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諧調は偽りなり(下) の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2023/07/18

デマや噂で、大震災の後に朝鮮人が殺されたことは知っていた。共産主義者が弾圧されたことも。でも、社会主義者が捕まったことは知らなかった。 大杉たち殺害に関わった者たちが、一時的に責任を取らされた形になっても、短い間を置いて復帰出世していることは、何おか言わんや。

Posted byブクログ

2022/09/29
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※このレビューにはネタバレを含みます

続編でも野枝と大杉栄の周辺の人物たちその後や行く末が語られており、辻潤の餓死という死に方はあまりにも哀れである、最後まで野枝を愛していたんだなあ。それにしても甘粕大尉及びその所属していた憲兵組織の出鱈目さ及び司法のいい加減さには嫌悪感を感じる、野枝と大杉栄を激しく拷問し最後は締め殺し子供についてはどのように殺したかも分からないとは。ここで甘粕を死刑にしておかなかったから満州に渡り、そこでの日本人と中国人に多大なる犠牲者を出し、卑怯にも引揚者を守る事もせずさっさと自害するとは、やった事はヤクザにももとる。しかし今となっては誤りと分かる思想に取り憑かれた当時の主義者たちも哀れであり、軍部の取り締まりに反抗も出来ず戦争に突入させたのは残念だ。

Posted byブクログ

2021/06/20

民意はまったく無視されてオリンピックが強行される今の日本を、大杉たちはどう思うだろう。大杉のフランスでの演説「日本のメーデーはお祭りではない。ホールではなく市の中心の街頭で行われる示威運動だ」は、もう今の日本ではない。虐殺するような権力でないはずなのに、為政者には都合のよい飼いな...

民意はまったく無視されてオリンピックが強行される今の日本を、大杉たちはどう思うだろう。大杉のフランスでの演説「日本のメーデーはお祭りではない。ホールではなく市の中心の街頭で行われる示威運動だ」は、もう今の日本ではない。虐殺するような権力でないはずなのに、為政者には都合のよい飼いならされた市民になってしまった。寂聴さんの超大作「伊藤野枝と大杉栄」にいろいろ心揺さぶられた。もうこんな時代に戻りたくないのに、僕らは上手に骨抜きにされている。

Posted byブクログ

2020/11/05

下巻読了。本巻もやはり大杉栄や伊藤野枝にはなかなか触れず、むしろ辻潤ら、彼らの周囲の人々のエピソードにページが割かれる。おそらく、寂聴さんの興味は、大杉や野枝というよりも、社会主義者たちを中心とした、この時代の人々のうねりにあったのだろう。その意味で本書のサブタイトルはミスリーデ...

下巻読了。本巻もやはり大杉栄や伊藤野枝にはなかなか触れず、むしろ辻潤ら、彼らの周囲の人々のエピソードにページが割かれる。おそらく、寂聴さんの興味は、大杉や野枝というよりも、社会主義者たちを中心とした、この時代の人々のうねりにあったのだろう。その意味で本書のサブタイトルはミスリーディングだと感じる。 本書で大杉と野枝は無惨な最期を遂げる。寂聴さんがどう語るか、物語の登場人物である大杉たちにどう語らせるかに注目していた。 しかし寂聴さんは、自ら語ることも、登場人物に語らせることもしなかった。現実さながら、大杉と野枝は唐突に物語の舞台から退場する。その後はただ、惨殺された彼らの解剖所見を引用されるのみである。その効果は絶大で、突きつけられた冷酷な事態に読者は戦慄を覚える。 ただ思うのは、この終え方は作家が意図したものではなく、他に選択肢がなかったのではないかということである。偶然にも解剖所見が発見され、おぼろげながら事実が見えてこなければ、寂聴さんは、この物語を終えることができなかったかも知れない。あまりに強烈な事実の前には、物語は陳腐になる。

Posted byブクログ