「惑星」の話 の商品レビュー

佐々木貴教(著者)

2018/06/01

地質学で言えば冥王代以前，従って物的証拠が少なくとも現段階ではほぼ存在しない太陽系形成のプロセスについて，どのような理論が構築されているか，また様々な系外惑星の発見が，そうした理論にどう影響しているかといったトピックを扱う．難しい概念は端折って話を進めているが，専門用語も多く一般向きというにはやや難しい印象．とにかく分かっていないことが多すぎて理論だけが先行している状況のようである．原始惑星系円盤の中で微惑星・氷微惑星ができてそれらを核にして現在の岩石惑星・巨大ガス惑星・巨大氷惑星ができたという基礎の部分は知っていたが，惑星重力が大きく大気が重力に押し潰されることでガス惑星が暴走的に成長することや，木星や土星の衛星がそれぞれを取り巻く原子衛星系円盤で形成されたというトピックは知らなかった．また，原始惑星系円盤内で原始惑星が移動し，木土天海の距離や位置関係が変化していたかもしれないというのは興味深いと思った．原始惑星系円盤の初期状態やその後のカオス的な多体問題に支配される惑星形成プロセスの中で，結果できる惑星の状態は極めて多様なものになりうることが予想され，銀河系に数多とあるそうした惑星系の中には，地球とは全く違う状態でありながらも生命誕生の条件を揃えたものも存在するのではないかという風にも考えると，ロマンのある話だと思う．