ゆらぐ玉の緒 の商品レビュー
他では出会うことのない、独特の文体に魅了された。次々に連なり、流れ、姿を変えてゆく、句点までが長々と続くが、案外、読みにくくも無く、味わい深い文章。 気象に関する描写、とくに風や雲の生きた動きや変化をとらえたが描写があじわい深い。 老年となった著者の日常を中心にして描く短編集。四...
他では出会うことのない、独特の文体に魅了された。次々に連なり、流れ、姿を変えてゆく、句点までが長々と続くが、案外、読みにくくも無く、味わい深い文章。 気象に関する描写、とくに風や雲の生きた動きや変化をとらえたが描写があじわい深い。 老年となった著者の日常を中心にして描く短編集。四季の移ろいのなかでのさまざまな気象現象を肌身に感じながら、日々を淡々と過ごしてゆく中で、現在の生活と過去の追憶を重ね合わせながら、思いの向くままに随想してゆく様が語られている。 歳を重ね、このような生き方をするのも良いものだ。ある意味理想的な老年の生き様である。 しかし、最後まで読み通すことはできず、終わりの二篇を残した。
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本著者の「聖」「栖」、「杳子」「妻隠」、「槿」、「この道」、「蜩の声」と読み進めてきて、図書館で借りた。 意図して最晩年の作品である「この道」(2019年)から「蜩の声」(2011年)、そして本著(2017年)順にの読み進めてみた。「蜩の声」より大空襲に関する記述は少なくなり...
本著者の「聖」「栖」、「杳子」「妻隠」、「槿」、「この道」、「蜩の声」と読み進めてきて、図書館で借りた。 意図して最晩年の作品である「この道」(2019年)から「蜩の声」(2011年)、そして本著(2017年)順にの読み進めてみた。「蜩の声」より大空襲に関する記述は少なくなり自らの記憶や入院に関する記述が増えている。だがやはり言葉を丁寧に綴っていく著者の姿勢に変わりはない。 都会の七階建て集合住宅2階の静かな生活のなかで原稿に向かい丁寧に言葉を綴る姿が目に見えるようだ。
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小説というか、ほぼエッセイなのだと思う。天気と病気の話をするほかは、常に夢うつつ、あれは7つの頃、30の頃、40の頃…といった具合で記憶をたどり、何の話をしているかも正直よくわからなくなっていく。一文がものすごく長いのも分かりにくさに拍車をかけている。 読んでいると、そのひたすら...
小説というか、ほぼエッセイなのだと思う。天気と病気の話をするほかは、常に夢うつつ、あれは7つの頃、30の頃、40の頃…といった具合で記憶をたどり、何の話をしているかも正直よくわからなくなっていく。一文がものすごく長いのも分かりにくさに拍車をかけている。 読んでいると、そのひたすらずっと思い出をたどっているのが怖くなってくるのだ。何かの本に(メイ・サートンだったか?)老いとは未来を見ずに振り返るばかりになることだと書いていたが、そんな感じがする。老いと病と死と、そのにおいが濃密すぎた。
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「ゆらぐ玉の緒」(古井由吉)を読んだ。 この作品群はひときわ死の影が濃いような気がする。 しかしまあ古井氏の文章にはいつも唸らされる。 『春先は病みあがりに似る。』(本文より) 読む者の想いが時空を超えて彷徨い、辿り着いたそのいつかのどこかの春先の自分に戻り「あゝ!」と腑に落ちる...
「ゆらぐ玉の緒」(古井由吉)を読んだ。 この作品群はひときわ死の影が濃いような気がする。 しかしまあ古井氏の文章にはいつも唸らされる。 『春先は病みあがりに似る。』(本文より) 読む者の想いが時空を超えて彷徨い、辿り着いたそのいつかのどこかの春先の自分に戻り「あゝ!」と腑に落ちる。
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俳句の余韻をずっと味わっていたような読後感。 電車の中ではなく、静かな場所で心地よい椅子に座ってじっくり読みたい。
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古井由吉の最新(?)の短編集。名人芸といって済ませるのはやはり申し訳ない。一作、一作丹念に工夫が施されていて、ゆっくり、ゆっくり読むことになる。巻頭の「後の花」の感想をブログに書きました。どうぞ、お読みいただければ嬉しいです。 https://plaza.rakuten.co....
古井由吉の最新(?)の短編集。名人芸といって済ませるのはやはり申し訳ない。一作、一作丹念に工夫が施されていて、ゆっくり、ゆっくり読むことになる。巻頭の「後の花」の感想をブログに書きました。どうぞ、お読みいただければ嬉しいです。 https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201912260000/
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明確なストーリーはなく,季節のうつろいと,作者を彷彿とさせる老人の心情が詩情豊かに描かれています。 意味を捉えるのもなかなか難しく,私は読み終えるのにとても時間がかかりましたが,とても常人には真似のできない高尚な表現力に,本格的な文学というのは本書のような小説をいうのだろうと思...
明確なストーリーはなく,季節のうつろいと,作者を彷彿とさせる老人の心情が詩情豊かに描かれています。 意味を捉えるのもなかなか難しく,私は読み終えるのにとても時間がかかりましたが,とても常人には真似のできない高尚な表現力に,本格的な文学というのは本書のような小説をいうのだろうと思いました。
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