産業医が見る過労自殺企業の内側 の商品レビュー
すでに荒廃しつつある家族主義的経営、同調圧力の中に過重労働、ひいては自殺の問題を提起する。 「人は外部に敵がいる時、群衆になることでストレスを低減させる」とのことであった。しかし現代は、逆にこの群れることがストレスになっているという。 ではここで、本質的な問題とはなんだろう...
すでに荒廃しつつある家族主義的経営、同調圧力の中に過重労働、ひいては自殺の問題を提起する。 「人は外部に敵がいる時、群衆になることでストレスを低減させる」とのことであった。しかし現代は、逆にこの群れることがストレスになっているという。 ではここで、本質的な問題とはなんだろうか。群れ方自体の問題だ!と、本書では経営者側、管理者側に時代が変わったことによる認識の変容を求めるが、そう単純な話でもない気がする。 家族的であること自体は恐らく問題ではない。見て学べっていうのも合理的ではないかもしれないが、粋な伝え方だと思う。問題は、方向性だろう。 本来、人間関係を重視すべき家族的経営の風土に、生産性、合理性を最重要指標に据えるから不具合が生じるのではないか? 「政治家が哲学を学ばなければ人民が幸福にならない」、または「経済が道徳を学ぶ必要がある」のと同じ理屈だろう。 現代における「外部の敵」とは、論理の不足のことではないか。そのことが人々の進むべき道を見失わせ、人との繋がり方を分からなくさせ、各種「自己対象」を失わせるにも到った。失われた30年はここにある。 群れていても苦しいのである。息苦しい…でも自己対象を求めて群れるしかないのである。過剰なまでの承認欲求、炎上など徹底した排除主義を生んできた背景には、この苦しさがあるのではないか。 求めざるを得ない、でも求めること自体が次の苦しさを生む。時代がアンビバレントに包まれている。 今の時代は、大境界例水準時代と言っても良いのかもしれない。 今こそ鏡、理想化、双子…各種自己対象を取り戻すための倫理、知恵、ファンタジーが必要だと思う。
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産業医に関する職務内容ややりがいなどを知るには良い本であると感じた。一方、表題の過労自殺企業の内側という点については、著者の個人的な意見などが中心となり、真にその内実を説明するには至っていないと感じる。個人的には、メンタルヘルスマネジメントや過去の訴訟事例、厚労省の心の健康保持の...
産業医に関する職務内容ややりがいなどを知るには良い本であると感じた。一方、表題の過労自殺企業の内側という点については、著者の個人的な意見などが中心となり、真にその内実を説明するには至っていないと感じる。個人的には、メンタルヘルスマネジメントや過去の訴訟事例、厚労省の心の健康保持の指針などを踏まえると、ファクトが少ないように感じる。田園都市線沿線はメンタルヘルスになりやすいなど、キャッチ―な見出しであることを過度に意識しすぎた結果、何とも言えない内容になっているものも少なくない。
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