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Q&A法人税「微妙・複雑・難解」事例の税務処理判断 の商品レビュー

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2019/01/01

本書は過去に国税局調査部で机を並べ大企業の税務調査に挑んだ経験をもち、現在は税理士として活動する3人が主に法人税関係について執筆した書籍。Q&A形式になっているが、すべて実際の質疑事例に基づいたもの。豊富なQ&Aで通読するのが大変であったが、法人税関係の是否認につ...

本書は過去に国税局調査部で机を並べ大企業の税務調査に挑んだ経験をもち、現在は税理士として活動する3人が主に法人税関係について執筆した書籍。Q&A形式になっているが、すべて実際の質疑事例に基づいたもの。豊富なQ&Aで通読するのが大変であったが、法人税関係の是否認についてある程度押さえられる内容だった。 P101 さらに、現行の役員給与の取扱いが導入された平成18年度及び平成19年度の税制改正の財務省解説によると「わが国税制では、従来から役員給与の支給の恣意性を排除することが適正な課税を実現する観点から不可欠と考えており」(財務省「平成18年度税制改正解説」323ページ) とあり、平成18年度改正において、改定が3月経過日までとされた理由については「事業年度終了の日間近の改定を許容すると、利益の払出しの性格を有する増額改定を認める余地が生じること」(同324ページ)とされ、「臨時改定事由による改定は、上記イ(筆者注:通常改定)の『特別な事情』とは異なり、事業年度開始の日から3月経過日等までには予測しがたい偶発的な事情等によるもので、利益調整等の恣意性があるとは必ずしもいえないものについても定期給与の額の改定として取り扱うことを明示したもの」(財務省「平成19年度税制改正解説」331ページ) と解説されています。これは立法趣旨として恣意性のある支給·改定を排除する趣旨であることを明確にしたものであると同時に、「やむを得ない事情」がある場合は、利益調整等の恣意性があるとはみないことを解説したものと思われます。 本問の場合、想定を超える利益が見込まれたために昇格及び報酬増額を決議しており、利益調整を目的とした昇格、役員報酬の増額と認められますので、昇格前の報酬額を超える部分の損金算入は認められないと考えられます。 もっとも、取締役Aの手腕を評価しての昇格、報酬の増額であれば臨時改定事由に当たるといえそうですが、一般的には定時株主総会等定時の機関決定により職制上の地位が決定されるところ、なぜ期央において臨時的に決議したのか、その辺りの事情は厳しく吟味されることになると思われます。 P105 役員報酬は日割り計算にはなじまない費用です。 一般的には、会社と役員との関係は委任関係にあると理解されています(会330 (株式会社と役員等との関係))。 民法の委任に関する規定によれば、受任者(役員)の報酬は「委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、その期間を経過した後に、請求することができる」とされています(民6482, 6242)。 そうすると、報酬を月額で定めたとしてその月額に対応する最初の期間は5月25日から翌6月24日までとなりますので、6月24日を経過しないと役員報酬は請求できないことになります。したがって、役員には5月末日では役員報酬を請求する権利はなく、これと裏腹の関係で、会社には5月末日では役員報酬を支払う義務(債務)はありませんので、月額役員報酬を日割り計算して、5月末日の未払費用に計上することは妥当とはいえません。 法人税法上、一般管理費等のうち事業年度終了の日までに債務の確定しないものは損金の額に算入されませんので(法法22(3)二)、決算期末の処理として3月25日から3月31日までの日割り役員報酬を未払費用として計上しても、損金の額に算入することは認められません。 なお、法人税法第22条第3項第二号の、一般管理費等費用の債務確定要件については、事業年度終了の日までに、①債務が成立していること、②具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、③金額を合理的に算定することができるものであること、のすべてを充足する必要があるとされています(法基通2-2-12 ( 債務の確定の判定)。本問の場合、債務が成立していません。

Posted byブクログ