小林カツ代伝 の商品レビュー
小林カツ代が「一番年の離れた友人」と人に紹介していたという著者による評伝。生い立ちから料理研究家として名をなすまで、その後の多彩な活動と考え方など一通りの評伝スタイルをもちつつ、近しい間柄ならではの裏話(「食べ直し」へのおつき合いなど)も盛り込まれ、小林カツ代のいろいろな人となり...
小林カツ代が「一番年の離れた友人」と人に紹介していたという著者による評伝。生い立ちから料理研究家として名をなすまで、その後の多彩な活動と考え方など一通りの評伝スタイルをもちつつ、近しい間柄ならではの裏話(「食べ直し」へのおつき合いなど)も盛り込まれ、小林カツ代のいろいろな人となりが伝わる好著。いわゆる評伝としての客観性とはやや距離をおき、小林カツ代礼賛のような感じもしないでもないが、それはそれで近しい人ならではの味というところだろう。 本書では、小林カツ代が名を上げたのはテレビ番組「料理の鉄人」がきっかけとしているが、そうだろうか。少なくとも私はそれ以前から著書などで小林カツ代を知っていて、十分名の知れた人という認識だったのだが、それは料理の世界、いわゆる「女こどもの世界」のなかだけだったということか。 一方で、本書から再認識したのが、料理研究家にとどまらず、食の世界を超えた文化人としての小林カツ代像だ。思い起こせば、私が「料理の鉄人」以前に知っていた著書も、写真とともに料理の作り方が載っているというよりも、縦書きの文章が連なりながらワーキングマザーの両立術を指南したり、合理的な生活術を取るのに発破をかけるようなものだった。女性が社会に進出し、それでもなお家事も大部分を引き受けるのが実情のなか、そうした実情に即した生活文化の創出に一役買った人ともいえる。さらには、戦争のない世のなかを目指した発言などもあるけれど、それも家庭生活や家族の文化とひとつながりにあるものと解釈した。 経済だ、科学技術だ、はたまた芸術だ、文学だといった「文化」が表舞台でわがもの顔にしているけれど、人間の基本は衣食住というのはやはり真実で、その部分の文化を創り、語り広める人としての小林カツ代だったのだ。
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実家の商売や子どものころの大阪の空襲の話や、短大時代・主婦でありながら専門学校生としての学び、育児と家庭料理、などなどそれぞれの時代区分にこめた本人の情熱が、私が観ていた小林カツ代のTVでの活躍に一直線につながりました。人気者であるのにTVに出てこないなあという印象を持っていまし...
実家の商売や子どものころの大阪の空襲の話や、短大時代・主婦でありながら専門学校生としての学び、育児と家庭料理、などなどそれぞれの時代区分にこめた本人の情熱が、私が観ていた小林カツ代のTVでの活躍に一直線につながりました。人気者であるのにTVに出てこないなあという印象を持っていましたが、病に倒れていた長い期間のうえに亡くなったと知り驚きました。
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「料理の鉄人」のところから入るのは、構成の妙。同時代で見ていたときは「売れている人」へのやっかみというか、正当に評価されないところもあったようだが、今から振り返るとたいした人だったのだなぁと、本書で腹に落ちる思いだ。 「家庭料理研究家」としての矜持を保つということが、この人の背骨...
「料理の鉄人」のところから入るのは、構成の妙。同時代で見ていたときは「売れている人」へのやっかみというか、正当に評価されないところもあったようだが、今から振り返るとたいした人だったのだなぁと、本書で腹に落ちる思いだ。 「家庭料理研究家」としての矜持を保つということが、この人の背骨だったのだろう。料理人が出す料理と家庭料理は違う、なぜなら「作る人も食べる人」だからという指摘にははっとした。たしかに小林カツ代のレシピには、この考え方がしっかりある。自分自身が子育てしながら仕事もしてという忙しい毎日を過ごす中で、どうしたら手早くおいしい料理を家族のためにつくれるか。「手間をかけることが愛情」という考え方ではなく、ただの手抜きでもなく、カツ代流の合理性が支持の理由だという点に合点がいった。
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大変面白かった。会えるだけの人に会い、ゆかりの地にはできるだけ足を延ばし、なるべくたくさんの資料に当たっている。実に誠実な作り方をしている正統派ノンフィクション。味を文字で伝えるのは難しいことのはずなのに、しっかり伝わる。エピソードのつなぎ方というか話の展開の仕方も上手。小林カツ...
大変面白かった。会えるだけの人に会い、ゆかりの地にはできるだけ足を延ばし、なるべくたくさんの資料に当たっている。実に誠実な作り方をしている正統派ノンフィクション。味を文字で伝えるのは難しいことのはずなのに、しっかり伝わる。エピソードのつなぎ方というか話の展開の仕方も上手。小林カツ代という人物の位置づけもちゃんとできている。惜しむらくは文字数の少なさ。この倍ぐらいのボリュームはあってもよかった。ミスターとの関係についてもっと証言が聞けていれば、陰影の深い、よりすごい作品になったのかもしれない。最後の最後、作者がぎりぎりまであとがき作業に取りかかっていたことは知っていたが、こういうことだったのかと、納得した。この本、大手のノンフィクション賞、とるんじゃないだろうか。
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【主婦から家庭料理のカリスマへ】料理本230冊以上、考案したレシピは一万超。家庭料理のカリスマと称された小林カツ代、波乱万丈の人生の光と影を描く傑作評伝。
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