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世界における索引と徴候 の商品レビュー

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2019/01/04
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※このレビューにはネタバレを含みます

中井久夫集第3巻。 他の巻に比べても、専門知識がなくても読みやすい巻だと思うが、読みやすくても内容の濃度は凄まじい。「意地の場について」「家族の深淵」「「昭和」を送る」そしてタイトルにもなっている「世界における索引と兆候」、この4本だけでも、一生かかっても読み尽くせるだろうかと感じてしまう。 今この瞬間に読むことの意味を重視すれば、やはりどうしても「「昭和」を送る」を取り上げることになるのだろうか。今上天皇(当時明仁親王)のことも詳細に触れられている。天皇という存在について、客観的な視野を保ちながら、これほどの重さと実在感を持った論は他にはない。 そして最後に放たれる「われわれはアジアに対して「昭和天皇」である。責任は常にわれわれに帰る。」という一撃の重さ。これを読むためだけにでも、この本を手にする価値は絶対にある。 一方で、「花と時刻表」のような、一読温かいものが胸を満たす本当に柔らかな優しい文章もある。 無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら……という定番の質問は、辞書というのがこれまた定番の解答だけれど、恐らく私はこの本だろう。これからの生涯もずっと読む本であり続けるのは間違いない。

Posted byブクログ