日本宝島 の商品レビュー
やっぱり上野瞭ってすごい作家だったと、あらためて思う。 少年が、会ったことのない父親を捜しに、宝が眠っている謎の島に向かう。いかにも「子ども向け」の冒険活劇小説の体裁をとりながら、肝心の「宝島」には、お宝との対面や感動の父との再会、「悪」との対決といった、カタルシスをもたらす要素...
やっぱり上野瞭ってすごい作家だったと、あらためて思う。 少年が、会ったことのない父親を捜しに、宝が眠っている謎の島に向かう。いかにも「子ども向け」の冒険活劇小説の体裁をとりながら、肝心の「宝島」には、お宝との対面や感動の父との再会、「悪」との対決といった、カタルシスをもたらす要素は何にもない。だいいち冒険が終わってみても、鉛中毒をもたらし続けている「都わすれ」の問題は、いっこうに解決はしておらず、主人公たちが巨大な権力に徒手空拳で立ち向かわなければならない事態にはなんの変わりもないのだ。 それでも、主人公たちが何かの手ごたえを得た実感とともに、闘いの待ちうける故郷に向かうのは、自分の力で立ち向かっていけるという自信を得たからだろう。「宝」の背後にも、「悪」の背後にも、あるのは人の弱さ、真実を見るより、美しい夢を見たり、誰かに責任をおしつけたりしたいという臆病さだからだ。それと立ち向かうのは難しいし、答えは見えない。でも立ち向かっていけるという自信さえあれば生きていける。物語の完成度としてはやや低いかもしれないが、こんなメッセージをつたえてくれる本に出会えるのは、やはり稀有なことなのだ。
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-内容- 平助はなぞの老人から死んだとされていた父親の覚書を渡される。それは宝島の地図だった。そこでおときと2人で地図をたよりに出航するが、様々な困難が待ち受けていた。
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