日米開戦へのスパイ の商品レビュー
『戦後史の正体』の著者の近著。著者はあくまで実証に徹する。チャーチルは、指導者として米国を参戦させることで英国を守り、日本陸軍は挑発に乗って日本を滅ぼしたというのがゾルゲ事件の本質。 ゾルゲの情報をモスクワが軽視していたというのは、議論の余地があるかもしれない。ゾルゲ情報により、...
『戦後史の正体』の著者の近著。著者はあくまで実証に徹する。チャーチルは、指導者として米国を参戦させることで英国を守り、日本陸軍は挑発に乗って日本を滅ぼしたというのがゾルゲ事件の本質。 ゾルゲの情報をモスクワが軽視していたというのは、議論の余地があるかもしれない。ゾルゲ情報により、スターリンが満州国境から戦車部隊を独ソ戦に振り向けて、戦況を逆転できたという説もあるので。 陸軍がそれまで北方戦の準備はしていたが南方戦の準備はしておらず、ためにあたら多くの将兵をマラリアで亡くしたという指摘、御前会議の出席者の中で駐米経験のある陸軍関係者はいなかったという指摘は、容易に検証可能であり誰も否定しえないところだろう。その陸軍が南進と対米戦を強行に主張したことを愚行という視点は、情報の重要性を知悉した元外務官僚にして元駐イラン大使である著者ならでは。開戦を巡る諸説のもやもやが晴れ、目から鱗が落ちた。少なくとも開戦の経緯について論じるにあたり、これを読まねばモグリと言われるレベル。
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ゾルゲ事件が近衛内閣倒閣の政治闘争に利用され、東条内閣が組閣された。だが、なぜそこまでして総理になりたかったのか(あくまでも著者の言い分によるが)。なんとしても米英と戦う必要があったのか(勝ち目の無い戦争と分かっていながら)。とすれば、陰謀論と言われるのも承知で言えば、東条もまた...
ゾルゲ事件が近衛内閣倒閣の政治闘争に利用され、東条内閣が組閣された。だが、なぜそこまでして総理になりたかったのか(あくまでも著者の言い分によるが)。なんとしても米英と戦う必要があったのか(勝ち目の無い戦争と分かっていながら)。とすれば、陰謀論と言われるのも承知で言えば、東条もまた(たぶん省部には複数名存在したと推測する)コミンテルンのスパイだった。そう考えると納得がいかないか。
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