虹の鳥 新装版 の商品レビュー
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自らを俯瞰するようなカツヤ うちなる自分を裏返して外から無機的にながめるようなカツヤ。 虹色の鳥をヤンバルの森でみることができたなら自分だけ生き残ることができる、部隊は全滅する前提で。 マユの背中に突き刺さる虹色の鳥の入れ墨。 マユは現実の酷い沖縄の子ども、女の姿であり、過去現在未来の酷い沖縄の女の象徴であろう。 さまざまな位相の沖縄の人々、暮らし、政治性、人間性、アメリカは絶対悪、奇妙な果実のようにアメリカにやり返し見返すこと、 幻想、空想、ふと妄想してしまう自分をくだらない馬鹿らしいと思いながら、自分にもマユにも多くの沖縄の人にも、もしかしたらほんの少しのことで全く違う人生になっていたかもしれないという危うさ、諦念と幻想と、間に合わない期待。 表紙の白黒の写真は、物語の中で何度も詳しく描写される虹色の鳥ではなくセバスチャンサルガドの、サルガドらしいコントラストがつよい、イグアナの写真。 暴力、暴力装置、苛烈な日常、沖縄のくらし。私たちは沖縄の暮らしをどのくらい我がものとして想像できるだろうか。
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描写が読んでいてひたすら辛い。残酷。 けれども、それだけではない。 普通の少年が不良のパシリになり、地元の不良先輩から命じられて、マユという女性の生活の面倒を見ながら美人局をさせている。 ところがある日、マユが「ホテル」ではなく、主人公も住む「自分のアパート」に客を連れ込むこと...
描写が読んでいてひたすら辛い。残酷。 けれども、それだけではない。 普通の少年が不良のパシリになり、地元の不良先輩から命じられて、マユという女性の生活の面倒を見ながら美人局をさせている。 ところがある日、マユが「ホテル」ではなく、主人公も住む「自分のアパート」に客を連れ込むことから、人生がさらに狂い始める。 その遠因は「米軍基地にある」ということを主張したい小説ではないし、事実として物事はそう単純なわけがないが、一方で彼ら見ている風景には常に米軍基地があり、その恩恵によって生きている人たちがいて、そしてその恩恵によって狂わされる人生もある。 普通の少年が暴力の世界にいつの間にか入り込んでしまい、抜け出したいと思いながらも他に行く場所もなく、逃げ出す勇気もなく、「なぜあのとき」と思ってしまう姿には共感をした。 僕自身が10代の頃に不良のパシリだったからかもしれないが、とてもリアリティのある感情表現だった。
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