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建築論 の商品レビュー

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2009/10/04

「建築」というものを丁寧に、詳細に、ある体系として全的に記述する「建築論」の本は沢山あるようで、意外と少ない。古代ローマ期のウィトルウィウスと、アルベルティやパラディオやヴィニョーラなどルネサンス−マニエリスム期の建築家くらいで、つまり日本ではこの森田慶一による本書のみだと考えら...

「建築」というものを丁寧に、詳細に、ある体系として全的に記述する「建築論」の本は沢山あるようで、意外と少ない。古代ローマ期のウィトルウィウスと、アルベルティやパラディオやヴィニョーラなどルネサンス−マニエリスム期の建築家くらいで、つまり日本ではこの森田慶一による本書のみだと考えられる。もちろんコルビュジエの『建築をめざして』など、近代において「建築とは云々」と語られる本は様々な建築家により大量に出版されたのだが、それらは思想を展開し自分の宣伝およびマニフェストとしての性格に傾斜している。極端に言ってしまえば近代の啓蒙書的「建築論」は個人的なセカイを披露する個人的な語りでしかない。あるいは現代では「〜入門」と題する建築設計、建築史についての本が数多く存在するが、それらは基本的、客観的であろうとし過ぎて、「建築「論」」を展開するに至らない。(もちろん、入門書として書かれながら充分に論と呼ぶに足る本−たとえば吉田鋼一の『西洋建築史入門』、はいくらでもある。)つまり、およそあらゆるものに関する「論」というものは主観と客観、個人的嗜好と歴史的正統性の中間もしくは折衷に位置しなければならないのであって、その点で本書は間違いなく「建築論」と呼ばれるものである。

Posted byブクログ