世界宗教の経済倫理 の商品レビュー
『職業としての・・・』『プロ倫』に続いて、本シリーズ三冊目のウェーバーである。『プロ倫』でプロテスタンティズムと資本主義発展のダイナミズムの関係を論じたウェーバーが、それを一般化すべく、儒教や仏教など他の世界宗教との比較において、その教義体系や担い手としての社会層の特質を浮き彫り...
『職業としての・・・』『プロ倫』に続いて、本シリーズ三冊目のウェーバーである。『プロ倫』でプロテスタンティズムと資本主義発展のダイナミズムの関係を論じたウェーバーが、それを一般化すべく、儒教や仏教など他の世界宗教との比較において、その教義体系や担い手としての社会層の特質を浮き彫りにし、それらが世界観や生活様式の合理化にいかなる影響を及ぼしたかを考察する。「序論」と「中間考察」はその方法論と骨子を述べたもので、壮大なウェーバー宗教社会学の肝が簡潔にまとめられている。 学問的な厳密さでは旧訳に敬意を表するが、概念過多のウェーバーの複雑な文章を忠実に日本語に移せば、一行一行辿るだけで閉口してしまうのもやむを得ない。中山氏の翻訳は読み易さで定評があるが、後ろから訳し上げるのではなく、文を区切るなどして極力前から訳し、訳語の選択にも「価値自由」→「価値判断を含めずに考察」、「行為の実践的起動力」→「行動させる実際の原動力」、「規定的」→「決定的な役割を果たした」等の工夫が見られる。 厳密な方法意識に貫かれたウェーバーの著作には、いくつもの前提や留保が張り巡らされており、ドイツ語原文と言わぬまでも直接翻訳にあたってみなければ微妙なニュアンスはわからない。例えば、ウェーバーが「存在が意識を規定する」というマルクスの唯物史観を逆転させたとよく言われるが、ウェーバーは唯心論に立ってプロテスタンティズムが資本主義を生んだと言ってるわけではない。マルクスにしてからが単純な経済決定論ではないが、ウェーバーの真意は一方を他方の単なる「反映」や「関数」と見做すのではなく、双方向の因果関係を考察すべしということだ。ともあれ評者のような一般読者に手近な解説で済まさず原典に向かおうという気を起こさせてくれる好訳だ。
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