中小企業のための組織再編・資本等取引の会計と税務 の商品レビュー
組織再編の会計税務では定評のある佐藤会計士と新進気鋭の若手税理士とがコラボして最新の組織再編税制について解説されていた。平成29年度の税制改正におけるスクイーズアウト税制についても触れられている。中小企業向けということもあり、町の税理士でも扱えそうな内容であった。巻末の申告書記載...
組織再編の会計税務では定評のある佐藤会計士と新進気鋭の若手税理士とがコラボして最新の組織再編税制について解説されていた。平成29年度の税制改正におけるスクイーズアウト税制についても触れられている。中小企業向けということもあり、町の税理士でも扱えそうな内容であった。巻末の申告書記載例も参考になった。 P278 実務上、法人税基本通達9-6-1(2)に特別清算の規定があることから、特別清算手続きを行っていれば、貸倒損失の要件を容易に満たすことができる。ただし、子会社と受皿会社の実態がまったく一緒の場合には、租税回避行為であると認定される可能性も否めないため、①社名を変更したり、②固定資産を受皿会社ではなく、親会社に譲渡したり、③従業員の退職金を打切支給したりすることにより、同一性の排除を行うことが一般的である。 ※なお、厳密には、法人税基本通達9-6-1(2)で直接的に規定されているのは協定型(本来型)の特別清算である。しかし、協定型(本来型)であっても、和解型(対税型)であっても、債権者で発生する損失は変わらないことから、和解型(対税型)の特別清算であっても同様に解されている。そのため、実務上、和解型(対税型)の特別清算を利用することにより、貸倒損失を認識しているケースも数多く存在する。 ※法人税基本通達9-4-2を満たすためのハードルが極めて高いのは、法人税法37条に規定する寄附金の解釈として行き過ぎた解釈を採用する通達であるためと解される。そもそも、寄附金については、事業性がある支出なのか、それ以外の支出なのかが不明であるため、グレーなものを含めて寄附金として処理したうえで、一定の損金算入限度額を認めるという枠組みになっている。すなわち、「経済合理性」という判断は、寄附金の規定には考慮されていないのである。この点は、法人税基本通達9-4-2の導入のきっかけとなった清水惣事件(大阪高判昭和53年3月30日税務訴訟資料97号1160頁)の評釈として、水野忠恒教授が「寄付金の要件として、合理的な経済目的を考慮することは許されないであろう。そもそも取引の個別の事情により対処することをせず、そのかわりにいかなる場合であっても一定限度の損金算入を認めるというのが寄付金の規定の趣旨なのである。取引の経済目的を考慮することは先の納税者の主張すること以上に不明確なものとなり37条の趣旨に反するといわなければならない。結局、寄付金の認定においても現行法上経済目的を考慮する余地はないのである。(「判批」ジュリスト686号159頁)」と指摘されている。さらに、平成10年度法人税基本通達改正により、同通達9-4-2に合理的な再建計画による債権放棄が含まれてからは、私的整理ガイドラインをはじめ、同通達の要件を満たすためのスキームが作られていたことからも、極めて政治的な通達であったと考えるべきであろう。そのため、子会社支援の手法として使おうとしても、そのハードルは極めて高く、あまり使い勝手の良いものではなくなったため、現在では、第2会社方式が中心的な手法になったと考えることができる。
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