時に鼓動の高まりを感じさせ、そしてあざとくない程度にきちんと着地させる技量には、毎回のことながら感服します。 まさ...
傑作『八番筋カウンシル』もそうでしたが、三者三様の日々を緩やかに、伸びやかに描いています。 三人それぞれの日常に起こる出来事。それらを流れるように読ませながら、同時に鼓動の高まりを感じさせ、そしてあざとくない程度にきちんと着地させる技量には、毎回のことながら感服します。 まさに解説にある通り、「津村氏の精度の高い文章の魅力」を存分に味わえます。
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