524人の命乞い の商品レビュー
鬼気迫る本である。著者は日航機墜落事件で、当時15歳だった次男と、12歳だった長女、親戚3名を失った遺族である。大阪大学工学部卒業、技師であり研究者という経歴で、理系の知識が豊富なためか、圧力隔壁の説明などは、私がこれまで数冊読んできた日航機墜落事件関係の本の中では、本書が最も...
鬼気迫る本である。著者は日航機墜落事件で、当時15歳だった次男と、12歳だった長女、親戚3名を失った遺族である。大阪大学工学部卒業、技師であり研究者という経歴で、理系の知識が豊富なためか、圧力隔壁の説明などは、私がこれまで数冊読んできた日航機墜落事件関係の本の中では、本書が最もわかりやすかった。また、行間から怒りや悲しみは痛いほどつたわってくるものの、文章は感情に流されることなく、冷静で明晰であり、大変読みやすい。こうした筆致で文章を書けるまでには、30年以上の月日が必要だったのだろうと推察する。 この事件では乗務員15名を含む520人もの命が失われた。世界最大の飛行機墜落事件にもかかわらず、実は誰一人責任を問われていない。裁判すら行われていない。 航空事故調査委員会は、同機が以前尻もち事故を起こした際のボーイング社による修理が不完全だったため、徐々に劣化が進んだ圧力隔壁が遂に破壊されたことが墜落の原因とし、これが日本政府の公式見解となっている。この場合、責めを負うべきは未熟な修理をしたボーイング社、点検時にそれを見逃した日航、欠陥機に運航許可を当時の運輸省ということになる。遺族は当然、この結論に基づき、関係者を告訴・告発した。 ところが検察は、告発されている関係者全員を不起訴にする。検察審査会により「不起訴不当」との判断が下されるも、検察は再度、全員不起訴とのを決定を下す。事故調査委員会の報告を読んでも、圧力隔壁破壊が事故原因かどかはわからない、つまり、政府の出した「結論」は信頼に足るものではないというのが、その理由だった。 「結論」に疑いを持たれた以上、更なる調査を命じるのが当然のはずの政府は、調査を早々と打ち切り、かなりの情報が得られるはずの相模湾での垂直尾翼の回収も、行うつもりはない。そして、1160kgという、1トン以上もの調査・証拠書類を、99年にすべて廃棄してしまう。 疑問に答えず「結論」だけを主張する政府、その「結論」では責任は問えないとする検察、信じ難いことだが、これがこの世界最大の飛行機墜落事件の着地点なのだ。本書は、「巨大な矛盾の谷間に突き落とされた」(著者の言葉)遺族の一人である著者が、事件についての論文や文献を読み、航空力学や法学を学び、執念で調べ上げた結果である。 著者が論理的に導き出した結論は、是非とも本書を読んでほしい。青山透子氏の「日航123便墜落の新事実」は、疑問点が数え上げられ、そこから結論が浮かび上がるような構造になっているが、著者は本書で、実際に起こったはずのことを、真相として明確に述べている。俄かには信じ難く、おそらくは反射的に反発する人もいるだろうが、「陰謀」などという、手垢のついた軽薄な言葉は是非とも控えてもらいたい。 本書は、著者が2年前に発表した技術論文、「日航機墜落事故 真実と真相」を一般向けに読みやすく編集したものだとのことだが、著者はその論文を責任を負うべき組織や人に、反応、反論を期待して贈っている。著者は本当に誠実な姿勢を貫いているのだ。また、本書の最後には、犠牲となった方、全員の氏名が記載されている。くだらない反応は、その方たちに対して失礼であり、あまりに冷酷である。 本書が一人でも多くの方の目に留まり、真剣に読まれ、真相究明のきっかけになることを心から願う。
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国による隠蔽説を主張している作品。 様々な内容に愕然とする。 ただし、読む人によっとはトンデモ本と感じるかもしれない。ただし、何かが隠されていることは確かだと思う内容。
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