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ヒトラーとは何か の商品レビュー

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2021/05/14

ドイツから亡命した同時代のジャーナリストによる評伝。 「長いあいだ希望のない無能な人生を送ってきた男が、やおら天才政治家として一国を支配し、そのあとふたたび希望のない無能者として生涯を終える。同じひとりの人間にこんあことがありうるのだろうか」 著者が漏らすこのような驚きが、読...

ドイツから亡命した同時代のジャーナリストによる評伝。 「長いあいだ希望のない無能な人生を送ってきた男が、やおら天才政治家として一国を支配し、そのあとふたたび希望のない無能者として生涯を終える。同じひとりの人間にこんあことがありうるのだろうか」 著者が漏らすこのような驚きが、読後の感想と一致する。 ヒトラーにとっての政治は、通常の為政者たちにとっての政治とは根本的に全くの別もので、彼個人の思想を体現するための道具に過ぎなかったようだ。彼の決断は、憲法をはじめとした国家機能の破壊、後継者の不在、勝ち目のない宣戦布告など、彼自身が亡き後を考慮していたとは考えられないものばかりである。そして、その最後においてドイツ国民が殲滅されることを望む姿からは、彼にとっての政治活動が、あくまで彼個人のためでしかなかったことは明白である。 本書を読むと、人生の前半を生活無能者として過ごし、親しい人間を持たず、一個人としては異常なまでに無味乾燥な人生を送ったヒトラーにとって、政治というよりその人生は早い段階から、イチかバチかの破れかぶれだったように見受けられる。そのようなヒトラーが指揮したナチス・ドイツにおいては、「その過程のどこかで正しい判断がなされていれば」といった歴史のIFは想定しづらい。ヒトラーの選択は一般的には歪なものが多々含まれていたとしても、彼の行動原理としては整合性が取れていたはずだ。通読して、政治家というよりはカルト教団の教祖の生きざまを見たかのような思いである。

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2021/02/21

勉強になった。単に善だ悪だの二元論にとどまらず、冷静に歴史の流れの中でヒトラーがどんな存在で、何に影響を及ぼしたのかが、述べられている。そして、事実を書いてあるのだけれど、なぜか読みやすかった。

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2020/05/25

まだまだ理解ができない。 このような人物が国のトップに立つ事ができるのか。敗戦を覚悟してなお、戦争を続けたのはもう一つの目的を達成させる為、、、。

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2019/08/16

著者は、ナチス政権下にロンドンへ亡命したドイツ人ジャ-ナリストである。〝ヒトラ-とは何者か〟を自問自答した本書は、1978年にドイツ本国で出版された。学歴・職歴もない孤独な放浪者だったアドルフ・ヒトラーが、ドイツ国民を扇動し奮い立たせ、奇跡的な経済復興を成し遂げた功労者となった。...

著者は、ナチス政権下にロンドンへ亡命したドイツ人ジャ-ナリストである。〝ヒトラ-とは何者か〟を自問自答した本書は、1978年にドイツ本国で出版された。学歴・職歴もない孤独な放浪者だったアドルフ・ヒトラーが、ドイツ国民を扇動し奮い立たせ、奇跡的な経済復興を成し遂げた功労者となった。この時点でヒトラ-が急逝していたら、戦争犯罪の極悪人とならずに終わったろう。1945年5月、総統地下壕に追い詰められたヒトラ-は、裏切りのドイツ国民と自らを共に滅ぼしさることだった。

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2018/11/19

30歳まで無職で職歴なし、友情や愛情とは一切無縁、ユダヤ人を基地外なほどに嫌悪、一切反省しない、すべての行動がひらめきと直観で一切思考しない...etc、恐ろしいのはこんな1人の人物が人間をコントロールし何百万もの虐殺を引き起こしたという事実、そして多くの人間がコイツを支持してい...

30歳まで無職で職歴なし、友情や愛情とは一切無縁、ユダヤ人を基地外なほどに嫌悪、一切反省しない、すべての行動がひらめきと直観で一切思考しない...etc、恐ろしいのはこんな1人の人物が人間をコントロールし何百万もの虐殺を引き起こしたという事実、そして多くの人間がコイツを支持していた事実だと思う。人間の動物的な臆病さと脆さ、人間に生まれたからにはそれに絶対に屈したくないと思った!

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2018/06/10

この男の本当の怖さを知っていますか? 同時代を生きたジャーナリストによるもっとも刺激的で、もっとも明快な決定版ヒトラー論。ヒトラー評伝の古典的名著、待望の文庫化。(2017年刊新訳版) ・第1章 遍歴 ・第2章 実績 ・第3章 成功 ・第4章 誤謬 ・第5章 失敗 ・第6章 犯罪...

この男の本当の怖さを知っていますか? 同時代を生きたジャーナリストによるもっとも刺激的で、もっとも明快な決定版ヒトラー論。ヒトラー評伝の古典的名著、待望の文庫化。(2017年刊新訳版) ・第1章 遍歴 ・第2章 実績 ・第3章 成功 ・第4章 誤謬 ・第5章 失敗 ・第6章 犯罪 ・第7章 背信 ヒトラーについて、体系的に知っているわけではないので、本書の内容がどの程度、的を得ているのかは、分からないが、同時代を生きたジャーナリストの著書ということで、興味深く読む。ステレオタイプの論じ方ではないので、一読の価値はある。

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2017/10/07

著者のセバスチャン・ハフナー氏は、1940年代から80年代まで、新聞、雑誌のコラム、ラジオ、テレビの討論、講演、歴史著述等で活躍した稀代のジャーナリスト。ドイツ現代史を語らせたら右に出るものはいないといわれ、一定の教養を備えたドイツ人なら知らぬ人はいないとさえいわれる。 本書は、...

著者のセバスチャン・ハフナー氏は、1940年代から80年代まで、新聞、雑誌のコラム、ラジオ、テレビの討論、講演、歴史著述等で活躍した稀代のジャーナリスト。ドイツ現代史を語らせたら右に出るものはいないといわれ、一定の教養を備えたドイツ人なら知らぬ人はいないとさえいわれる。 本書は、ハフナー氏が晩年の1978年に書き上げ、1年間に旧西ドイツで30万部を売り上げたベストセラーである。年代に沿って事実を書き綴った伝記ではなく、ヒトラーを分析するために本質的な要素だけに還元し、そのテーマ(遍歴、実績、成功、誤謬、失敗、犯罪、背信)毎に章を設けて分かり易く分析している点が特徴である。 まず著者は、「長いあいだ希望のない無能な人生を送ってきた男が、やおら天才政治家として一国を支配し、そのあとふたたび希望のない無能者として生涯を終える。おなじ一人の人間にこんなことがありうるのだろうか。どうしても解明しなくてはならない」と、本書を記した理由を語る。 そして、「二つの相反する理由から、ヒトラーの世界観はなんとしても追究しておかなくてはならない」とし、「第一の理由は、いま追究しておかないと、ヒトラーの世界観がわれわれの想像以上に、ひろく大きく深くこれからも生き続けてしまう危険があるからである」、「第二の理由は、ヒトラーの世界観のうち、まちがったことと、ある程度妥当なこととをきちんと区別しておかないと、たとえ正しいことでも、ただヒトラーがそういったというだけで、タブー視されてしまう危険があるからだ」と述べる。 私はこれまで、ヒトラーについて詳しく知ろうとしたことはなかった(むしろ、避けていたかもしれない)が、本書を読んで、①ヒトラーが“余人をもって代えがたい自分”を作るために、意図的に国の仕組みや後継者を作らず、国の将来にも配慮しなかったこと、②ヒトラーは極右・階級政治家ではなく、むしろ左翼的ポピュリストであり、その唱えたものは極めて社会主義的な「人間の国有化」であったこと、③今日の世界は、気に入ろうが入るまいが、ヒトラー(の失敗)が作ったものであり、ヒトラーがいなければ、ドイツとヨーロッパの分裂も、イスラエルの建国も、植民地の早期解放も、ヨーロッパ社会の階級解体も起こらなかったこと、④ヒトラーにとって、モスクワ陥落を目前にした対ロシア戦敗北後の3年半の戦争は、ヒトラーがユダヤ人絶滅をやり遂げるのが先か、連合軍がドイツを打ちのめすのが先かの“駆け比べ”であったこと、➄ヒトラーは、自らの期待に応えられなかった“弱い”ドイツ民族に対し、最後にはその滅亡を企図したこと等、多くの再認識・発見があった。 現代のドイツ、ヨーロッパ、更には世界を理解する上で、一読するべき一冊ではないだろうか。 (2017年10月了)

Posted byブクログ