スペイ・ファントム の商品レビュー

文林堂

2018/12/07

新版『世界の傑作機』は原則買うことにしている。で、家の在庫を調べて番号順に並べたらこれが抜けてる。家中探してもないというので、よくよく考えてみたら買ってなかった。

で無事後から買って、順番が回ってきたので読了。

無理やりスペイを搭載したファントムは、それ単体では英国の航空産業に忖度しすぎて微妙だが、その後のロールス・ロイスのエンジン開発には貴重な経験となったように思う。

英国人の記事を翻訳して掲載している。そうかと思うと、トリは日本人記者によるアークロイヤル最後の航海の取材記事。

米海軍では公開中の飲酒は厳禁だが、英国は士官は飲酒が許される。

フォークランド紛争に関する洋書でハリアーのパイロットが酒飲んでるのは知ってたけど（ハーミズは深刻なビール不足に陥る）、パイロット以外の乗組員がどうなのか謎だったのでようやく誰が酒を飲めるのか、支払いをどうしてるかが分かった。

飲む場所は士官食堂と訳されてるけど、Officer's Messは食堂とはちょっとニュアンスが違う感じ。館内はMessの他、Wardroomとも呼ばれる。

士官が酒飲んでいいのは自己管理ができるという前提によるとある。東洋の文化圏では酔っ払って自分をさらけ出すのがいいみたいな認識なので、今の自衛隊がいかに品行方正と言えども、アメリカ式の飲酒一切禁止の方が妥当だろう（旧海軍では真珠湾の帰りにどんちゃん騒ぎとかしていた）。

英軍ではファントムは空母がなくなり艦上戦闘機としての役目を終え、攻撃機はジャギュアやトーネードが代わり、戦闘機としてもトーネードF3が後を継いだ。

高いコストを投じて配備したファントムもほぼ順調に後継機にバトンを渡せたあたり、やはり英国の航空産業の厚みを感じる。

日本がファントムを長く使ってることを悪く言うつもりはないけれど。

追記すると、スペイ川はスコットランド北部を流れる川で、その川沿いには多くのウイスキー蒸留所がある。スペイサイド、ハイランド、アイラがスコッチの３大聖地。

英国にとって「スペイ」とはそれだけ大きい意味のある名前。