ストラディヴァリウスを上手に盗む方法 の商品レビュー
音楽的に為になる三つの作品からなる短編集。 表題作ではヴァイオリンのことが、「ワグネリアン三部作」ではもちろんワーグナーのことが、そして最後の「レゾナンス」では純正律と平均律の違いが、上手く物語に組み込まれていて面白い。
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表題作は音楽ミステリとして驚愕のトリック&謎解き法だった。いろんな意味ですごい。ワグネリアン三部作はマニアすぎて楽しかった。オタつながりで別の作家さんの『不機嫌な姫とブルックナー団』というブルオタの本を思い出した。
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薀蓄シリーズのファンには、待望の新刊と言えるだろう。海埜と瞬一郎のコンビが登場する表題作を始め、全編音楽の薀蓄に彩られた作品集だ。 「ストラディヴァリウスを上手に盗む方法」。国際コンクールで優勝した、気鋭のヴァイオリニストを招いたコンサート会場から、忽然と「名器」が消えた。居合わせた海埜と瞬一郎が、消失の謎に挑むという表題作。いわゆるハウダニットだが、なるほど、音楽素人には、こんな手口は盲点であった。 僕に名器の良し悪しはわからないだろうが、ストラディヴァリウスという名と、億単位の価値については聞いたことがある。だからこそ、名器にそんなことするんかいっ! と仰け反ってしまった。瞬一郎がいなかったら、まんまと逃げられたのか。 三章から構成される、ワグネリアン三部作。ワーグナーの熱狂的信奉者のことを、ワグネリアンと呼ぶことは知っていたが、僕がぱっと思い浮かぶワーグナーの楽曲といえば、「ワルキューレの騎行」くらいか。そんな僕には、到底理解できたとは言えない内容だ。それでも、面白かったと断言できる。 そもそも、これら3編の初出は、日本ワーグナー協会の研究誌であるから、対象読者は筋金入りのワグネリアンばかりなのだが、ワーグナーへの愛に溢れているのは、ただのミステリー読みにもわかるし、初心者を排除しようとはしていない。薀蓄が面白いかどうかは、その分野への愛があるかどうかに左右されるのだ。 ある意味、本作中最もすごい「レゾナンス」。一言で言えば、ヴァイオリンを習っている主人公の、高二の冬の体験談であるが、途中から結末は見え見え。おいおい、どうしてやめないんだぁぁぁ!…と、予想通りの事態に。しかしなぜだろう、これはこれで美しいような気がしてくる。彼はその後、どうなったのだろうか…。 深水ファンの多くは購入済とは思うが、普通のミステリファンにも手に取ってほしい。これぞ深水黎一郎という、大満足の作品集だ。
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