午前三時のサヨナラゲーム の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
一言で言えば、野球ファンの人間模様を描いた作品集である。ミステリ性は皆無。一深水ファンとしては、戸惑ったけれど楽しめた、とでも言うべきか。 日本のスポーツ報道は、プロ野球を中心に回っている。一面の多くをプロ野球が占める。毎日一喜一憂しているファンは多いだろう。自分はサッカーファンであり、野球については特定球団のファンではないが、プロ野球を生観戦したことはあるので、サッカーと違う野球の楽しみ方や、ファン心理は、一応わかっているつもりである。 「午前三時のサヨナラ・ゲーム」。別れた男女が再会し、雨の中、未明の球場で何をやっとんねん。今季のマリーンズは、貧打に喘いでいるが…。「野球嫌い」。これはサッカーファンでもよくわかる。夫婦のどちらかはまったく興味がなく、夢中になっている相方を冷ややかに見ているのは、よく聞く話だよね。 「ゆく河の流れは絶えずして、しかも」。大洋ホエールズ時代のファンとは筋金入りだが、その設定は必要なのだろうか。愛しい人の影を追い続けた結末とは。……。「もうひとつの10・8」。この試合は自分も覚えている。そのもう一つの結末とは? 負け試合ほどいつまでも語り継がれるのは、サッカーも同じかな。 「もうひとつの10・19」。これまた有名試合だが、何だこのオチは…。「生涯徒爾一野球観戦居士」。サッカーも何試合も観るファンは多いが、毎日のように試合があるプロ野球で、ここまでの環境を整えるのはすごいな…で、何だこのオチは…。彼の人生が本望だったのか、知る由もない。 「ジェイムス・ジョイスを読んだ元中継ぎエース」。分業化が進み、中継ぎという役割も重要になった現代野球。どこか拾ってくれるといいね…。「9回裏 地球連邦大学紀要 No.一二八三八」。これもサッカーにも当てはまる。勝てないからって簡単に応援をやめられたら、どんなに楽だろう。 薀蓄シリーズのファンは、どう感じるか。茶化している面もあるが、根底には野球への、野球ファンへの愛がある。本作を刊行したポプラ社の、心意気に拍手。
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