移りゆく社会に抗して の商品レビュー
今までにお会いした先生方の中で、誠に僭越だが村上陽一郎先生ほど、講義内容や教壇上での立ち振る舞いから「教養」を感じさせる先生はおられない。科学史、科学技術政策、高等教育、大学、教養、美術、音楽、伝統芸能等を統合した講釈は魅力的だった。振り返ってみると、第1部の前半と、第3部の「大...
今までにお会いした先生方の中で、誠に僭越だが村上陽一郎先生ほど、講義内容や教壇上での立ち振る舞いから「教養」を感じさせる先生はおられない。科学史、科学技術政策、高等教育、大学、教養、美術、音楽、伝統芸能等を統合した講釈は魅力的だった。振り返ってみると、第1部の前半と、第3部の「大学の変貌」はその講義内容と一部重なるところがあった。しかし、それより多くの大学に関する根本的な指摘にも気づかされた。例えば、3.11以降に慎重に示した原子力エネルギーに対する見解や、佐村河内氏の件は本来未然に防げた事案であろうとのコメントもあった。より重要と思えたことは、「リベラルアーツ大学」の意義(p.145)を今一度主張した点である。そしてその大学も「義務教育的な色彩を帯びつつある」(p.146)という指摘も意識しなかければならない。かねてから示されているlater specializationも同様である。学生の成熟度に連動して進むべき途を選択できるのが教養教育の本質、と解して日々の仕事にあたりたい。
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