怒り(下) の商品レビュー
〝着氷性の霧雨〟が毎日降る、晩秋のポ-ランド地方都市「オルシュティン」の工事現場で発見された白骨死体。その事件の背景に、社会に蔓延する女性への暴力問題、ジェンダ-問題、家庭内暴力が複雑に絡み合った事実が浮上するなか、検察官シャツキと前妻との娘ヘレナが、犯行グル-プに囚われの身とな...
〝着氷性の霧雨〟が毎日降る、晩秋のポ-ランド地方都市「オルシュティン」の工事現場で発見された白骨死体。その事件の背景に、社会に蔓延する女性への暴力問題、ジェンダ-問題、家庭内暴力が複雑に絡み合った事実が浮上するなか、検察官シャツキと前妻との娘ヘレナが、犯行グル-プに囚われの身となり、事件の真相は深い闇の世界へ・・・。 誰しも想像し得ない、こんな結末が待っていようとは! 本編は、悪の論理が一気呵成に正義の鉄槌を粉々に打ち砕いていく。その衝撃の強さに度肝を抜かれるポ-ランド・ミステリ-の傑作。
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上巻は結構感触良かった。 図書館閉鎖で下巻を手に取るのにだいぶ時間がかかり、そのせいなのか、うまく読み取れなかった。 そういえば白骨死体出たんだよね。って忘れる位事件性がうっすい物語。やたら関係者がわさわさ出てくるけど、それがどうリンクしてどう変化するのか、してないのか。 スッキ...
上巻は結構感触良かった。 図書館閉鎖で下巻を手に取るのにだいぶ時間がかかり、そのせいなのか、うまく読み取れなかった。 そういえば白骨死体出たんだよね。って忘れる位事件性がうっすい物語。やたら関係者がわさわさ出てくるけど、それがどうリンクしてどう変化するのか、してないのか。 スッキリしないような作品だった。でも作者の書くシニカルぽさというのか、旦那に心配させ夕飯作らせるために、車の中でメイクを落としてゾンビの顔を作って帰宅する、というような、表現は好きだ。作品としては自分が真面目に本に向かいあえなかった。
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フランケンシュタイン博士。テリー・サバラス。ピーター・セラーズ。これらの有名人を想像させる人物が次々と登場する。軽口を交えながら、どこに向かうのかわからないシャツキ最後の事件を追う。何せポーランドの彷徨えるスター検察官テオドル・シャツキの三部作の最終編なのだ。好奇心の向かう先は...
フランケンシュタイン博士。テリー・サバラス。ピーター・セラーズ。これらの有名人を想像させる人物が次々と登場する。軽口を交えながら、どこに向かうのかわからないシャツキ最後の事件を追う。何せポーランドの彷徨えるスター検察官テオドル・シャツキの三部作の最終編なのだ。好奇心の向かう先は、どのようにシリーズを閉じるつもりなのか? この一点に尽きる。 読者のツボを読み取ってであろう。エキセントリックなシーンで始まる序章はこれから始まる物語のクライマックスであろうかと思われる。 続いてシャツキのその後の変化が、語られる。時代は、前作『一抹の真実』でサンドミエシュを舞台にした連続殺人事件の三年後。シャツキは一度ワルシャワに帰ったらしいが、現在は北部の地方都市オルシュティンで本業以外に講演を仕事を依頼されたりしている。前作までの事件ですっかり事件を解決する一匹狼の保安官イメージをまとったシャツキは、ポーランドで最も有名な検察官となっているらしい。しかも常にぴしりと決めた硬派ファッション。白髪。五十代に手が届きそうな年齢。 彼は、一人娘のヘレナ、新しい恋人・ゼニアと三人で奇妙かつ綱渡り気味の生活をしている。ヘレナはすっかり大人に近づき、本書ではとても重要な役を割り振られる。 ポーランドの町は相変わらず暗く、被征服国家としての歴史の重さに打ちひしがれている。季節は12月で、雪になり切らぬ冷たい着氷性の霧雨と分厚い雲に覆われている。 事件もまた相変わらずエキセントリック。見つかった白骨は過去のドイツ兵の亡霊だとばかり思いこんでいたものの、一週間前に溶かされたものと判明。なんて奇妙な! 新しい街なのでシャツキを取り巻く捜査陣はまたも新たなキャラクターばかり。風土描写ばかりではなくキャラにも決して手を抜かないのがジグムント・ミウォシェフスキという作家である。シャツキを取り巻くのは、個性豊かな存在感抜群の男女ばかり。前作で印象的な登場を果たした精神分析医クレイノツキも相変わらずの個性とドンパチの的中度を誇るが、解剖医のフランケンシュタイン博士(まさに実名までもが)は衝撃的なまでに印象に残ることだろう。 取り上げられるテーマはDV。家庭内で決して誰にも気づかれることなく精神的に追い詰められてゆく静かな被害者たちと、仮面の加害者像が、時折カットバックのように挿入される。無名で。そして次第にシフトアップ。街の緊張が高まり、シャツキの表情がこわばる。静かな家族たちとその裏側に奥行きを見せる影なる暴力。 街に跋扈する復讐の足音。過酷なまでの制裁。後半は、なぜかシャツキ自身が巻き込まれてゆくことで物語に疾走感が生まれる。ページターナー。予断を許さぬ展開。予測を超える真相。シャツキの物語の終焉はどうなるのか? やはりこの三部作は順番に読まなくてはいけない。日本の読者にとって如何に不幸な出版順序であっただろうか? 順番通りに読むことのできた幸福が、この本を閉じるときにしっかりと胸を満たしてくれたのは言うまでもない。
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白骨死体とDV事件がつながっていることについに気が付いたシャツキ検察官。しかしまさにその折、娘のヘレナが誘拐される。周到な犯人の裏をかき、ヘレナを助けることができるのか。 上巻の感想にも書きましたが、複数の犯人ていうのがちょっと見えてこないと思ったらやっぱりこういう方向性だったかっていう・・・。 めまぐるしい展開でしたが、途中で、「わたしはハッピーエンドを信じてるの」っていう登場人物とか、俺は信じてないね!(意訳)っていうシャツキさんとか、ちょっとしたラストへの伏線になってるじゃないですか。娘に「パパは怒りって感じー」(意訳)っていわれたことについて、「単なるキレキャラって意味かな!」(だいぶ意訳)って自嘲するところも、もろにそうだったねって・・・。 しかしこれは好みが分かれるラストではないか。私は苦手です。ファルクが最後に逮捕されるかどうかは、それまでの展開といっさい関わりないので、「ファルク逮捕で一応すっきり」と、「ファルク用意周到で尻尾を出さず」のどっちに収まるかは、まるっきり筆者のオチの好みってことになると思うのです。いいけど、なんかなー。なんかなー。。 でもまあシャツキの言う通りで、ファルクがどんなに完璧でも、関わる人が増えていけば最後は破たんするだろうしな。最後の最後にすごいいい味出してきたビェルト刑事みたいな人もいるし、きっといつか正義集団が検挙さ得る日が来るよ。たぶん。
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面白かった!一人ひとりキャラが立ってて、陰惨な事件ながらも随所にユーモラスな感じもあり暗くならず、読みやすい。しかし最後のオチは如何なものか…もっとスッキリ終わって欲しかった。
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あらすじ 白骨死体は、すべてDVの加害者のものだった。検察官シャッキは、殺害された被害者には、前妻と子どもがいたことを突き止める。さらにその元妻と、息子は火事でなくなっていたが、娘は生き残り、養子に出されていた。娘を誘拐されたシャッキは、犯人の女子高生をつきとめるが、娘が殺されたと思い込み、犯人を絞殺してしまう。しかし、その背後には、正義制裁を行う集団と、シャッキの部下で見習いのファルクがいた。逮捕される前に、ファルクたちを一網打尽にしようと考えたシャッキだが、罠を見破られ敗北したのだった。 これは第3部の最後らしい。ポーランドのルメールといわれている。最後の最後まで楽しく読めていたが、ラストのところが私には抽象的でよくわからなかった。とりあえずシャッキがもう終わりってことは伝わった。面白かったけどなー。完結がわかっているので、第1作・2作が出ても読むかは微妙。
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ポーランドミステリー。 話がどこへ向かうのか分からないバラバラとした感覚の上巻から、だんだんと方向性がみえてくる下巻になって一気に面白くなる。 とはいえ、終わってみればそうだよね、と…。 ビェルト刑事のような悲しい顔した私が取り残された、そんな読後感。
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上巻を我慢して読もう。名前はともかく出てくる人物がどんな人なのか、想像しながら読もう。そうすると、下巻はジェットコースターのように一気読みです。シリーズ1、2を未読でしたが楽しめました。本作拝読のきっかけは本の雑誌評よりたどり着きました。面白かったが星3つの理由は、犯人に疑問が残...
上巻を我慢して読もう。名前はともかく出てくる人物がどんな人なのか、想像しながら読もう。そうすると、下巻はジェットコースターのように一気読みです。シリーズ1、2を未読でしたが楽しめました。本作拝読のきっかけは本の雑誌評よりたどり着きました。面白かったが星3つの理由は、犯人に疑問が残ること、さらに主人公が好きになれなかった。
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“……「マジか」。最後の一行を読み終えた時、あなたは必ずそう呟く!”とのふれこみにつられて読んでみたのはポーランドのクライムノベル。なんでもこの作者は「ポーランドのルメートル」と呼ばれているのだとか。そう呼ぶことがすでにネタバレになってないのか? と危惧しつつ読んでみたが、なかな...
“……「マジか」。最後の一行を読み終えた時、あなたは必ずそう呟く!”とのふれこみにつられて読んでみたのはポーランドのクライムノベル。なんでもこの作者は「ポーランドのルメートル」と呼ばれているのだとか。そう呼ぶことがすでにネタバレになってないのか? と危惧しつつ読んでみたが、なかなかの難物でした。 前出のあらすじを読めば上巻は読む必要がない。それくらい上巻は無駄に満ちている。ほとんど展開しないのに、寄り道回り道の繰り返しで、挙句に蛇行運転してやっとこ本題に戻るという感じ。タイトルの『怒り』は、娘が父親を一言で言い現わしたもの。この検事である主人公の捜査以外の記述がやたらと多い。生活であったり思考であったり、はたまた服を選ぶ様子だったり。おそらく焦点は事件捜査ではないのだろう。「怒り」を抱えた主人公の本質に迫るお話だと思えば、違和感も不自然さも許せるのかもだが。 期待させるふれこみの効果は私にはなかった。読後はひたすら「???」しかなく、主人公の「怒り」も理解不能。そもそもどういう人物か最後まで理解できなかったもんなあ。怒りたいのはこっちだわ。
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ポーランドのルメートルと後書きにあるが、ストーリー展開に無理がある。 謎解きの面白さより、主人公のシャツキ検察官の物語になっており、共感が難しい。
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