娘に語る人種差別 の商品レビュー
この本が書かれたのは20世紀末だけれど、2024年の現在の私たちにもまだ必要な本だ。実際、人類が差別を克服して、この本が過去のものになる日は来るんだろうか? 「まず、尊重することを学ぶことだ。尊重することがいちばん重要なんだ。それに、人々は愛されることを求めているのではなく、人...
この本が書かれたのは20世紀末だけれど、2024年の現在の私たちにもまだ必要な本だ。実際、人類が差別を克服して、この本が過去のものになる日は来るんだろうか? 「まず、尊重することを学ぶことだ。尊重することがいちばん重要なんだ。それに、人々は愛されることを求めているのではなく、人間の尊厳という点で、尊重されることを求めている。尊重というのは、気をつかうことであり、敬意をはらうことだ。それは、相手の言うことに耳を傾けることができるということだ。外国人は、愛情や友情じゃなく、尊重を望んでいるんだ。愛情や友情は、後で、お互いによく知り合って好意を持った時に生まれるかもしれない。しかし最初は、どのようなできあいの判断ももつべきじゃない。言い換えれば、偏見は持つべきじゃない。」p.60 「他人を尊重することというのは、正義に気遣うことだ。」p.61 「人種差別は、人間が住んでいるところならどこにでもある。わが国に人種差別は無いと主張できる国は一つもない。人種差別は、人間の歴史の一部分を為している。それは病気のようなものだ。このことは知っておいた方がいいし、人種差別をはねつけたり、拒否したりすることを学んでおいた方がいい。自制して、「私が外国人を怖がったら、外国人の方も私を怖がるだろう」と自分に言い聞かせないといけない。私たちは、つねに誰かにとって外国人だ。一緒に生きることを学ぶこと、それこそが人種差別と闘うことなんだ。」p.93 「人種差別と闘わなければならない。人種差別主義者は、危険であると同時に犠牲者なんだから。」p.100 「人種差別主義者は自由が嫌いなんだ。自由が怖いんだ。違いが怖いように。人種差別主義者が好きな唯一の自由は、自分の自由であり、何でも好きなことをさせてくれる自由なんだ。他人をさばいたり、自分と違うというだけで厚かましくも他人を軽蔑したりする自由だ。」p.103 「人種差別との戦いは、日々の素早い反射行動でないといけない。決して用心を怠ってはいけない。例をあげることや、使われている言葉に注意することから始めないといけない。言葉は危険だ。人を傷つけたり侮辱したりするために使われる言葉がある。また、本来の意味からそれて、上下関係を作ったり差別をしたりしようとする人たちの下心に火を注ぐ言葉もある。美しく幸福な言葉もある。一般化することによって結果として人種差別へと向かうことになるできあいの考えや、ある種の格言やことわざを捨てないといけない。」p.105 「不公正、侮辱、殺意のある憎しみに対して寛容であることはできないのです。寛容が美徳でありうるのは、耐えがたいことに対して受け身にならない限りのことです。寛容でなければなりません。言い換えればあらゆることを考慮に入れつつ異なるものを尊重しなければなりません。寛容でありつつ用心深くあることです。しかし、攻撃的な、仕返しの、凶暴な人種差別に直面すると、寛容では全くお手上げです。その際は、反応し、行動し、抵抗しなければなりません。」p.122 「人種差別が始まるところで知性は止まる」p.128
Posted by
移民をめぐる文学で紹介されていた本 https://note.com/michitani/n/nfd0960c15f46 「砂の子ども」「聖なる夜」(https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4314007303#comment)...
移民をめぐる文学で紹介されていた本 https://note.com/michitani/n/nfd0960c15f46 「砂の子ども」「聖なる夜」(https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4314007303#comment)の作者のタハール・ベン・ジェルーンが、娘のメリエムに人種差別について語る。 タハール・ベン・ジェルーンはモロッコに生まれて、アラビア語・フランス語の教育を受ける。学生の時にストライキ首謀者とみなされて逮捕されている。釈放後は教員になっていたが、その後フランスに移住した。 本書でジェルーンが語る娘のメリエムはフランスで生まれたってことですよね。ジェルーンはフランスの移民締め出し法案反対デモにメリエムも連れてゆくなど、まだ幼い頃から社会のことをしっかり教えていますね。 メリエムはフランスに住むアラブ系移民として、学校や地域での人種差別を感じることがあるのでしょう、パパ(ジェルーン)に「ねえ、人種差別(ラシズム)って何?」と聞く。 そこでジェルーンはメリエムとの対話からメリエム以外の子供たちにも語っていく。 そういえば私テレビで「アラブ系の男性が、娘の学校の子供たちに人種差別についての会談を行う取り組みをしている」という放送をみた記憶があるのですが、ジェルーンだったのだろうか。(違うものかもしれません) 人種差別とはなにか、なぜ人間は人種差別をするのか、人種差別をする人間はどんな人なのか。 大人は考えが固まってしまうので考えを変えることは難しい。だが子供たちは柔軟に考えることができる。 人間は自分と違うものを警戒する。だが他人との差異、人種や身体特徴によって「こちらのグループのほうが優れている」と考える理由にはならない。 差別は人間の普遍的なものではあるが、できることをしていかなければいけない。他の人を知ろうとすること、子どもに間違った考えを吹き込まないこと。人種差別(他の差別もだけど)にはに他人に敬意を払うことは、自分に敬意を払うことだ。 終盤には、ジェルーンが子供たちから聞かれた質問などが書かれている。 移民が多く(旧植民地からの移民も増えている)、いろいろな移民対策が行われているフランスだからこその質疑応答は、民族や人種が混じって暮らすことの複雑さと、差別撲滅の難しさも感じた。 アラブ系両親が自分の子供はアラブ系と関わらせたくないと子どもを転校させるなど、うーん、人種差別の当事者が、人種差別的な考えにならないと生きづらいのか…。 さらに訳者あとがきでは、訳者と息子さんとの会話が載せられる。 まさにこの本で語られていることを実践しているわけで、大事なのは対話、知ることだよなあ。
Posted by
感想 日本国内に差別はない。それはあまりにも理解がない。自分の中に外国人を避けている気持ちはある。移民政策が始まる前に。教育が求められる。
Posted by
モロッコ人の作家が娘に語る人種差別の話。 フランスの状況にもとづく記述が多いので、その辺の知識を補わないと、そのまま日本で娘に読ませても伝わりにくいかもしれない。 主張は明快で普遍的だ。人種差別は恐怖と無知と愚かさから起こる。それを克服するには教育が大切だ。 付録に、著者がフラン...
モロッコ人の作家が娘に語る人種差別の話。 フランスの状況にもとづく記述が多いので、その辺の知識を補わないと、そのまま日本で娘に読ませても伝わりにくいかもしれない。 主張は明快で普遍的だ。人種差別は恐怖と無知と愚かさから起こる。それを克服するには教育が大切だ。 付録に、著者がフランス各地で行った子供たちとの対話があるが、どの問いも鋭く、その背景は複雑だ。日本では、このようには人種差別が露出していない地域も多いかもしれないので、やはり補足しながら読まなくてはならないかも。
Posted by
人種差別について、作者と娘との対話形式でなぜ人種差別は起こるのか、どうしてそれがいけないことなのかを説いている。 本書はフランスの文化的・歴史的背景を前提にして書かれているため、対象の10〜14歳だと、日本に住む子どもたちにはまだ少し難解な部分があるように感じる。 ただ、本質的な...
人種差別について、作者と娘との対話形式でなぜ人種差別は起こるのか、どうしてそれがいけないことなのかを説いている。 本書はフランスの文化的・歴史的背景を前提にして書かれているため、対象の10〜14歳だと、日本に住む子どもたちにはまだ少し難解な部分があるように感じる。 ただ、本質的な部分についてはフランスも日本も関係なく通じるものがあると思うので、将来自分の子どもにも読んでもらいたい。 「人種」というものはなく、みな一つの「人類」であるという考え方は、とても納得できた。 日本もグローバル化が今後進んでいくにつれて、今まで身近でなかった人種差別について、きちんと学ぶことは重要だと感じる。 日本は差別問題に対してタブー視したり、閉鎖的な部分があるため、オープンに議論を交わすよう学校でも教育に取り入れていくことを望む。
Posted by
フランスでくらすモロッコ人の親子の会話で、人種差別について考える、という流れです。 筆者の主張する、「人種差別は恐怖、無知、愚かさから起こる」という点については、納得できる部分もある反面、筆者の”攻撃的”ともとれる論調に少し引いてしまった、というのが正直な感想です。 主張は正しい...
フランスでくらすモロッコ人の親子の会話で、人種差別について考える、という流れです。 筆者の主張する、「人種差別は恐怖、無知、愚かさから起こる」という点については、納得できる部分もある反面、筆者の”攻撃的”ともとれる論調に少し引いてしまった、というのが正直な感想です。 主張は正しいと思いますし、大人の考え方を変えることは難しいが、子どもに対して学校現場や親からの教育により、他者を理解する(「人種」ではなく、同じ「人類」として)思考を養うという考え方についても共感する部分は多々あったのですが、いまいち内容全体として腑に落ちない読後感でした。…その原因がどこにあるのかはわからないのですが。 とはいえ、私自身が生徒や、息子に接するうえで、他者と比較して優劣を競ったり、自分とは異なる他者を蔑視したりするような発言をしないよう気をつけなければならないと改めて感じました。 他者を尊重する態度や、知りもせずに恐怖するのではなく相手の背景にある文化や思想を理解しようとすること、自分と同じような生活が隣人にもあるのだと想像することなど、これから少しでも身につけていきたいと思いましたし、そのように考えるきっかけになる1冊として、紹介したいと思います。
Posted by
非常にわかりやすく「人種差別とは何か」が書いてあるので、ネット中心に蔓延る(何かにつけ朝鮮と中国が悪いと決めつける)レイシストの皆様におかれましては、こういう本を読んでみたらいいのに、と思わずにはいられません。 百田尚樹の本もわかりやすいでしょうが、こちらも十分わかりやすいですよ...
非常にわかりやすく「人種差別とは何か」が書いてあるので、ネット中心に蔓延る(何かにつけ朝鮮と中国が悪いと決めつける)レイシストの皆様におかれましては、こういう本を読んでみたらいいのに、と思わずにはいられません。 百田尚樹の本もわかりやすいでしょうが、こちらも十分わかりやすいですよ。10歳向けに書かれていますから、十分読解可能だと思います。 「(猫は)別の猫や動物がエサを盗ったり子猫を攻撃しようとしたとき、(中略)全身で抵抗し、身内を守る。人間も同じだ。人間は、自分の家や土地、財産をもつことを好み、それを守るために戦う。これは正常なことだ。人種主義者の場合は、どんな人であれ外国人なら、自分の財産を奪いに来ると考えるんだ。その際、よく考えもせずに、ほとんど本能的に外国人を疑うんだ。動物は攻撃されたときにしか戦わない。でも人間は、ときとして自分から何一つ奪おうとしていないのに外国人を攻撃する。」(P23-24) 「人種差別主義者は、一人のアラブ人に泥棒に入られると、すべてのアラブ人が泥棒だと結論づける。」(P61) 「人種差別主義者はユーモアのセンスをもっていない。彼らの機嫌について言えば、たいていの場合不機嫌だ。彼らが笑うことができるのは、自分自身には欠点がないかのように他人の欠点を指摘して、意地悪く笑うことだけだ。」(P62-63) 「じゃあ、まとめていうと、人種差別は、第一に恐怖、第二に無知、第三に愚かさから生まれるのね。」「その通りだ。でも、知識を持っていて、人種差別を正当化するためにそれを使う人がいることも知っておかないといけない。知性は、誤った主張のために使われることもある。」(P64) 「政府が、自国に属していない土地に行って住み着き、それを力で維持しようと勝手に決めるんだけど、それはこの土地の住民を軽視しているからだし、彼らの文化には何の価値もないと考えているからだ。」「その国は少し開発される。何本かの道路、何軒かの病院と学校が建設される。利益のためだけに来たのではないことを示すためのこともあるが、つねにそれを利用してもっと儲けるためだ。」(P86-87) 「子どもは、まったく自然にほかの子どもたちと遊ぶ。この肌の色の違う子が、自分より優れているか劣っているかなんてことは問題にしない。(中略)逆に、両親が肌の色の違う子どもに気をつけるように言えば、違った行動をとるだろう。」(P95) 「弱い人たちや病人、老人、子どもたち、身障者、こうした人たちはみな劣っているの?」「臆病な人の目には、そう映る。」「人種差別主義者たちは、自分たちが臆病だということを知っているの?」「いや、臆病さを認めるのにも勇気がいるからね…。」(P102)
Posted by
- 1