あの頃 の商品レビュー
武田百合子ファンの方は必読。玉石混交ではあるが、武田百合子理解には不可欠のエッセイ集です。武田百合子未読の方には、断片的に好きなところから読んでいただければ良い、そしてこんな文章を書く人がいたことを知ってほしい。
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いーん 「に」と鳴いた もっくらもっくらした野良着姿の女 自分にはまだこんなに知らない表現があったか、と思ってわくわくする。
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武田百合子氏の、単行本未収録のエッセイ集。 娘である武田花氏の編集による。 ただし、収録は、本格的に文筆活動を始めた1977年以降のものに限っている。 生前、百合子氏が、単行本として発行する前には必ず、作品に細かな手を入れており、また、そうしなければ出版したがらなかったという。 ...
武田百合子氏の、単行本未収録のエッセイ集。 娘である武田花氏の編集による。 ただし、収録は、本格的に文筆活動を始めた1977年以降のものに限っている。 生前、百合子氏が、単行本として発行する前には必ず、作品に細かな手を入れており、また、そうしなければ出版したがらなかったという。 その心を汲んで、作品として世に出す覚悟のあったものだけに絞ったのかもしれない。 出版されていたことを知らず、図書館で偶然見かけて手に取りました。 百合子氏の文章を愛する人は、ぜひ読んでみてください。 ただ、1976年に夫の武田泰淳氏が死去しており、その後に書かれた作品ばかりなので、全編の底にさびしい思いが流れているような気がしてならない。 とくに、泰淳氏が亡くなる年の事を綴った『櫻の記』 満開の桜の下で、凶事の待ち伏せを予感したり、やせて儚くなっていく泰淳氏の姿に心を痛めたりと、せつない。 最初に、“自分に似合わない言葉、分らない言葉は使わない” “「美しい」という言葉を簡単に使わない。どういう風かくわしく書く” など、百合子さんの、言葉に対する姿勢が書かれている。 そのせいか、映画の始まりを待つロビーでの、隣に座った男女の食事の観察が面白い。 二人は、「横に切れ目が入って、そこに揚げたパン状のものがはさまっている、平たい丸パン」を食べているそうだ。 マヨネーズが…と感想が聞こえる。 女性はさらに「封筒ぐらいの大きさの赤い箱」から、「パイのような春巻きのようなもの」を出してかじる。 なんでしょう、私たちがよく知っているもののような気がしますね。 映画は非常にたくさん観ていて、感想も独特。 映画のタイトルや俳優の名前に、昭和を色濃く感じるのでした。
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何年か振りに武田百合子さんのエッセイを読むことができた。うれしい。やっぱり好きだ。いつまでも読んでいたかった。 全部よかったが、特に「映画館」が昔を思い出して面白かった。 今は全席指定入れ替え制で、もちろんその方がいい。必死になって席取りしたり、立ち見したり、出入りが多く、ザワ...
何年か振りに武田百合子さんのエッセイを読むことができた。うれしい。やっぱり好きだ。いつまでも読んでいたかった。 全部よかったが、特に「映画館」が昔を思い出して面白かった。 今は全席指定入れ替え制で、もちろんその方がいい。必死になって席取りしたり、立ち見したり、出入りが多く、ザワザワしたりしない。途中から見て、見たところで帰るなんて、適当な見方はしない。 昔と比べてかしこまった感じがある。 食べ物を食べる人もほとんどがポップコーン、一応場内で買えと言われてるので、バラエティーに富んでいない。タバコが吸えたなんて、全く記憶がない。禁煙は大歓迎。でも、映画館に限らず、すべてがお利口さんになって、その分他者への寛容さがなくなった、ということは確実に言える。 誰だっていつも清く正しく美しく振る舞えるとは限らないのだから、少々汚くずるく迷惑をかける存在に対して、大らかに接する度量、余裕を持っておいた方がいいと思う。結局それが自分に返ってくると思う。 武田百合子さんの文章を楽しみながら読みつつ、昔のことを考えた。
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没後25年を過ぎてなお、読む人に新鮮な驚きと喜びをもたらす武田百合子。生前、各紙誌に発表しながら、作品集に収録されなかったエッセイを1冊に纏め、作品リストを付した決定版。
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