儒教の歴史 の商品レビュー
著者は序章「儒教をどう描くか」のなかで、「儒教はまず何よりも「教え」として理解されるべきだという視点に、本書も立っている」と述べます。そして「教え」とは「理論的体系性と社会的有効性をもった教説の謂である」と説明しています。 著者が執筆者の一人である『中国思想史』(2007年、東...
著者は序章「儒教をどう描くか」のなかで、「儒教はまず何よりも「教え」として理解されるべきだという視点に、本書も立っている」と述べます。そして「教え」とは「理論的体系性と社会的有効性をもった教説の謂である」と説明しています。 著者が執筆者の一人である『中国思想史』(2007年、東京大学出版会)は、中国史のなかで思想が政治的現実に対してどのようにかかわってきたのかということを基軸にした概説書ですが、本書も同様の視点を共有しているということができるように思います。 個々の思想家たちの議論について立ち入った解説がなされているわけではありませんが、儒教の歴史を把握するうえで政治的現実とのかかわりはそれ自体重要なテーマであるはずですし、また中国史を学ぶさいにも本書で解説されているような知識は必要なので、そうした知識をまとめて知ることができるという意味で、有益な本だと感じました。
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孔子を敬う気持ちが高じて、やや難解な本書を購入した。儒教の歴史的変遷を辿る中で、儒教の教義を浮き彫りにしようというスタンスで、その精査対象は、儒教でイメージされる一般的なものを超えて、初めて聞くような人物や思想運動まで、馴染みが薄い主題も論じられる。従って、私も始めは辛抱強く通読...
孔子を敬う気持ちが高じて、やや難解な本書を購入した。儒教の歴史的変遷を辿る中で、儒教の教義を浮き彫りにしようというスタンスで、その精査対象は、儒教でイメージされる一般的なものを超えて、初めて聞くような人物や思想運動まで、馴染みが薄い主題も論じられる。従って、私も始めは辛抱強く通読していたものの、あまりに私の関心から離れて、中国の思想動向の細部などが論じられるので、適当に読み飛ばして、日本の思想界に近しいトピックに絞って読んだ。とはいえ、文章表記について言えば、著者の読書家たる面目が躍如で、読みやすい文章である。やや朱熹を攻撃する向きがあり、私もそうした一派がいることを承知していて、私自身も論語の原典に帰る伊藤仁斎に近い考え方をしている。ともあれ、儒教の思想動向を知る上で参考にできる書物であろう。
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