旅人よ どの街で死ぬか。 の商品レビュー
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依るべき対象を人はまず人に求める。家族であり、友人であり、同僚である。恋人の場合もあるだろう。他人は己を映す鏡と言うように、慈しみを持って相手に接すれば、大概の場合、慈悲深い態度で迎えてくれる。 ゴッホの生涯で、私が最も興味があるのは、1876年から1879年の4年間の彼の行動である。それ以前、彼はロンドンで大失恋をし、パリに移ってからは、画廊に勤めている。ここでゴッホは、美術品や絵画を売買するのは巧妙な窃盗と同じ行為だ、と主張し、店のものを激怒させる。 今はもう酒に溺れる事は無い。なぜなら、散々溺れてきたからだ。酔いどれの海に落ちて溺死そうになったものは、酒の海を巧みにぎ切る術を体得するものだ 過ちを繰り返すのが人間だとしたら、人間はどうしようもない生き物である
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旅をしていて何処に行くかより行った先で何を感じたかが大事であるという言葉は響きました。 何かを感じた旅のほうが、その場所や出来事を覚えているし、 のちのちの自分の基になるなという実感があります。 多少冗長な内容もあるかなと感じましたが、それが作者にとっての思い入れの深さなのかもしれませんね。 今後自分が旅行するにあたり、芯になるコンセプトは持ちつつも 行った先で融通の利く自由度が高めの旅行を心掛けようと思いました。
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”踏ん張りなさい。粘りなさい。めそめそしても怯えても、ともかくあがき続けるべきだ。闇にむかって手を差しのべ、手探り続ける方がいい。求め続けるのがいい” この言葉に励まされた。倒れるまで仕事しようと思う。いや働きたい、周りには迷惑をかけるかもしれないけど。働かなければ生活できないか...
”踏ん張りなさい。粘りなさい。めそめそしても怯えても、ともかくあがき続けるべきだ。闇にむかって手を差しのべ、手探り続ける方がいい。求め続けるのがいい” この言葉に励まされた。倒れるまで仕事しようと思う。いや働きたい、周りには迷惑をかけるかもしれないけど。働かなければ生活できないからだけど、オイラは仕事を通して社会に役立てることをしなかったら存在価値がかなり低いしな。年金に期待できないし、オイラの酒の量は年金じゃ足りないだろうし、労働して酒飲んだ方がうまいし。やせ我慢してやるぜ!酒に癒されながら。 『ダブリンの市民』は今度、ぜひ読もうと思う、
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伊集院さんの語りかけるような風のような文体が印象的な旅のエッセイ。 人の厚みや孤独を愛する欠片が感じられました。
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この本を読み終わった君は世界一周を成し遂げ、二周目の旅を始めているかもしれない。 文章が素敵。 旅日記にしては臨場感がありすぎて、本当に旅行している気分になりました。
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旅に出ると孤独になれる。 少なくとも自分がマイノリティになる機会が増える。 人は1人では生きていけないが、1人でも生きていける自信をつけなければならない。 「国内旅行で充分。海外には行かなくてもいい。」という人がいるのと同じように、旅に出ずにはいられない人もいる。 自分の生まれた...
旅に出ると孤独になれる。 少なくとも自分がマイノリティになる機会が増える。 人は1人では生きていけないが、1人でも生きていける自信をつけなければならない。 「国内旅行で充分。海外には行かなくてもいい。」という人がいるのと同じように、旅に出ずにはいられない人もいる。 自分の生まれた国で死ぬとは限らない。
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伊集院静(1950年~)氏は、在日韓国人2世として山口県に生まれ(その後帰化)、立大文学部卒、電通勤務後、作家・作詞家に転身し、1992年に『受け月』で直木賞を受賞、その後も多数の作品を執筆している。2011年に出版した『大人の流儀』は、その後シリーズ化し、ベストセラーとなってい...
伊集院静(1950年~)氏は、在日韓国人2世として山口県に生まれ(その後帰化)、立大文学部卒、電通勤務後、作家・作詞家に転身し、1992年に『受け月』で直木賞を受賞、その後も多数の作品を執筆している。2011年に出版した『大人の流儀』は、その後シリーズ化し、ベストセラーとなっている。元妻は夏目雅子、現妻は篠ひろ子である。 本書は、月刊「UOMO」に2006年4月~2008年3月に連載した「どの街で死ぬか。男の美眺」をまとめ、書籍化したもの。 著者は冒頭で、旅とは次のようなものと語る。●この世に生まれてきて、しなくてはならないもの。それをせずに死ぬということは、生きることへの冒瀆ではないかとさえ思うもの。●その体験が、身体・記憶にきちんと埋めこまれ、他の行動では決して得ることのできないもの。●日常からの別離。非日常の時間。●目で見たもの、見えたもの、歩きながら身体に伝わってきたもの、酒でも食事でも口に流しこんだもの、耳から入ってきた音色、嗅いだ匂い、肌で感じたもの、それらすべてを実感だけで捉えるべきもの。 そして、本書で旅した場所は「五十歳代のとき、身体が自由に動く間に、ここだけは訪ねてみたかったという場所」、具体的には、ヘミングウェイがうろついたパリ、ルソーが世界の理想と言い、ピカソが描いたゲルニカ、印象派の画家たちが描いたオーヴェル・シュル・オワーズ、建築家マッキントッシュの軌跡の残るグラスゴー、ジェームズ・ジョイスの名作の舞台ダブリン等である。 パリにて~「今、日本の男はあまりに軟弱である。・・・なぜ軟弱なのか?それは連るむからである。一人で歩かないからである。“孤”となりえないからである。・・・孤を知るにはどうすればいいか。さまようことである。旅をすることである」 パリにて~「なぜ人は旅に出るのか。その理由を旅人に問えば、十人の旅人から十の異なる理由が返ってこよう。さほど旅とは個人的なものだ。旅で出逢い、旅で感じたことを誰かに語ろうとしても、そのときの情緒、感情は真には伝わりにくいものだ。旅はあなたの生の根底に潜んでいたものを引きだし、そこに立たせるからだ」 パリにて~「想定する生には限界がある。所詮、人が頭で考えるものには限界がある。想定を超えるものは、予期せぬことに出逢うことからしか生まれない。・・・予期せぬものには期待と同様に、当然、不安とおそれもある。ただ不安とおそれをともなわない生などこの世に存在はしない」 オーヴェル・シュル・オワーズにて~「“孤”であることは大人の男にとって大切なものである。他人と連るむより、孤である時間のなかに潜むもののほうが価値がある。孤は人に強靭な精神を求める。精神のバランスが崩れたとき、孤は人そのものを崩すことがある。だがほとんどの人は崩れる前に孤を放りだす。孤のなかでしか見えない真実がある」 ダブリンにて~「酔うために酒はある。語るためにある。悦ぶために、歌うために、踊るために、怒るために、嘆くために、抑するために、淫するために・・・。すべての感情は愉楽につながる」等々 私は、『大人の流儀』シリーズは手に取っていないのだが、世界の様々な街を歩きながら、人生について徒然に綴った本書は、なかなか味わいのある一冊である。 (2017年3月了)
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