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恋人不死身説 歌集 の商品レビュー

4.5

7件のお客様レビュー

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2024/03/25
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目に見えないものの手触りまで感じるような、生々しい短歌がとても好きだった。 以下、お気に入りの短歌を引用します。 ろうそくの火にきみがふく息をつい吸いこんじゃった 暗くてもラブ 脱ぎたてのシャツのにおいをこんなにもだいじに嗅いでくれてありがとう 「さみしい」と書いてあるのを期待して毎日開くきみのウェブ日記 メールでは言えないことを電話でも言えずに会って忘れてしまう ため息を吐き出しそうな瞬間の口に急いで口をぶつける 足音でだれだかわかる 玄関にひかりがさして蘇生していく あいまいな表情ばかり見たせいで青空を見て泣きたくなった ドトールで女子高生が恋人にささやく「死ね」の甘い響きよ ほんとうに胸が痛くてこれはたぶん息にあなたが含まれている 「お客様おひとりですか?」「ひとりですこの先ずっとそうかもしれない」 恋人が(ああ「元」だった)使ってた香水の味を思い出せない 好きな手がわたし以外のためにある 空がきたない街がきたない

Posted byブクログ

2023/12/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

私は最近短歌を読み始めた者である。 流れてくる短歌のツイートをぼんやりと追っていた時に、 二種類の唾液が溶けたエビアンのペットボトルが朝日を通す が流れてきて、この歌が『恋人不死身説』に掲載されていることを知り、読むことにした。 この歌集は、1冊を通して読むのが重要だと思った。 時の流れがよりいっそう歌に深みを与えている(と感じた。) 1冊通して読んだ方がいい、と書きつつ、備忘録代わりにお気に入りの歌を幾つか引用させていただく。 ----------------------------- 「~~~~←四本のうち一本は陰毛。どれが陰毛でしょう?」 これはいい沈黙なのかどうなのか 猫の細目のような月だ(ね) くちびるを近づけようとしたときに鳴る股関節の音はせつない 干したての布団のにおいをかぎながらパチンコみたいに涙がでちゃう ああこれもぼくの抜け毛だ またきみの抜け毛が見たい もどっておいで 牛丼を昔あなたとキスをした口で食べてるそういうわけです レシートの金額にあと1足せばあなたの誕生日だなって捨てる なんというさみしさなんだ切り取ってデスクトップに貼り付けちゃうぞ ----------------------------- 純愛じゃなくて、ちょっとキモいぐらいの愛を上手く31音にまとめているのがかなり好き。 最初の、"「~~~~←四本のうち一本は」"のやつは、短めの毛を4本手に持ち、「どれが陰毛でしょうクイズ」をしているんだろうなあ、という情景が頭に浮かんだ。そのレベルのバカップルになりたいなあ。 "ああこれもぼくの抜け毛だ"~の歌の前に、 なんとなくきみの抜け毛を保存するなんとなくただなんとなくだけど 髪の毛が遺伝子情報載せたまま湯船の穴に吸われて消える という歌があるので、髪の毛に対する執着が強いのが一貫していて好きだったりする。 31音でひとつの歌だけど、同じ人がひとつの脳みそで詠んでいくから、そういう積み重ねがあっても面白いじゃん。 著者がもう1冊出版している『深呼吸広場』も読んでみたいな。

Posted byブクログ

2023/06/18
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ずっと気になっていた歌集!! 気持ち悪いくらい真剣な恋の歌がたくさんあってとても好きでした。 下は特に素敵だと思った十首です。 ・くれたのは風邪だったけどうれしくて体が宝箱の重さだ ・初恋を笑って話す輪の中で胸が痛くて飲むサングリア ・常識が憎くてたまらない夜に切手に塗ったオレンジジュース ・自動車できみがむかえにきてくれるこのまま轢いてほしいと思う ・ドトールで女子高生が恋人にささやく「死ね」の甘い響きよ ・ほんとうに胸が痛くてこれはたぶん息にあなたが含まれている ・眠るため召喚される羊たち、かぞえないからあそんでおいで ・平素よりお世話になりたい者ですが少し咀嚼を見せてください ・あの雲は観覧車へと近づいてキスをのぞき見するんでしょうか ・眼球に雨粒は散るかわいいと言ってもらえたこの眼球に こんな歌が詠めてしまうほどわたしを愛してくれる人に出会ってみたい!

Posted byブクログ

2023/06/09

表紙の、ちょいグロとポップな色味に惹かれて手に取ったら、帯は穂村弘さんだった。 幾つかの歌に解説もされていた。 で、最初の章「恋人不死身説」だけ立ち読みして、お持ち帰り決定となった。 恋人大好き!が溢れていて、何気ない日常が可愛らしく、ニッコリしてしまったからだ。 「にせもの...

表紙の、ちょいグロとポップな色味に惹かれて手に取ったら、帯は穂村弘さんだった。 幾つかの歌に解説もされていた。 で、最初の章「恋人不死身説」だけ立ち読みして、お持ち帰り決定となった。 恋人大好き!が溢れていて、何気ない日常が可愛らしく、ニッコリしてしまったからだ。 「にせもののまつげは波にさらわれて笑ってしまうアシンメトリー」 これ、面白いなーって思う。 片方のつけまつ毛の取れてしまった彼女の目もアシンメトリーだけど、 ちょっと最悪なんだけど~!等と嘆いているであろう彼女と、 そんな彼女が可愛らしく愉快でたまらない電話さんの状態もアシンメトリーとも言えるような気がして。 「ろうそくの火にきみがふく息をつい吸い込んじゃった 暗くてもラブ」 「湯船へときみのおしりが下りてきてあふれるお湯に感謝したい」 もう、ハイハイ勝手にやって頂戴と笑ってしまうくらいに楽しげで可愛らしい。 今は、胸が痛む歌は読みたくない気分だった。 深刻な歌も避けたかった。 似たような経験の引き出しが開いてしまって、自爆するのも嫌だった。 だから余計にこれらの歌に惹かれた。 が、私が浅はかだった! すっかり落ち着いてしまった私は、恋は度々終わるものだということを忘れていた!笑 腰を据えて読み始めると、 結局終わってゆく恋の歌にチクチクと胸が痛むこととなった。 「あいまいな表情ばかり見たせいで青空を見て泣きたくなった」 二人で過ごしてはいるけれど、次第に、瀬戸際に居るような揺れる二人の歌が増えてくる。 距離は近いけど、心が離れつつある期間を、 電話さんならではの素直さと目線で切り取ってゆく。 そして終わってしまう恋。 「コンビニに美顔ローラー捨てにいく これが最後のあなたのかけら」 不燃ゴミ回収って、月1回なんだよね。 それまで部屋に置いておくのが嫌だったのか、 単に不燃ゴミとして出すのが面倒だったのか、 順番に処分してたまたま最後になったのか、 そういう背景も読み手の想像をかきたてる。 それに、 捨てに行くのがコンビニであるのも、 それが美顔ローラーなことも、 最後のかけらなのも、 全てがリアル。 でも、どんな歌を読んでも、電話さんはひたすら可愛らしい。 素直だからなのかな。 その素直な心が、リアルで生々しい。 恋をしたら多くの方々が経験するであろう感覚なのに、それを絶妙な目線で詠われている。 これはあくまでも私の場合だけれど。 もっと若い頃、自分も恋人が大好きで大好きで、電話さんのそれと似たような思いが過っても、そう思った自分を一瞬で「キモッ」と思って言葉になる前に打ち消した事がある。(あるような気がするだけか?) その「キモッ」とさえ思える「恋人への大好き感情」を、そのまま言葉にして詠える電話さん。 だからこそのリアルと生々しさなんだろうなぁ。 ろうそくを吹き消す息を吸い込んじゃったとか、 においをだいじに嗅いでくれてありがとうとか、 髪の毛の遺伝子情報とか、 二種類の唾液が溶けたエビアンとか。 「泣きはじめたら泣きはじめるし」って、先に電話さんが泣いちゃってるじゃん。 「カビがきれいだひとりだだめだ」って、畳み掛けるように自分を追い詰めたり。 カーテンの無い窓を四角だと再認識して、なんでこんなに四角いんだよ!とか。 恋が終わっても、彼女を想う短歌がひたすら続く。 目に留まる文字も悲しく、街も縮こまったように感じ、地球のばかとさえ思えてくる。 「冗談は冗談でした さようならワリカンで観覧車を買う日」 「眠るため召還される羊たち、かぞえないからあそんでおいで」 あぁ、そうか。 私が既に経験値として処理済みにしてしまって、 もうそんなことでは傷付かないように鎧を纏ってしまった青い心を、 電話さんは「素直に青いまま剥き出しで詠んでいる」のが「可愛らしい」に繋がっているのかな。 この歌集は電話さんが30代に成り立ての頃に発売されたものだった。 歳や経験を重ねないと詠えない歌もあるけれど、 その年代じゃなければ捕らえられない感覚って綺麗だなぁ。 怖いなぁ。 痛いなぁ。 勿論、電話さんの素晴らしい感性と無二の表現力ありき。 「ゴキブリがきみへと走るぼくからのラブを具現化させた感じに」 恋人不死身説ってタイトルも抜群にいい。 ご本人のあとがきも最高だ。 私なんてもう、自分不死身説を打ち出せるくらい、良くも悪くも自分という太い柱が立ってしまったよ。 今現在の電話さんの短歌も読みたくなった。 要チェックだ。

Posted byブクログ

2021/07/28

普段は簡単に置き去りにしてしまうような視点とたまにくる嫌悪感、それでいて可愛いところすきです。またよむ

Posted byブクログ

2020/08/27

歌集の作者のあとがきはどれも素晴らしい。「ーーだるいと、世界はスムージーみたいにどろどろで均一に感じられる。ぼくはスムージー世界がこわい。スムージー世界に恋人はいない。」解説の穂村弘さんも素晴らしい解説だった、短歌の不可視や可視化について勉強になる。谷川電話さんの短歌じたいもどれ...

歌集の作者のあとがきはどれも素晴らしい。「ーーだるいと、世界はスムージーみたいにどろどろで均一に感じられる。ぼくはスムージー世界がこわい。スムージー世界に恋人はいない。」解説の穂村弘さんも素晴らしい解説だった、短歌の不可視や可視化について勉強になる。谷川電話さんの短歌じたいもどれも素敵だった。奥底にある感情、感覚というものを研ぎ澄ませたうえでの短歌というものを自分も詠んでみたい。

Posted byブクログ

2019/02/14

脱ぎたてのシャツのにおいをこんなにもだいじに嗅いでくれてありがとう あいまいな表情ばかり見たせいで青空を見て泣きたくなった

Posted byブクログ