黒海地域の国際関係 の商品レビュー

六鹿茂夫(著者)

2021/01/27

黒海を中心とした周辺国の歴史や政治、経済、安全保障を幅広く学ぶことができる良書。

黒海は長期間複数の勢力がせめぎあう地域であり、また文化や民族も非常に多様で、それゆえに紛争が頻発する地域でもある。しかし、この地域の紛争に、必ずと言っていいほどロシアかトルコが関与していることは興味深い。やはり黒海地域の主要アクターはこの2国であることがよくわかる。

紛争に注目しがちだが、黒海地域が天然ガスや石油パイプラインの密集地域であることも知ることができた。だが、ウクライナを迂回したり、ロシアやアルメニアを迂回したりと、経済でもエネルギー分野は政治的要素の影響を受けやすいことも興味深かった。

黒海経済協力機構(BSEC)や黒海海軍協力タスク・グループ(BLACKSEAFOR)等、知らなかった事項も多くあり、大変勉強になった。

一度、オデッサから黒海を見たことがあったが、ここまで複雑で勉強しがいのある地域だとは知らなかった。さらに勉強したいと思うと同時に黒海をまた見たいと感じた。