企業買収の実務プロセス 第2版 の商品レビュー
全体を通してわりと平易に、初学者でもついてこれるように書かれた感じ。ディール経験が豊富な筆者だけに、交渉時の肌感覚とか、PMI初期の課題抽出メソッドの話とか、ソフトで実践的な情報が含まれていたのは良かった。 反面、バリュエーションの解説は不可解。コントロールプレミアムの説明や各バ...
全体を通してわりと平易に、初学者でもついてこれるように書かれた感じ。ディール経験が豊富な筆者だけに、交渉時の肌感覚とか、PMI初期の課題抽出メソッドの話とか、ソフトで実践的な情報が含まれていたのは良かった。 反面、バリュエーションの解説は不可解。コントロールプレミアムの説明や各バリュエーション手法の比較等、よくわからん。全体プロセスの本やし別にええけど。筆者はコンサルの人やしPMIとかそっちの方の経験が深くてファイナンスの造詣は深くないのかという印象。知らんけど。
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前々から気になっていた書籍を今更ながら通読。企業買収(M &A)の実務の進め方が詳細に解説されていて、知りたいと思っていたところが解説されており、痒い所に手が届くような内容。企業価値算定、買収スキームの検討、買収交渉の件は必読。 P228 ■アンカリング アンカリングとは...
前々から気になっていた書籍を今更ながら通読。企業買収(M &A)の実務の進め方が詳細に解説されていて、知りたいと思っていたところが解説されており、痒い所に手が届くような内容。企業価値算定、買収スキームの検討、買収交渉の件は必読。 P228 ■アンカリング アンカリングとは、本来、船が海にイカリ (anchor:アンカー) を降ろすことを指すが、交渉理論では、情報が不十分な状況で提供された情報、あるいは自分で持っている情報を基準に判断を下すことを意味する。価格交渉においては、最初に相手に対して提示する価格がアンカリング効果を発揮する。アンカリングは情報操作の強力な手段であり、多くの実証研究によれば、最終的な交渉結果は最初の提示価格に最も影響を受けるとされている。例えば、最新の家電製品を量販店で購入することをイメージしてみよう。店頭価格から値切る場合、せいぜい1〜2割程度の値引きが限度だと自ら制約を設けてはいないだろうか。このように価格調整の範囲を自ら限定してしまうことがアンカリングの典型例である。 価格交渉において相手に対して有効にアンカリング効果を活用するコツは、実現可能性があり、かつ自分たちにとって理想の価格を最初に提示することである。売り手であれば上限価格、買い手であれば下限価格からアンカリングすることになる。ここでは実現可能性のある価格であることを意識しなければならない。買い手がブラフ(はったり)であまりに低い買収価格を最初に提示すると、売り手に本気で買収するつもりがあるのか疑われて交渉が決裂する可能性が高まることに注意しなければならない。そこで、買い手であれば、前述のように売り手の下限価格を予測した上で、そこから極端に離れすぎない地点にアンカー(イカリ)を降ろすことがポイントである。 基本的に、アンカリングは先手必勝である。先に価格を提示することで、相手に心理的なプレッシャーをかけることができ、交渉を有利に進めやすくなる。また、最初に価格を提示しておくと最後に相手の希望価格を聞き入れて合意に至る場合、自分たちが1回多く譲歩した形となることも重要である。譲歩した回数が相手よりも多くなることで、相手は交渉において僅かでも勝った気になるものである。相手を気分よくさせながら自分たちの利益を実現することこそが、理想の交渉結果といえる。契約締結後に、さまざまな問題が発覚することの多いM&Aにおいて、交渉上の悪感情を残さないことは、後々のトラブルを回避·軽減させる上で重要である。 P234 なお、最初の価格提示にあたっては、価値算定の前提を明らかにして価格の根拠を相手に明示したほうが建設的な交渉が可能となる。ただし、DCF法による評価については、根拠となる割引率の明細など詳細までは提示しないほうが望ましい。DCF法の詳細を提示してしまうと、交渉での議論が割引率の妥当性などテクニカルな方向に行きやすく、本質的なビジネス交渉ができなくなるおそれがあるためである。
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