モラルの起源 の商品レビュー
ヒトが人として存在しているというのは,どういうことなのか? 社会的な存在としての人は,ヒトが生き残っていくために,どんなはたらきをしてきたのか。 「実験社会科学からの問い」という副題のある本書は,進化の過程を経て現在の社会を作っている動物の姿を通して,ヒトの進化という視点で人...
ヒトが人として存在しているというのは,どういうことなのか? 社会的な存在としての人は,ヒトが生き残っていくために,どんなはたらきをしてきたのか。 「実験社会科学からの問い」という副題のある本書は,進化の過程を経て現在の社会を作っている動物の姿を通して,ヒトの進化という視点で人の社会を見直すと何が見えてくるのかを明らかにしてくれます。 人の道徳や倫理といったことを進化の視点で見たことはなかったので,私にとっては新しい発見のある本でした。 同類の本も出ているようです。 「進化ゲーム」の話を読んでいると,国によって支配する道徳が違っていることも,うなづけます。 今,民族間・宗教間の対立があらわになってきて,混沌とした地球の中にいるのですが,〈われわれ〉と違った道徳や倫理観を持っている社会との上手なつきあい方は,このような研究からも生まれてくるのかも知れないなと思いました。
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進化生物学、行動科学、心理学、脳科学、経済学といった研究から実験社会科学という手法用いて、モラルに関する問題を論じている。 文系、理系の学問領域を横断的に研究した結果を提示しながら、最終的に、帯に書かれている【私たちの脳は、「仲間うち」超えて、平和な社会を築けるのか】という問い...
進化生物学、行動科学、心理学、脳科学、経済学といった研究から実験社会科学という手法用いて、モラルに関する問題を論じている。 文系、理系の学問領域を横断的に研究した結果を提示しながら、最終的に、帯に書かれている【私たちの脳は、「仲間うち」超えて、平和な社会を築けるのか】という問いに対する解決策へと導いていく。とても面白く読み進めることができた。 第5章の最後の方で述べられている“「正義」は「国境」を超えるか?”という問いは、今後の世界平和のため重要な鍵になると思う。
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「生物学では、生き物を「適応」のシステムと捉える立場が主流です。」 他者と「社会」を構成することで、生き残ってきたヒトが、「社会」に適応した個体を結果して選択して残してきた、遺伝的な形質とは何か。 自動的に動き出す遺伝的形質が最適に働く社会のサイズと、現代の社会のサイズの違い...
「生物学では、生き物を「適応」のシステムと捉える立場が主流です。」 他者と「社会」を構成することで、生き残ってきたヒトが、「社会」に適応した個体を結果して選択して残してきた、遺伝的な形質とは何か。 自動的に動き出す遺伝的形質が最適に働く社会のサイズと、現代の社会のサイズの違い。 幾世代を経ないと、遺伝的形質の変化は期待できない。 しかし、手動モードである功利主義的考え方を、意識的に取り入れることで、急激に距離が近くなってしまった社会と社会の摩擦を少なくすることができるのではないか、というのがこの本の要旨かと思う。 年をとると、これまでの経験などからか、他者との関係性にある程度、規範意識が強くなると思う。 しかし、同じ経験を重ねてきていない以上、それは一人ひとり違った規範になってきているのではないか。 だとすれば、新たな関係を結ぶことは、より困難になっていくのかもしれない。 柔軟性を持つべきとの考え方もあるであろうし、価値観の異なる他者とは、ある一定の段階からは、距離を置いてできる限り関わらない、というのもひとつの考え方かもしれない。
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正義や規範をどのように他者と共有していくか、様々な分野の実験を基に検証していく。 毎日新聞今週の本棚掲載2017423 noteまとめあり。
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- ネタバレ
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進化心理の見方を基本とした,利他性,共感,社会的ジレンマなどの理論と研究がコンパクトに紹介されている。学部1年生の(専門に分かれる前の)ゼミテキストによさそう。
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これたしかにコンパクトで見通しが良くかつ新書として過不足なく書かれていて、これからしばらくスタンダードになるわね。道徳心理学とか、平等とか正義とかをめぐってのネットのあれやこれやとか考えたい人は必読ってことになると思う。
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