続 税務調査の実例30 の商品レビュー
【悪質事案から学ぶ、税務署との衝突回避法】 税務調査を招かないためにはどうしたらよいか、また調査時にどのような対応をすべきかを学ぶために読みました。 課税庁側の理屈がよくわかり、たいへん興味深い内容でした。 本書は、国税庁が公開した「税務調査の実例」を紹介し、これに国税出身の...
【悪質事案から学ぶ、税務署との衝突回避法】 税務調査を招かないためにはどうしたらよいか、また調査時にどのような対応をすべきかを学ぶために読みました。 課税庁側の理屈がよくわかり、たいへん興味深い内容でした。 本書は、国税庁が公開した「税務調査の実例」を紹介し、これに国税出身の著者が解説を加えた実務書です。 解説は、主に次の視点に分けて行われています。 ・調査選定の理由 ・調査の進め方 ・所得隠し等の動機や手口 ・税理士としてのあるべき対応 「実例」には前後の事実関係や実情は詳記されていないため、これを著者の税務職員時代の経験をベースにした推測により補っています。 その推測からは、(なかばブラックボックス化された)課税庁の論理や行動規範をうかがえるようです。 扱われている実例は悪質なものばかりで、また税法解釈が争われたものはほとんどありません。 所得隠しをいかに察知し、いかに暴くかといったことに焦点が置かれている印象でした。 われわれ税理士が通常経験しているもの(善良な納税者の課税関係)とは性質を異にしており、実務家が悪質事案を疑似体験するための教材としてはピッタリでしょう。 課税庁がどのような情報を端緒に悪質性を推認しているか(調査選定の理由)知ることには、大きな意義があります。 その推認をはたらかせるようなポイントを避ければ、課税庁との無駄な衝突を避けることができるためです。 (もちろん、適法な申告・納税を行うことを前提とします) 本書では調査選定の理由として、たとえば次のようなものが紹介されています。 ・好況に比して、申告所得額が低調 ・同業他社の水準に比して、申告所得額が低調 ・蓄財状況に比して、申告所得額が低調 ・個人の所得に比して、法人の申告所得額が低調 ・生前の所得状況に比して、相続申告額が低調 ・資料情報がある(法定調書、横目で収集した情報、タレコミなど) ・税務署からの接触(おたずねなど)を無視し続けている 申告書の作成にあたってはこれらのポイントを意識し、申告所得額が低調である理由等を積極的に開示するなどの対応をとることが望まれるでしょう。
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