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中野京子と読み解く運命の絵 の商品レビュー

3.9

17件のお客様レビュー

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2024/08/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

掲載されている絵の量は少なめ、そのぶん一枚一枚の解説が手厚い。気に入った絵が多ければ楽しめるしそうでなければ歴史の解説書を呼んでいるような味気無さのほうが勝つかもしれない。 たとえば『アレクサンドロスの戦い』はその精緻すぎる描き込みや絵そのものに対してよりも周辺状況の説明が多い。 折々につけ見た回数の多いムンクの『叫び』の由来やバリエーションは初めて知ったし、盗難の際の波紋は興味深かった。 『パオロとフランチェスカ』のように美しく物語化された悲恋の物語があるかと思えば、『当世風結婚』の連作は皮肉を込めて描かれたおそらく当時によくある話を、計算されて配置されたモチーフや挙動によって読み解き読み進めていく。 個人的に好きなものは、『スフィンクスの接吻』の描きたいところだけをばっと描きました! と見える思い切りの良さ、一見しただけではただの風景画に見えた『ミッデルハルニスの並木道』に込められたオランダの風土の話、イギリス人が推すイギリスの暮らしを諦めて新天地を目指す夫婦の強い眼差しが印象的な『イギリスの見納め』。しかし作者のフォード・マックス・ブラウンもインド移住を考えていたらしいが、絵の行く先のオーストラリアも含め、悲劇の主人公は先住民たちの方ではないかという気もする。

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2024/07/10

モチーフの意味、当時の時代背景、制作理由、作者の人生、絵に込められた想い等、絵画の裏側が知りたくて手に取りました。この絵なんとなく好きだなぁと自分の感覚で鑑賞するのもいいのですが、以前に中野さんの本を読んだ時、作者の意図を読み取る面白さに気付きました。 今回特に気になったのはホ...

モチーフの意味、当時の時代背景、制作理由、作者の人生、絵に込められた想い等、絵画の裏側が知りたくて手に取りました。この絵なんとなく好きだなぁと自分の感覚で鑑賞するのもいいのですが、以前に中野さんの本を読んだ時、作者の意図を読み取る面白さに気付きました。 今回特に気になったのはホガースの連作画です。他の主要連作画も見てみようと思います。

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2022/09/21

名画の解説だが、絵そのものや画家については短い説明があるだけで、殆どは書かれているテーマ、内容、物語を説明する。素晴らしいエンターテイメント。

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2021/07/29

イギリスは文学の国だけに絵画にも物語を求める気持ちが強いらしいが、西洋画一般に言えることかもしれない。ルネサンス以後、西洋画ではキリスト教の教義を伝えるということから歴史画の格が一番高いということも、絵画に物語を求めることに繋がるだろう。といっても、ダヴィッド「書斎のナポレオン」...

イギリスは文学の国だけに絵画にも物語を求める気持ちが強いらしいが、西洋画一般に言えることかもしれない。ルネサンス以後、西洋画ではキリスト教の教義を伝えるということから歴史画の格が一番高いということも、絵画に物語を求めることに繋がるだろう。といっても、ダヴィッド「書斎のナポレオン」がその年、モスクワ遠征を迎える、アルトドルファー「アレクサンドロスの戦い」の2王、ブリューロフ、ショパン「ボンペイ最後の日」のように歴史的に有名な運命もあるし、神話の運命、市民・庶民・国家・画家自身の運命もあり、様々である。ブローネル「自画像」は画家が故意に事実と違う左目がどろりと崩れたのを描いたが、その数年後、実際に左目を摘出する羽目になって仕舞ったのだ。まさに予言の絵画である。画家自身「絵画に襲い掛かられた」と言っている。その事件以後、彼独自の絵画を描くようになった。「魅惑」という絵など奇妙な絵で、妙に惹かれる。ヴィンターハルター「皇后ウジェニー」のウジェニーや取り巻きの女性たちは、当時流行のクリノリンを着装していて、スカートがむやみに広がっている。鉄の鳥籠のようなものをつけるなんて恐れ入る。腰を締めすぎて失神した女性もいるそうだ。ウォータハウス「ヒュラスとニンフ」はアルゴ探検隊の一挿話だが、ヒュラスはヘラクレスの稚児で、ニンフに池に引きずり込まれるのは、女性への目覚めを意味しているのではないかという。なるほど。ニンフたちは、ほとんど同じような顔だが、結構かわいい。

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2021/06/08

 タイトルそのまま、運命を物語って余すところないブローネル自画像。その迫力に慄然とした。  ウォーターハウス「ヒュラスとニンフ」、絵ハガキでの複製画を持っているのに、妖精の一人が手のひらへ真珠をのせていることを指摘されてようやく知った。  中野京子一連の著書は、世界史の復習・補...

 タイトルそのまま、運命を物語って余すところないブローネル自画像。その迫力に慄然とした。  ウォーターハウス「ヒュラスとニンフ」、絵ハガキでの複製画を持っているのに、妖精の一人が手のひらへ真珠をのせていることを指摘されてようやく知った。  中野京子一連の著書は、世界史の復習・補講になるので有難い。

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2021/04/09

一枚の絵画に秘められた<運命>の物語、その凝縮された謎を紐解いて語られる贅沢なガイドブックです。コロセウムで剣闘士がローマ皇帝の裁可を待つジェロ-ム作『差し下ろされた親指』の運命の瞬間、ロシア遠征を前にして画家の前でポーズをとる時間のなかったダヴィッド作『書斎のナポレオン一世』、...

一枚の絵画に秘められた<運命>の物語、その凝縮された謎を紐解いて語られる贅沢なガイドブックです。コロセウムで剣闘士がローマ皇帝の裁可を待つジェロ-ム作『差し下ろされた親指』の運命の瞬間、ロシア遠征を前にして画家の前でポーズをとる時間のなかったダヴィッド作『書斎のナポレオン一世』、ムンク作『叫び』の強烈なインパクトに潜む狂気など、著者の奥行のある解説によって、アートの魅力を身近に感じることができる一冊です。

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2020/08/11

日本史&音楽選択の私でも分かるように書かれててありがたい( ・ᴗ・̥̥̥ ) 過去の人が描いた言葉を持たない謎を秘めた絵画たち… これだから歴史もアートも読書もやめられない

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2020/08/08

よく知らない画家、見たことない絵が多いし、時代もやや古典とかそれほど…ってのが多いけど、なるほど鑑賞のポイントがわかりやすくて、とてもドラマチックに見えてくる。 西洋絵画だけでなく日本画でもこういうのでないかなーって思う。探せばあるのかな。

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2019/09/27

有名な絵はあまりありませんが、ギリシャ神話、オランダの建国のことなど、簡潔にまとめられていて、興味深かったです。

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2019/08/21

絵画だけでなく、背景にある歴史や風俗なども知ることができて面白い。 理解した上で対象の運命を表現する絵もあれば、時代の転換期に生まれ結果的に運命を表現してしまった絵もある。 芸術家たちは何か使命感のようなものをもって作品を残したのか、または引き寄せられるようにして描いたのか、もし...

絵画だけでなく、背景にある歴史や風俗なども知ることができて面白い。 理解した上で対象の運命を表現する絵もあれば、時代の転換期に生まれ結果的に運命を表現してしまった絵もある。 芸術家たちは何か使命感のようなものをもって作品を残したのか、または引き寄せられるようにして描いたのか、もしくは依頼されたからただ描いただけなのか、 そのようなことにも思考を巡らしたりして楽しかった。

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